嫉妬した王子様
アンダンティーノ殿下と踊り終えたので肩の荷が下りた。
イザベラ嬢はウットリとアンダンティーノ殿下を見つめながらダンスをしている。彼女の幸せそうな表情を見ると、先ほどのアンダンティーノ殿下とのやりとりが罪であるような気がしてきた。彼女はアンダンティーノ殿下狙いなのだ。私も協力してあげようと思ったのにデートの約束をしてしまった。
誘ったからにはアンダンティーノ殿下は本気で私をデートに誘ってくると思われる。
アンダンティーノ殿下の熱烈なアピールと、豊富な魔法知識を持っていそうな人物だという下心からつい了承してしまった。
後でデートに誘われた件を、速やかにイザベラ嬢に話しておこうか......。でも、そんなことをしたら彼女は怒り狂うだろう。それはかなりメンドクサイ。
彼女が踊り終わるまで、今後の対策を考えるために静かなバルコニーの方に向かった。
外は、かすかな風が吹いており心地よい。ベンチに座ると、今後のことをどうしようか考え始めた。ここに来て早くも3ヶ月目を迎えようとしている。この3ヶ月を振り返ると、これといった成果もなく、焦りだけは募っていく状況だ。先が見えなくて正直、苦しい。王子達の対処も考えなくてはならない。
(私、帰れなかったらどうしよう.......)
「おい」
突然、声をかけられてビックリして振り返ると、プレスト殿下が立っていた。
「プレスト様でしたか......」
「なんで泣きそうな顔をしているんだ。アンダンティーノがイザベラ嬢と踊っているからか?」
「......どうしてそのような考えに?」
「アンダンティーノと踊っている時、お前は頬を染めていたじゃないか。まるでそこらのアンダンティーノ狙いの女と同じように」
「アンダンティーノ殿下が私をあまりにも褒めてくださるのが恥ずかしくて、つい微笑んでしまっただけです」
「嬉しいから笑うんだろ。アイツが気になるのか?」
「気になるとかそういう立場の方ではありません。私も全く意識しておりませんし」
「嘘だな。お前、目を一瞬そらしたぞ」
プレスト殿下は不機嫌そうに言うと、私の隣に腰掛けた。この方は私に何を言いたいのだろうか。しかも呼び方が“お前”に戻っている。
「ご安心下さい。プレスト殿下が心配なさるようなご迷惑をおかけしませんので」
「オレが心配?オレはお前の態度が気に入らないだけだ」
「では、プレスト殿下がアンダンティーノ殿下をお諫め下さい。私などに構うのは時間の無駄になると」
「そういうことじゃない!なぜ、お前は調子よくアイツに微笑むんだ?所詮は誰にでもいい顔をするつまらない女だったということか?そうだとしたらくだらないな」
「......どうしてそんなことを言われるのですか」
プレスト殿下とはちょっとした軽口を言い合えるくらいには、距離が近くなっていたと思っていた。なのに、突然の冷たい言葉の刃物で私の心はえぐられる。私の態度はそんなに軽薄に見えたのだろうか。傷つけられたショックで胸が痛い......。ただでさえ、今の自分の状況でいっぱいいっぱいなのに......。
「......私だってここに来たくて来たんじゃありません。プレスト様にはしなくてもいい苦労をしなくちゃいけない私の気持ちなんてお分かりにならないでしょうね......あなたは勝手です......!」
不敬かもしれないと思いつつも、元の世界に戻れないかもしれない不安などが入り混じって、感情がコントロールできなくなっていた。気付いたら涙が次から次へと頬を伝っていく。もう何だかどうでもいい気持ちになっていて顔を手で覆った。
「......すまない。お前を泣かせたかったわけじゃない。お前がアイツに惹かれているのではないかと思うと面白くなかったんだ」
プレスト殿下が後悔するようにつぶやいている。私は普段抑えていた気持ちが一気に噴出してしまったせいでグチャグチャな気分だった。返事をする余裕も無い。答えずに泣き続ける私に、プレスト殿下は懺悔するように言葉を紡いでいく。
「初めて図書館でお前に会った時、すぐにフォルテ伯爵家の娘だと分かった。きっと魔法好きなアンダンティーノがお前に目をつけるだろうと思った。すぐに思った通りになった。だから、オレがワザとアンダンティーノとお前の間に介入した。ヤツにちょっとした意趣返しができると思ってな」
......初めて聞く真相だ。アンダンティーノ殿下とプレスト殿下は仲が良いけれど、ドロドロした気持ちも同時に持ち合わせていることを知った。
「でも、お前といるとラクにいられて心地いいんだ。お前は思ったことを正直に言うだろう」
私は気を遣って話していたつもりだったが、通常の令嬢とはやはり言動が違うみたいだ。違う世界からきた私はやはりこちらの認識とはズレているのだろう。
「正直な気持ちを言う。オレはお前がアンダンティーノと一緒にいるところを見たくない。これがいわゆる“恋”という気持ちかどうかと問われればオレには分からない」
プレスト殿下の言葉を聞いていた私は、少し冷静さを取り戻した。この方達は私が珍しいだけなのに、それを特別な気持ちだと勘違いしようとしている。本当の私など知らないのに。
「......それはきっと“恋”と錯覚した違うものでしょう。私も恋というものはイマイチ分かりません。ですが“恋”というものは、相手のことを自分のこと以上に大切にしたいと思う気持ちなのではないかなと思っています」
涙を拭きながら顔を上げて伝えると、隣に座るプレスト殿下が身じろぐのを感じた。静かな時間が流れる。
「......少し庭を散歩していかないか。その顔では戻れないだろう」
プレスト殿下がエスコートしてくれながらハンカチを渡してくれた。ハンカチからはいい香りがして心が少し安らぐ。
バルコニーから庭に降りる階段を降りて庭の中央に歩いて行くと、明かりに照らされた噴水が見えた。魔法だろうか、水中から照らされた光を反射してとても美しい情景が広がっている。
しばらく水に揺らぐ光を静かに見つめていた。
「......落ち着いたか?泣かせたのはオレのせいだが、お前には笑っていてほしい。お前が泣いて悲しそうにしているとオレの胸も痛む......これはお前がさっき言ってた“相手を想う”ということだろう?」
プレスト殿下の顔を見ると、真剣な顔をしていた。真剣なまなざしに目をそらせないでいると、プレスト殿下は私に一歩近づき胸の中に抱きしめた。私の顔がプレスト殿下の胸にうずまる。
「お前が教えてくれ......“恋”ってものを」
驚いて顔を上げた瞬間、キスされていた。
プレストの方法がベストかどうかは別として彼は真剣なのです(,,•﹏•,,)
もし、作品がいいなと思われましたらぜひブックマーク&評価をお願いします(o_ _)o
(☆☆☆☆☆→★★★★★なったら感涙!モチベーション爆up!皆さまに支えられております)
※投稿は毎日朝7時です。引き続きご高覧頂けるとウレシイです。




