お兄様の心配
フォルテ伯爵家には事前に知らせてくれたようで、屋敷に着くと真っ先にお父様やお母様、お兄様までもが迎えに出てくれた。
「こんなに早く帰宅して来るなんてビックリしたわ。体調は大丈夫?プレスト殿下のお気遣いには感謝ね」
「プレスト殿下もセイリーンのことをかなり気にかけて下さっているな。これはまた色々と考えるべきことも出てきそうだ......」
「今はそれどころではないでしょう。セイリーンの体調が優れないのです。すぐに休ませましょう」
話す余裕もなく自室に連れて行かれると、オランジェが着なれないドレスを脱がしてくれた。ウエストをコルセットでギューッと絞られているので正直、着心地は良くない。むしろ苦痛。キレイなお召し物だが私には重くて動きにくいし、いつも着ているワンピースの方がよっぽどいい。
ワンピースに着替えるとホッとした。
「お嬢様、ご気分はどうですか?カモミールティーでもお持ちしましょうか」
「ええ、お願い」
慣れないヒールのせいでムクんで仕方ない。令嬢としてはお行儀悪いだろうが、ワンピースの裾をまくり上げて脚を揉む。
(脚のムクミも魔法でどうにかならないかな......)
しばらくすると、ドアをノックする音がした。お茶の用意ができたのだと分かる。
ソファにゆったりと寄りかかり脚をモミモミしながら入室を許可する。
「入るぞ」
驚いて扉の方を見ると、お盆にティーポットとカップを乗せたお兄様が立っていた。なぜ、お兄様が......。
お兄様は目を見開いて固まっている。今の私はスカートをまくり上げている状態。兄妹といえども許されない姿だった?でも膝上10センチ上くらいなので、そんなに衝撃的な姿でもあるまい。
「は、早く服装を正しなさい!」
お兄様が慌てるものだから、急に私も恥ずかしいことをしてしまった気がしてきて急いで服装を直した。元の世界では制服のスカートなんてかなり短くするのが普通だったから、すっかり感覚がズレていた。
落ち着いたところで対面に座ったお兄様が手づからお茶をカップに注いでくれる。お兄様の分も入れているようだ。
「ところで、体調はどうだ?プレスト殿下が気にして早く帰れるようにしてくれたのだろう?」
「はい、アンダンティーノ殿下とのダンスが済んだのだからもう帰って良いと、言われまして。他の男子生徒にダンスに誘われても面倒だろうからとも」
「なるほど、だが大胆だな。アンダンティーノ殿下はお前をまだ帰したくは無かっただろう。プレスト殿下がアンダンティーノ殿下に嫉妬したか?」
庭でのプレスト殿下とのやりとりが思い出された。プレスト殿下の押しの強さはスゴイ。今後のためにもお兄様に相談しておいた方が良いだろうか......。
「そのプレスト殿下とちょっと問題が起こりまして、ご相談したいことがあります......」
「問題とは?」
「実はアンダンティーノ殿下とダンスした後、プレスト殿下と話した時に泣いてしまったのです。泣いた私を気遣ってプレスト殿下が庭に連れ出してくれたのですが、そこで......その言いにくいのですが、抱きしめられまして......」
「抱きしめられた!?そもそも泣かされたのはなぜだ?庭で令嬢と2人きりになるなんて、プレスト殿下はどういうおつもりだ!」
お兄様がすごい勢いで怒りだした。話さない方が良かったのだろうか。でも、また2人きりになる状況を避けるためのいい案を授けて欲しい。
「お兄様、落ち着いて下さい!泣いたのはアンダンティーノ殿下と踊っていた時の私が楽しそうで気に食わないと責められたからでして......泣き顔のまま戻るわけにいかないだろうということで庭に連れ出してくれたのです」
「そもそもセイリーンを泣かすようなことを言うから悪いのだろう! 楽しく踊って何が悪い!庭で2人きりなどありえん」
「はい......」
「まさかだが......抱きしめられてそれ以上のことなんてされてないだろうな?」
「......キスされました」
お兄様が卒倒しそうになってテーブルにバンと手をついた。ものすごく大きな音がしてビックリした。
「許されないことだ!!」
お兄様は両手で頭を覆い、見たことも無いほどショックを受けている。何か申し訳ないことをしてしまった気がした。いつも冷静なお兄様なら、どうしたら良いか的確なアドバイスをしてくれると思ったのだが......。
「王子様方は私が物珍しいだけなのです。ビックリしましたけれど、流されるつもりはありません。ほかの人に見られたわけでもないですし、私から関心が無くなればここだけの話で終わるかと......」
「......冷静になろう。ちなみに、セイリーンはどう思っている?一般的に言えば、王子から好意を持たれるなんてことは令嬢としては誇らしいことだが?」
「王子様が好意的に接して下さるのはありがたいですし、正直ドキドキします。けれど、身分も釣り合いませんし、何より魔法を学ぶのが先です」
「身分が釣り合っていて魔法が学べる状況ならば王子達を選ぶこともあるのか?」
「あり得ません。私は自由に過ごせる方が良いのです。だから王子様方と深く関わり合うことは避けたいと思っています。お兄様にはこれからも私のサポートを全力でして欲しいです」
「......セイリーンがそれを望むならオレも全力で応えよう。プレスト殿下がセイリーンを抱きしめて唇を盗んだのはかなりの罪だが」
「あはは......」
お兄様がこんなに怒るなんて。これは世間で言う“シスコン”だろう。私を思ってくれているのは間違いないけど。
「それはそうと、1つ気になったのだが、セイリーンはキスをしたのは初めてではないのか?動揺しているようには見えない」
「......初めてですよ。動揺はしています。動揺しすぎて逆に冷静になっているというか。プレスト殿下がグイグイ来られるのでついていけなくて.......」
「ついていかなくてよろしい!初めてのキスを......ますます許しがたいな。プレスト殿下の対策については念入りに考えよう。ひとまずお風呂に入ってよく口をすすいでおきなさい!」
プレスト殿下のキスをバイ菌扱いするお兄様に思わず笑ってしまう。話した後のお兄様の反応が怖かったけど、プレスト殿下の対策も一緒に親身に考えてくれたから嬉しい。
結果的にお兄様に相談して良かったのかなと思ったのだった。
セイリーン(聖来)→キスされちゃった→今後どんな風に振る舞えばいいの(悩)→そうだ!お兄様にとりあえずは相談→めちゃ怒るじゃん!ビックリした!(でもホッ)
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