心のオアシスはやっぱり
行きと同じくプレスト殿下と2人きりになるが、同じ時間をいくらか過ごして少し慣れてきた。
「楽しめたか?」
「はい、プレスト様は?」
「案外、楽しかったな」
「イザベラ様と仲直りできて良かったですね」
「仲直りもなにも。ちょっと理想的な王子らしく振舞っただけだ。疲れた」
プレスト殿下は腕を上に伸ばし身体をほぐしてらっしゃる。今更ながら王家の馬車って広くて快適。
「セイリーンも災難だったな。アンダンティーノは女の扱いには慣れている。手を握るなんて朝飯前だ。真に受けるなよ」
「あれは本当に心臓に悪いです。ビックリしました.....というか、プレスト様は既に私の手に触れられましたよね?色々と」
茶化すように今までのことを振り返って指摘すると、プレスト殿下は慌てた。
「あれは.....!お前が男に慣れていなかったから慣れさせようと」
自分で話を振っておいてなんだが、あの場面のことを持ち出されてくると恥ずかしくなった。
「あれは.....誰にでもやらない方がいいと思います」
「まあ、軽々しくするべきじゃなかったかもな。でも、結果的にセイリーンだったから問題ないだろ」
「どういう意味です?私だったらどうでもいいと?反省したんじゃないんですか?」
「あー、もうその話はヤメよう。今日は楽しいデートで終わりたい」
面倒になったらしいプレスト殿下に会話を打ち切られた。プレスト殿下の機嫌を損ねたかもと、心配したがさほど気にした様子は見られない。
(私ってメンドクサイところがあるよね......。こういうところは反省しなくちゃ)
弁が割と立つ私は、ついついズケズケ人に対して言ってしまうところがある。相手は王子様なのだ。もっと気を付けなくてはならないと猛省する。
それにしても、プレスト殿下はぶっきらぼうなようで案外気を使ってくれる繊細なところもあるのだなと一緒に過ごしていて感じた。
「今日はダンスの練習ができなかったから明日こそ練習!と言いたいところだが、明日はオレたち兄弟には外交の付き合いがあって学園には行けない。家で復習しておけよ。舞踏会まですぐだし」
「はい、いつもありがとうございます。王子様のお仕事を頑張ってくださいませ」
「明日は王子の仮面を被らなきゃならん。セイリーンといる方が楽だな」
「それはそうでしょう」
「王子のオレが"一緒にいるとラクでいられる”と言っているのに、全然、意識した反応しないな」
「私のような身分の者であれば気楽なのは当たり前でしょう。気を使わなくてはならない方と接するのはプレスト様でも疲れますものね?」
「......天然か?」
失礼な。私は天然じゃないし。言ったことは間違ってない。あ、でも暗に"気を使う立場であるプレスト殿下と接するのは疲れる”と言っているようなものだと焦った。プレスト殿下は気にしていないようだけれど。会話ってムズカシイ。
やがてフォルテ伯爵家の屋敷が見えてくると、プレスト殿下は突然つぶやいた。
「今日はデートだったよな。セイリーンの癒しパワーをよこせ」
「癒しパワー?回復魔法はまだ勉強中でして」
「そうじゃない。こっちに来い」
プレスト殿下は私を引き寄せると胸の中に引き寄せて抱きしめた。
(だ、抱きしめられている.......!)
突然のことに固まっていると、プレスト殿下の鼻が私のすぐ頭上にあるのが分かった。何かスンスンされているみたい......頭のニオイなんて嗅がないで。ハズカシイ。
「癒されるな、セイリーンに触れると」
まるで、恋人のような発言をしているじゃないか。もう胸の鼓動がうるさいくらい鳴り響いている。
「プレスト様、もう屋敷に着きますので......!」
「お前、カッチンコッチンじゃないか。興奮して鼻血でも出るかもな?」
「誰のせいだと......!からかわないでください!」
慌てている私を見て、プレスト殿下はニヤニヤしている。プレスト殿下の胸を手で押して突き放したが、ガタイの良いプレスト殿下は押してもちょっとしか動かなかった。
間もなく馬車も停まり、屋敷に着いた旨が外から伝えられ馬車の扉が開けられると、お兄様が声をかけてきたので驚いた。
「本日もプレスト殿下が自ら送り届けて下さるとは、まことにお手数をおかけしてしまい申し訳ありません」
「気にするな。今日は知らせた通り、街で話題のスイーツをアンダンティーノ達と楽しんだ」
「お気遣いありがとうございました」
「それにしても馬車の扉が開いたら、スワロウがいて驚いたぞ」
「私が戻ったところに丁度、王家の馬車がやってきたのです。兄としてお礼を言うのは当然です。さあ、セイリーンこちらにおいで」
お兄様が急かすように言うので、私は急ぎお兄様の手に掴まりながら馬車を降りた。
「プレスト殿下もお気をつけてご帰途あそばれますよう」
「ああ。そうだスワロウ、今日はセイリーンのダンス練習ができなかったから、練習相手をよろしく頼む」
「かしこまりました」
「ではな。セイリーンもまたな」
プレスト殿下が去ると、お兄様は不機嫌そうに私を見た。
「ダンス練習ではなく、どうしてスイーツを食べに行くことになったんだ?しかも"プレスト様”と呼んでいなかったか?殿下も親し気にお前を名前で呼んでいるし.....いつの間にそんな親しくなった?」
矢継ぎ早に聞いてくるお兄様がちょっと怖くて事情を話すと、お兄様はタメ息をついた。
「セイリーンがあの2人に気に入られているのは厄介だな。特にアンダンティーノ殿下は令嬢の扱いも上手く、お前なんて手のひらで転がされまくりだろう。プレスト殿下は気まぐれだ。何か言われても本気になるんじゃないぞ」
「もちろんです。私は一緒にいて気楽な方が一番ですから」
「伯爵令嬢じゃ王族とは釣り合わない。お前に苦労させたくないんだ」
お兄様は妹思いが過剰なくらい。でも、その気遣いが今の何も分からない私には嬉しい。私の気持ちもしっかりとケアしてくれるし。
そんなスバラシイお兄様は、私の基地と化していてついつい甘えたくなってしまうのだった。
プレストは気に入ったものにダイレクトに近づくタイプです(˙˘˙*)
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