表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
31/48

第四章 夜のふたり組 〈7〉

 パリン! と大きな音がして、ヤスとよばれたドロボウがとなりの部屋でとび上がった。


「うわっ! なんだ今の音は? 2(かい)じゃねえよなあ。となりか?」


 ヤスが部屋からおそるおそる顔をだし、懐中電灯(かいちゅうでんとう)廊下(ろうか)()らすが、もちろんそこにはだれもいない。


 本当は大きな声で誰何(すいか)したかったのだが、そんなことをすれば、2(かい)にいるアニキから小心者とバカにされるに決まってる。


「ちくしょう。オレはビビリなんかじゃねえぞ」


 ヤスは(こし)のひけた足どりでとなりの居間をのぞきこんだ。


居間と廊下(ろうか)をしきるふすまはほとんどはずれていて、中の見とおしは悪くないはずだが、とにかく暗いのでようすがわからない。


 懐中電灯(かいちゅうでんとう)の細いあかりで居間の中をゆっくりと()らす。床の間に(たお)れたテレビの裏側(うらがわ)が見えた。


床の間の壁を這うように光が移動(いどう)すると、飾り(たな)の陰から無表情(むひょうじょう)な白い子どもの顔があらわれて、ヤスは絶叫した。


「うわああああああっ!」


 (こし)をぬかして廊下(ろうか)へ転がりでたヤスが、後頭部を思いきり向かいの壁に打ちつけた。


「どうしたヤス!? なにがあった?」


 ヤスの悲鳴にアニキとよばれたドロボウもおどろいて、2(かい)からあわてて下りてきた。


「で、で、で、でたよ、アニキ。子どものゆうれい。マジあれヤバイって!」


 アニキの懐中電灯(かいちゅうでんとう)()らしだされたヤスの顔色はまっ青である。


「ゆうれい? どこだよ?」


「そ、そ、そ、そこの(たな)の陰だって!」


 アニキは右手で大きな鉄製のバールをにぎりしめた。この重たい工具で玄関(げんかん)をこじ開けたのだ。


なにかいたらバールでぶちのめしてやろうとかまえながら、左手でヤスの指さした飾り(たな)の陰に懐中電灯(かいちゅうでんとう)をむけた。


「……いねえじゃねえか」


 アニキが小さく肩で(いき)をつきながら()った。


「このチキン野郎! だからてめえはついてくんなって()ったんだよ!」


「マジだって、アニキ! マジで見たんだって!」


「じゃあ、今もてめえにはあそこにゆうれいが見えるってのか?」


 アニキが飾り(たな)()らしながらヤスを問いつめた。


「……い、今は見えねえけど、さっきはぜったいいたんだって!」


「うるせえ!」


 アニキが廊下(ろうか)にへたりこむヤスの顔をけった。


「ぎゃっ!」


 ヤスは悲鳴を上げると、けられた顔面を押さえてうずくまった。


「てめえはもうひっこんでろ! オレの仕事のじゃますんな!」


 アニキとヤスの()後でバン! バン! と居間のガラス窓をたたく大きな音がした。


「な、なんだ!?」


 アニキがふりむいて、音のしたガラス窓を懐中電灯(かいちゅうでんとう)()らすが、そこにはだれもいない。


「アニキ、ポルターガイスト現象だ! ゆうれいのしわざだよ!」


「うるせえ! そんなのあってたまるか!」


 言葉(ことば)とは裏腹に少しおびえたようすでアニキが懐中電灯(かいちゅうでんとう)をふりまわすと、ガラス窓のかたわらに立っている子どもの姿(すがた)がかいま見えた。


 アニキがおそるおそる懐中電灯(かいちゅうでんとう)を向けると、白い顔をした無表情(ひょうじょう)の子どもが上目づかいで、ふたり組のドロボウを見ていた。


「で、で、でたあっ!」


 ヤスがさけぶと、子どもの体がふわりと宙にういた。


「うぎゃあああ!」


「うおっ!」


 ふたり組のドロボウが思わず悲鳴を上げて懐中電灯(かいちゅうでんとう)をとり()とした。


「……(なぎさ)、重い……」


 (なぎさ)の両わきに手を入れて、うしろから(なぎさ)の体をもち上げていたカナエの腕がプルプルふるえている。(なぎさ)がこたえた。


(もう下ろして。今のうちにかくれよう)


 カナエの姿(すがた)はふたり組のドロボウに見えないし声も聞こえない。さっきガラス窓をたたいてドロボウたちをおどかしたのもカナエのしわざだ。


 ドロボウたちのおどろき方があまりにもこっけいだったことに気をよくしたカナエが、居間の奥へと移動(いどう)する(なぎさ)とは逆方向のガラス窓をバン! バン! とたたいた。


「とっととでてけ、ドロボウ!」


 ヤスはカナエのポルターガイスト現象にビビリきっていたが、アニキはもう少し(はら)がすわっていた。


「くそっ!」


 アニキは懐中電灯(かいちゅうでんとう)を拾い上げてふたたびガラス窓へ向けた。ぐうぜん雨戸(あまど)()めきられたガラス窓の前を横切って居間の奥へ移動(いどう)する(なぎさ)姿(すがた)()らしだすと、手にしていた鉄製の重いバールを(なぎさ)へ投げつけた。


(うわっ!)


 バールがガシャン! と(はげ)しい音をたててガラス窓を()り、(なぎさ)が頭をかばって()をふせた。そのようすを見たアニキが怒りもあらわに()った。


「……くそったれ! ヤス、あれはゆうれいじゃねえ! 本物のガキだ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ