再びデートに誘われる
プレスト殿下の突然の来訪から数日後、アンダンティーノ殿下からデートのお誘いの手紙が届いた。
舞踏会でうっかり、デートのお誘いを承諾してしまったことをしっかりと覚えていたようだ。
「セイリーンちゃんたら、相変わらず王子様達から人気なのねえ。こうも熱烈なアプローチされ続けたら、もう覚悟決めちゃったら?」
「お母様、無理です。ご兄弟で楽しんでいるだけなのです」
「アンダンティーノ殿下のお気持ちはとても嬉しいものではないか」
「父上&母上。まだセイリーンには早いですよ。父上もなぜ、アンダンティーノ殿下推しなんですか......!セイリーンは魔法を極めたいそうですよ」
本日も夕食タイムが賑やかだ。普通の貴族の食卓は静かにお食事するものらしいけれど、こちらの家は家族愛が強いせいか、普段からおしゃべりが絶えない。
「それにしてもアンダンティーノ殿下からデートのお誘いとは。しかも、この週末にだなんて急だな」
「約束してしまった手前、お断りすることもできませんが、どうにかならないでしょうか。お二人には対抗意識があるみたいですし、どちらかと一方と出かけるとなるとまた問題が起きそうです......」
後のことを考えてお断りしなかった自分がいけないのだが、またプレスト殿下にキツイ嫌味を言われるのかもしれないと思うと気が重くなる。彼は私好みのイケメンではあるが、言葉がキツい時があるので責められるとかなりこたえるのだ。
「......そうだな。この際、またダブルデートにしてしまったらいいんじゃないのか?」
「イザベラ様を誘うのですか?根回しする時間も必要ですよね?」
確かにイザベラ様を誘えば丁度いいかもしれないが、格上である侯爵家の令嬢であるイザベラ様は何かと多忙そう。この前も“わたくしレベルになるとお茶会も多くて忙しいのよ”と言っていた。急にお誘いするのも気が引ける。
「では、プレスト殿下もお誘いしよう。アンダンティーノ殿下とお前のデートのことを知れば、プレスト殿下も黙ってはいないだろうからな。オレも調整役としてついて行く」
「そんな案思いつきもしませんでした......お兄様も参加されるなんて大胆ですね」
「あの2人と同時にデートとなれば調整役は必要だろう。それに、ほかにどんな案がある?両殿下をどちらともデートすれば約束も違えず一方から文句も言われないだろう」
強引なお兄様の迷案が名案な気もしてきた。確かに、アンダンティーノ殿下と2人きりより、4人でワイワイした方が気がラク......。頼れるお兄様も側にいてくれることだし。
翌々日、学園に行くと今まで私の教室に直に訪れたことが無いプレスト殿下がやって来て驚いた。廊下に呼び出されると、プレスト殿下が私を壁際に押しやる。壁に手をついたまま小声で話しかけてくるではないか。
いわゆる壁ドン状態。まわりの女子から悲鳴に似た声が聞こえてくる。目立ちまくってサイアク。私の心臓の音もうるさいし。
「週末、アンダンティーノとデートするらしいじゃないか」
「舞踏会の時にお約束してしまって......」
「まあいい、誘われたら断れる立場じゃないだろうしな。そこでだ、スワロウの提案に乗ることにした。オレも行くぞ!」
まさかあの案をアッサリと受け入れてくれるとは思わなかった。勝手にダブルデートにしてしまって、アンダンティーノ殿下は怒らないだろうか。
「アンダンティーノ殿下に納得して頂けるでしょうか?」
「任せろ。オレもやすやすとアンダンティーノとお前の2人きりのデートを許すわけにいかないからな」
「はあ」
「なんだ、不満なのか?」
「いえ、正直気が重くて......」
「もう覚悟を決めろ。“2人よりもみんなの方が楽めるから4人でお出かけしたい!”と、セイリーンたっての願いだとアンダンテには伝えておいてやる」
「ちょっと!それはやめてください!」
「はは、名案だろ」
「そんな名案はヤメてください!」
軽口を叩きあっていると、イザベラ様の声がした。
「ごきげんよう、プレスト殿下。相変わらずセイリーンと仲良しですのね。わたくしもアンダンティーノ殿下ともっとお話ししたいですわ」
「うん?アンダンティーノに伝えておく。デートに誘うようにってな」
「まあ!嬉しいですわ。さすがプレスト殿下は相手の気持ちをくみ取るのがお上手ですのね」
「当たり前だろう。任せろ」
プレスト殿下ったら勝手にアンダンティーノ殿下とのデートを安請け合いしているけれど大丈夫だろうか。
それにしてもイザベラ様は相変わらずアンダンティーノ殿下を一途に想っているようだ。舞踏会の翌日にアンダンティーノ殿下とダンスした時の様子をウットリしながら細かく聞かせてくれたし。
(アンダンティーノ殿下には、イザベラ様のようなやる気のある令嬢がピッタリだと思うんだけどな)
でも、ピッタリという考えはあくまで私の考えであって、アンダンティーノ殿下の考えとはまた違うのだろうなと思う。
(もし、私がアンダンティーノ殿下だったら、好きな人を選べないのは不幸だと思うかな......)
一緒にいて安らげる人とか尊敬できる人といることが私の望むことだとすると、自由に結婚相手を選べない立場のアンダンティーノ殿下は気の毒だということになる。でも、だからといって私がアンダンティーノ殿下の希望通りに動くかといったら話は別になる。
(世の中は上手くいかないわね)
授業を終えて馬車寄せに向かうと、アンダンティーノ殿下がいるのに気付いた。急いでいるようだが、私と目が合うと足早にこちらへ近づいて来た。
「やあ。週末のデートだけど、プレストに知られてからついて行く!と、幼子のようにしつこくてね。後、キミの兄もついてくるというじゃないか......もしかして、セイリーンの差し金?」
「......“アンダンティーノ殿下と2人きりでは緊張する”とお兄様にお話したところ、自分もついて行くと言いまして。あの、兄は妹思いのいわゆるシスコンなので......兄が行くならばプレスト殿下もお誘いしてみんなでワイワイしたら楽しいかなっ!て。ホント申し訳ございません......」
ヒドイ言い訳を述べると、アンダンティーノ殿下はタメ息をつきながらも了承してくれた。
「せっかくだから2人きりで出かけたかったのになあ。ボクはセイリーンにまだ信用されてないのかな?」
「そのようなことは......!恐れ多いのです。バラも毎日届けて下さってどうお応えすればよいか」
「キミがボクを受け入れてくれるといいんだけどな。まあ、急いでも仕方ないね。さっきイザベラ嬢にデートに誘ってほしいとせまられたばかりだし、今回は平和にみんなで出かけようか。セイリーンに気楽に接してほしいしね」
「ご配慮ありがとうございます......イザベラ様は本気でアンダンティーノ殿下を想ってらっしゃるみたいですね」
「ボクは王太子だからね。でも、キミにそんな他人事みたいな言われ方されて悲しいな。週末は迎えに行くよ。楽しみにしている」
気付いた時には手をとられて甲にキスをされていた。相変わらず流れるような美しい身のこなしだ。優しく微笑みながら馬車に乗る姿に思わず見とれてしまう。
ついまた、アンダンティーノマジックにやられそうになったのだった。
アンダンティーノ→やっとセイリーンとデートだ→え、プレストも来たいの?え、スワロウも? 一体何なんだよ!
※彼はちょっと怒ってます。
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