心ゆさぶられるステキな贈り物
授業を終え、屋敷に戻るとオランジェがいつものように着替えや制服などの手入れをしてくれる。
貴族のお嬢様ともなると毎日VIP待遇の扱いなので、この生活に慣れてしまうと元の世界に戻った時に自分で制服の手入れをするのも面倒になってしまうかも。
「お嬢様、まずはお茶にいたしましょう。お手紙も届いておりますし、確認しながらゆっくりされては」
「お手紙が?招待状が届いたのかしら」
家族用の居間に移動するといつもの定位置である濃いグリーンのフカフカなソファに座る。いつも学園から帰るとお茶しながらオランジェと話したり、お母様がいらっしゃればちょっとした女子会をしたりしている。
淡いブルーを基調とした猫足家具でそろえた来客用の居間とは違って、家族用の居間は深い色味を使用したインテリアで統一されており、ゆったりと落ち着ける空間となっている。オランジェがマホガニー材の家具の引き出しから手紙を出してきた。
「こちらがお嬢様に届いていました」
受け取った手紙の封を確認すると、荘厳なデザインの封蝋が押されている。
「この封蝋はアンダンティーノ殿下からよね?」
「そうですわね。王家特有のツタ模様が描かれておりますから間違いないでしょう。さあ中を確認なさってくださいませ」
オランジェに促されて封を開けると、ゴールドで縁取られたカードに舞踏会の日時や説明が書かれていた。
「舞踏会まで1ヶ月ね。確認しづらくて聞きそびれていたからすぐの開催だったらどうしようと心配していたの。でも、1ヶ月でもチャレンジ過ぎるわ」
「お嬢様であれば大丈夫ですわ。姿勢がもともとキレイでらっしゃいますし」
オランジェと話していると、居間の扉をノックした使用人が花束を抱えて入ってきた。花束は薄いピンクのバラだ。"キレイ!”と見とれていると、使用人が私に花束を手渡す。
「お嬢様に今さっき花束のプレゼントが届きましたよ。メッセージカードをぜひご確認くださいませ」
花束を見ると、カードが添えられていた。ゴールドのツタ模様のカードなので、これはアンダンティーノ殿下からのプレゼントということだろう。ドキドキしながらカードを開くと、優美な文字でアンダンティーノ殿下直筆だと思われるメッセージが書いてあった。
『今日はバラを一緒に愛でられて幸せな時間を過ごすことができたよ。もっとセイリーンと話せる機会があればと願う。舞踏会を楽しみにしているよ』
私が好きな淡いピンクの色味のバラはとても美しい。花束を異性にもらったのは人生で初めてで、まるで漫画の世界のようだ。雲の上の存在である王子様からロマンチックなプレゼントを戴くなんて......思わず淡い気持ちを抱いてしまいそうではないか。
帰宅してきたお父様やお兄様もバラのプレゼントに分かりやすく驚いた反応をしていた。お母様とオランジェなんて新しいドレスを今後のためにいくつか新調しておこうなんて話し合っている。まわりが騒ぐと私も嫌でも意識してくるじゃあないか。
(私チョロすぎるんじゃない?これは単なるアンダンティーノ殿下の気まぐれなんだから......)
気を引き締めた私だったが、なかなか眠れない夜を過ごしたのだった。
翌日、学園に行くとレントやアンスから“アンダンティーノ殿下と庭園で密会していたんだって?”と聞かれた。早くもまわりでウワサになっているらしい。密会じゃないと伝えたが、ウワサが錯綜して広まるあたり、人のウワサ話の広まり方がコワイ。
「私がたまたま近くにいたから、バラの鑑賞を一緒にしただけよ」
「王子にたまたまで近づけないだろう。学年も違うし。王子が会いに来て下さったんじゃねえの?」
「アンダンティーノ殿下がやっかんだ令嬢達をけん制なさったんじゃないの?お気に入りに手を出すなって示すために」
「私、まだ2回しかお話したことないのよ?気に入るも何もないわ」
「セイリーンの愛想が前より良くなったのが大きいんじゃない?最近、オシャレにも気を使っているし。うらやましいわ~」
「おい、だからオレがいるだろ!」
レントとアンスが仲良く言い合っているのを見てふと思い出したが、私には一応、仮りの婚約者がいるのだし不謹慎なのではないだろうかと心配になった。今のところ誰も何も言ってこないところを見ると、ホントにどうでもいい口約束程度だったのかもしれないが。
アンダンティーノ殿下にバラのお礼を言いたかったが遭遇することもなく、1日の授業が終わった。レント達と別れて馬車寄せに向かおうして、ふと図書室に寄ろうと足を延ばす。
以前、プレスト殿下に目を付けられてからしばらく図書室通いを止めていたが、舞踏会に招待されてからというもの、魔法とダンスの特訓に明け暮れており、個人的に調べたいことが全くできていなかった。
学園の図書室は魔法コーナーが充実しているので、チャンスがあればもう一度調べてみたい。放課後ならば第二王子もいないかもしれないし。
放課後の図書室は案外空いていた。試験前以外は割と人が少ないようだ。これはしめたと、魔法コーナーに近づくと本の背表紙のタイトルをゆっくりと確認し始める。
しばらく経って急に後ろに気配を感じて振り向くと......遭遇したくない第二王子が立っていた。
バラの花束のプレゼントって憧れます~*( ᵕ̤ᴗᵕ̤ )*
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