ホストみたいな方
目の前には微笑んでいるアンダンティーノ殿下がいらっしゃる。
「セイリーン嬢、やっと落ち着いて話す機会を持てて嬉しいよ。美味しいケーキも食べられるしね」
「貴重な機会を頂きまして恐縮です」
「カタいのはよそうよ。プレストと話していたみたいに気軽に本音で話して。上辺の言葉じゃなくてキミの本心が知りたいんだ」
「お気遣いありがとうございます。殿下とお話するのは緊張いたしますのでそう言っていただけると助かります」
「ボクも気楽に話せる方が良いのだけど、王族に生まれたから宿命だよね......知りたい、近づきたいと思っても、なかなか触れがたいし」
「お察しします」
「もう、カタいって」
アンダンティーノ殿下は困ったように微笑むと、おもむろに私の手を取って人差し指と中指を親指で撫でた。流れるような一連のしぐさで違和感なく触れられていた。気づいたイザベラ様が私の手元を凝視している。後で文句を言われそう。
「あの、ますます緊張します......」
「照れてカワイイね。今までは魔法に集中していてデートなんてあまりすることもなかったのかな?」
何とかアンダンティーノ殿下に手を放してもらう。プレスト殿下はチラリとこちらを確認してまた、イザベラ様と話し始めた。
「そうですね。魔法に打ち込んでいたと聞いています。殿下は兄と交流をお持ちだそうですね。今の私には以前の記憶が無いことを聞かれていますか?」
「ああ、そのことね。もちろん知っているよ。キミと会ってからスワロウと話す機会もあったし報告は入っている」
「記憶の無い私と話すことは正直、殿下にとってメリットがあるとは思いません。殿下は私の魔力に興味がお持ちなんですよね?」
「そんなことを気にしていたの?まあ魔法のことについて話すのは楽しみだったけど、キミの魔力が失われたわけではないしスワロウと特訓しているんでしょ?そう遠くない未来にまた、キミの素晴らしい魔力を披露してもらえると思っているよ」
「そうだといいのですが」
「それに、メリットがあるかなんてことじゃないよ。前にも言ったけど、キミの美しさにも興味を惹かれているよ。薄いピンク色のバラはキミみたいで、毎日香りを楽しみたくなるね」
え、それはどういう意味......と考えて赤くなる。アンダンティーノ殿下の紡ぐ言葉は甘くて、まるでホストのよう。女の子の心をガチっとつなぎとめる技を心得ているような恋愛猛者に感じる。瞳を見つめながら甘い言葉を言うのでパンチ力がスゴすぎる。
「おいアンダンティーノ、健全な会話を求めているんだろ?お前、口説いているだけじゃないか。オレのようにスマートな会話ができないのか?なあ、イザベラ嬢?」
「はい、プレスト殿下と改めてお話しさせて頂いたら、さすがは王子様でいらっしゃると感じましたわよ!」
ほんの少しの間の会話で、イザベラ様のプレスト殿下への認識は変わったようだ。プレスト殿下が意外とスマートな会話ができることを知って感心しているらしい。プレスト殿下を擁護した発言をするあたり、アンダンティーノ殿下への当てつけも含まれているのだろうが。
「え、ボクが珍しく悪者になっている?物でも人でも美しいものへの賛辞は自然なことだよ」
「お前が令嬢を褒めるたびに、モメ事の火種になるのが分からんのか?」
「ふぅ、そうは言ってもね、むやみに言っているわけじゃないよ。本当に感じたことを伝えているだけだから」
「まあ殿下、では先ほど馬車の中で私のことをお褒め頂いたのも本心ということで受けとって良いのですわね?」
アンダンティーノ殿下達の馬車の中では、会話から察するにイザベラ様を口説いていたと思われる。アンダンティーノ殿下は物腰やわらかいけど、こう誰でも褒めまくると効果は半減してしまうわよ?私も気を付けなくては。
「イザベラ嬢の髪はとてもキレイだよね、と言ったんだよね」
「あら、もう一度言って頂けるなんて......嬉しいですわ」
アンダンティーノ殿下の“髪は”の部分を強調して言っているあたり、ちょっと悪意を感じる。だが、イザベラ様は華麗にスルーして喜んでいるではないか。メンタル強いな。浮かれてちゃんと聞いていないだけかもしれないけど。
運ばれてきたケーキは見た目も華やかで美しくとても美味しかった。誰のケーキが一番美味しいなど、他愛ないことを色々とおしゃべりして楽しんだ私達はそろそろ帰途につくことにした。
「帰りは行きの馬車のペアとは替えると伝えておいた通り、ボクとセイリーン嬢、プレストとイザベラ嬢でいいよね?」
「お前、カフェでセイリーンとずっと話していただろ。イザベラ嬢はお前ともう少し話すべきだ」
「プレスト殿下のお気遣いありがたく受け取らせて頂きますわ。よろしければアンダンティーノ殿下とのお話の機会を......」
こう言われたら、女性を大切に扱うアンダンティーノ殿下は断れないだろうなと思った通り、帰りの馬車は行き同じアンダンティーノ殿下とイザベラ様、私とプレスト殿下の組み合わせで帰ることになった。
「今日は楽しかったよ。イザベラ嬢もセイリーン嬢もありがとうね。ではイザベラ嬢、行こうか」
流れるような美しい所作でイザベラ様をエスコートしながら、イザベラ様とアンダンティーノ殿下が去って行った。
私達も帰途につくために馬車に乗り込む。馬車の中に2人きりになると静寂が訪れた。
アンダンティーノの女性へのスマートな会話=甘い言葉を囁く(意図せず)
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