興味あるものに触れたいただそれだけ〈アンダンティーノ視点〉
別荘に着くまでの道のりはだいぶ賑やかな時間となった。
普段、プライベートでゆっくりする時間もあまり無いので今日という日がとても嬉しい。目の前に座るセイリーンは、大きな瞳を持つ女性で本当に美しい。見ているだけで癒される。
初めて会った時は、普通の令嬢よりも控え目な令嬢だと思った。大抵の令嬢ならば王子である自分に良く思われようとすり寄ってくるのが普通だからだ。
だが、セイリーンは聞かれたことにムダなく控えめに答えただけだった。やや強引に舞踏会に招待を提案すると、喜ぶどころか困惑した様子で了承した。
スワロウの妹が優秀な魔力持ちだということはセイリーンの父やスワロウから聞いていたため、いつか直接、話してみたいと思っていた。だから、偶然にも学園で会えたのは何かの縁かもしれないと、都合よく考えてしまう。
学園のバラが咲く庭園で話してみると、自分が好きなバラを同じようにウットリしながら眺めるセイリーンの姿がとても好ましいと思った。いくつか質問すると、求められていることに対してきちんとすぐに回答が返ってきて賢さを感じた。
ただ、ダンスを一緒に踊りたいと言うと、少し難しい表情をしたのが意外だった。てっきり王子の誘いに喜ぶと思っていたのだ。後から聞けば、記憶障害でダンスが踊れないという事情があったからみたいだが。
それでも、多くの好意を寄せてくる令嬢とは異なり、凛とした姿が自分の伴侶として彼女は条件にピタリと当てはまると感じた。
それに、魔法に優れた文化を持つこの国で魔力を保有する妃の存在は必要となる。自分自身も魔力量を多くもつ者として他国よりもリードしていかねばならない立場だ。隣国の国々に遅れをとるわけにはいかない。
何度かセイリーンと話してみて、自分の立場をわきまえ行動できる聡明さや親しみやすさも大いに魅力的だと感じた。
舞踏会でダンスをした時に、男性に慣れていない様子も気に入った。自分の妃とするならば清純な令嬢がやはり良い。
だが、なぜだか今回はプレストもセイリーンに惹かれている様子だ。今まで、自分に寄ってくる令嬢には見向きもしなかったプレストが、直接ダンスの指導をするなんて想像していなかった。
プレストも王子だ。見た目も整っており、数多のように群がる令嬢に言い寄られてきたのを知っている。本気になどなった姿は一度も見たことがない。セイリーンに興味を持つとしたら、自分への当てつけだと思った。
だが、セイリーンの内面に惹かれている様子ではないか。なぜ、今回に限って興味惹かれるのだと、恨めしく思った。
プレストは王位を継がない代わりにある程度の自由が許される。今までも軍部に自由に出入りし、好きな剣の鍛錬など受ける時間もあるのだ。自分よりも責任の重さが異なる立場であるのに。
隣国出身の母を持つプレストとは幼い頃から一緒に育ち、母が違うことなど気にしてはいなかった。だが、大きくなるにつれて世の中のことを知ると、母の出身の違いによって立場が異なるのだと理解した。プレストは表面上では軽口を叩くが、いつも自分に一歩引いた立場で接するようになった。
それが当たり前だと思っていた。それぞれに役割があるのだからと。たとえ、同じ歳の腹違いの弟を思いやっていたとしてもだ。弟として生まれたからには立場に合った行動をしてもらわねば秩序が乱れる。
だから、優しく接してきた。だが、妃となるかもしれない女を前にして、やすやすとプレストに譲るわけにはいかない。
プレストやスワロウがついてくるのを許したのは、セイリーンに警戒されないため、スワロウを信用させるためだ。プレストは初めての反抗みたいなことをしているが、大した問題ではない。
今日、一日どうしたらセイリーンの気持ちを自分に向けることができるだろうか。記憶が無くなった間にピアノスキルが上がったとも聞いている。それが魔力に関連したことならば、より一層、興味惹かれる対象であることは間違いない。
(自分が胸中にこんな思いを抱いているのを知られるわけにいかないな......)
セイリーンには礼儀正しい理想的な王子様でいたい。そして、自分を受け入れて欲しい。
望んだものに触れたい、手に入れたい、ただそう思ったのだった。
アンダンティーノ的には、セイリーンが彼の思う条件に色々と当てはまる子なので逃したくないのです。
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