助けてくれたヒーローは
前を見ると、数人の男子生徒のグループがやってくるところだった。
こちらに気づくとニコニコしながら第一王子のアンダンティーノ殿下が側近らしき男子生徒クン達を従えてこちらに寄って来るではないか。
「こんにちは。今日は天気がいいね」
「殿下、ごきげん麗しゅうございます!」
先ほどまでの態度とは180度違う笑顔と態度になった令嬢達は、アンダンティーノ殿下を前に愛想良く振る舞い始めた。
「キミ達、ボクと同じ2年生だよね?なぜ、セイリーン嬢もいるのかな?彼女と知り合いなの?」
「あ......あの殿下が舞踏会にセイリーン様をお誘いになってとお聞きしまして、私たちも仲良くしたいと思いまして」
「仲良く?セイリーン嬢の表情はカタイけれど?そんな風に上級生が取り囲んでいたら怖いんじゃない?」
「セイリーン様、私達は楽しく話していただけですわよね?」
ナニこの人達。私がうなずくと思っているのだろうか。肯定も否定もせずに困った顔をしてやる。
「やはり......仲良くは見えないね。キミ達も人と仲良くしたいなら、相手にリラックスしてもらわなきゃね?......ところで、ちょっとセイリーン嬢に話があるんだ。借りてもいいかな?」
「ええ、もちろんですわ。私達との話はもう終わりましたので」
逃げるように令嬢たちは慌てて去って行った。ちょっとは後ろめたい気持ちもあったのだろう。アンダンティーノ殿下は私を自分の方に来るように手招きをしている。
「ごめんね。イヤミ言われていなかった?ボクの立場で何かすると、すぐああいう輩が出て来るんだ。でも、キミと話したい気持ちには変わりないし、ダンスも踊りたい」
アンダンティーノ殿下と出会ってからほとんどお話らしいことはしていないのだが、何だかとても興味を持たれているようだ。
「ダンスをご所望ですか?」
「もちろん。キミのやわらかいパープルの髪はとてもキレイだね。そのロゼカラーの瞳もとても情熱的な美しさだ。男だったら美しいレディと踊りたいと思うのは自然なことだろう?」
キラキラとした王子の発言に、さすが学園のアイドルだと思う。キザなのにすごく自然だ。
(セイリーンの見た目って確かに可愛いわよね。いつもはレントやアンスとばかりいるから他の人と話す機会が無いけれど、密かにモテてたのかしら)
「ダメかい?」
「だ......ダメなんてことがあるわけありませんわ。その緊張してしまいます......」
「ふふ、可愛いね。ボクはキミより学年が上だし、困ったことがあれば学園のことでも何でも聞いてくれるといいな」
"滅相もありません!”とは言えないので、曖昧に"エヘヘ”とはにかんでいるとアンダンティーノ様は私が恥じらっていると受け取ったのか、興味深そうに私を眺めている。
「ねえ、このまま中央の庭園まで少し歩かない?」
私の手を自然に取ると、そのまま中庭の庭園までエスコートをしてくれる。突然のことにぎこちなく付き従っていくが、キレイなバラが見えて来ると気分がやわらいだ。季節関係無くバラが一年中キレイに咲いているんだ、とアンダンティーノ殿下が説明してくれる。
「とても美しいよね。キミと見られて嬉しいよ」
「そんな、私も光栄です。美しいバラって癒されますものね......なんてキレイなんでしょう」
「バラは好き?」
「はい。香りも良いですし優雅な気持ちになれますから」
「ちなみに何色が好きかな?」
「ええと、薄いピンクが好きです。優し気でロマンチックに感じます」
「なるほど。キミの雰囲気に合うね」
「えぇ、そうでしょうか?」
アンダンティーノ殿下から見た私はロマンチックな乙女に見えるのだろうか。内心は現実的なクールな人間なのだが。令嬢らしく愛想よく笑えないのが悔しい。
しばらくアンダンティーノ様とバラを眺めていると、昼休み終了のチャイムが鳴り響いた。
「楽しい時間はすぐに終わるね。公務でたびたび学園を休むことがあるけれど、また学園内で会えたらぜひ話そう」
「こ......光栄です」
「カタくならないで?これからゆっくり交友を深めていこうね」
アンダンティーノ殿下は私に握手を求めるとニッコリと微笑み、キラキラした言葉を紡いだ。側近に促されつつ2年生の教室がある方向へとアンダンティーノ殿下が去ると、私も急いで教室へと向かった。
淑女らしくないのは分っているがアンダンティーノ殿下に言われた数多くの甘い言葉を思い出すと恥ずかしくてつい早足になってしまう。
(私を美しいって言ってた!私と一緒に踊りたいとも!)
まるで私はどこかの物語のお姫様みたいな気分になっていた。
(あんな理想的な王子様がいるんだなあ。元の世界にはいないよなー)
興奮しながら足早に歩いていると、もうすぐ教室に着くというところで、聞き覚えのある声が降りかかってきた。
「だから!アナタはどうしていつも廊下の真ん中を通るのよ!」
見ると、金髪侯爵令嬢のイザベラ様だった。イライラした様子だが授業が始まる前なので、軽めの注意をしただけでそのまま去って行った。
アンダンティーノ殿下の言葉に浮かれていた私は、活を入れられた気がしてイザベラ嬢の注意を少しありがたく思ったのだった。
アンダンティーノはロマンチストであり、フェミニストです(๑•ᴗ•๑)
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