ダブルデート?
学園での授業の後は、プレスト殿下がいる時はダンスのレッスンをしてもらうという生活が続いている。
まわりの生徒は王子たちの関心が気まぐれからなのか、本心によるものなのかを測りかねているようだが、こうも2人の王子が構っているのを見るとだんだん私に悪口を言う人も減っていった。
ただ、この方だけは違う。金髪の縦ロールの令嬢、ケユル家のイザベラ様だ。
「ちょっと!廊下は端を歩きなさい!」
今日の私はきちんと廊下の端を歩いているので私ではないと思ったが、どうやら私に言っているようだ。
「端を歩いておりますが」
「ムダ口が減らない人ね!いいからこちらにいらっしゃい!」
私を捕まえて中庭に引っ張っていく。今日はお供の取り巻きの人はいないようだ。中庭のバラの花壇前まで来ると、私に向き直って話始めた。
「アナタ、アンダンティーノ殿下とプレスト殿下と何故あんなに仲が良ろしいの!?」
「仲が良い記憶はありませんが、本当に偶然このような状況になりまして...」
「偶然で仲良くなんてならないでしょう?具体的に説明なさい!」
仕方が無いのでアンダンティーノ殿下との出会いから、プレスト殿下にダンスを習うまでの流れを話した。
「アンダンティーノ殿下の魔法好きは有名ですわね。アナタ、スワロウ様の妹だから関心を持たれただけなのね。プレスト殿下に至っては、アナタのダンススキルじゃアンダンティーノ殿下にご迷惑になるという賢明なご判断からなのね」
「まぁ......そいういうことかと」
「でも、プレスト殿下にレッスンして頂く立場じゃないと思うけど!」
「私もそう思っています」
「......ではアナタ、聡明なわたくしからの提案よ。わたくしと友人になりなさい!そしてアンダンティーノ殿下とプレスト殿下の仲を取り持ちなさい!」
「そんな無茶な......」
「無茶ですって?わたくしは侯爵家の令嬢なのよ。あなたよりもずっとふさわしい立場じゃないの」
「そうは思いますが、私はそういう相手として接して頂いているわけではありませんので」
「良いのよ。わたくしはアンダンティーノ殿下と仲良くなるキッカケが欲しいだけなのだから」
イザベラ嬢はアンダンティーノ殿下狙いなのね。......そういえば、王子様ともなれば既に結婚相手は決められているのではないだろうか。
「殿下達には決まったお相手はいらっしゃらないのですか?」
「アナタ、そんなことも知らないの?確かに何人かの有力な令嬢が候補に挙がってはいるわよ。でも、最終的には選ぶのは殿下ご自身。自分を支えるのにふさわしい令嬢を自ら選ばれると言われていますわ」
そうなのか。だから王子たちは自由に振る舞っているのかと合点がいった。もし、既に婚約者が決まっているのに私のような者にちょっかいを出しているのだとしたら具合が良くないだろう。
「ちょっと、聞いているの?これからアナタと私はお友達よ!」
「はぁ」
「ちょっと!早くアナタの手を貸しなさい!」
イザベラ様が急いで私の手をガッチリ握った。不自然な態度に違和感を感じていると、すぐに理由が分かった。
「手なんか握っちゃって何しているの?」
ニコニコとした表情のアンダンティーノ殿下がこちらに歩いて来たところだった。思えばここはアンダンティーノ殿下のお気に入りの場所。いつ遭遇してもおかしくはない。イザベラ様に図られたか。
「まあ!殿下、お会いできて嬉しゅうございますわ。わたくし、セイリーン嬢のお友達のイザベラと申します」
「ケユル家の令嬢だよね。君のお姉さんがボクと同じ学年にいるから知っているよ。セイリーン嬢と友達だったんだ?」
「ええ、そうですの。今もこうして手を取り合って友情を確認していたのですわ」
「へえ。では、君も今度の舞踏会に招待しようね。セイリーン嬢と共に参加するといいよ」
「お気遣いありがとうございます!姉も姉妹で出席できることを光栄に思うに違いありませんわ」
イザベラ嬢の愛想の良さと言ったら!いつもと違い過ぎる。でも、1年生から1人舞踏会に招待されるよりは良かった。
「そうだ、キミ達は今日の放課後は予定あるかい?予定が無ければお茶しに出かけようよ。珍しくボクのスケジュールがフリーだから、交友を深めたいと思ってね。プレストも誘ってダブルデートしよう」
「ダブルデート!素晴らしすぎますわ!ぜひ!」
(え、ダブルデートって言った?すんなりとイザベラ様は返事なさっているけれど......とんでもない提案なんじゃないの?)
「セイリーンも賛成よね!?」
イザベラ嬢に握られたままの手に力がこめられる。いつの間にか私の名前を呼び捨てしてるし。イザベラ様の目が"イエスと答えろ”と言っている。どちらにせよ、王子と侯爵令嬢の圧でお断りできる感じじゃない。
「お心のままに......」
「じゃあ、放課後はここで待ち合わせしようか?バラを愛でながら待てるしね」
「はい!!」
気合いの入った返事をするイザベラ様、ホントに調子の良い人だ。侯爵令嬢レベルの令嬢はもっとおしとやかなイメージがあったけど、人によって違うもんだなと思う。
アンダンティーノ殿下が側近の生徒たちと去ると、イザベラ様は私に興奮しながら話しかけてきた。
「アナタ、わたくしとお友達になって正解だったわね!」
「お手柔らかにお願いします......」
「わたくしに任せておきなさい!さっきも言ったけど、わたくしが仲を深めたいのはアンダンティーノ殿下。だから、アナタは仲良しのプレスト殿下とお話しなさってね」
客観的に見てもイザベラ嬢は家柄的にもゴージャスな金髪の見た目的にも、アンダンティーノ殿下とお似合いだ。それなのに、私なんかが何故ダブルデートに行くことになるのかと思うと摩訶不思議。
いきなり決行されることとなったダブルデートのせいで、授業を受けていても気がそぞろだった。放課後は、イザベラ様の希望により一度2人で落ち合ってから、バラの花壇の前に向かうことになっている。どうやら抜け駆けを警戒したようだ。そんなことしないのに。
イザベラ嬢はなかなかやり手の抜かりない令嬢だなと思ったのだった。
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