少年、異能を知る。
(•••何か音が聞こえる)
夜中に物音が聞こえて、目を覚ましてしまった。
(なんだろう)
このときは寝ぼけていたのもあって、桔梗の言いつけを忘れて外へ出てしまった。
玄関で靴を履き替え、外へ出る。
暗くてよく見えないが、屋敷の前の通りに、二人の人影が見えた。
一方の影はとても大きく、禍々しい雰囲気を帯びていた。
天寧は恐怖心を抱きながらも、正体を確かめるために近づいていった。天寧の心の中は、好奇心の方が大きかった。
少しずつ距離を詰めると、二人の人影だと思っていたものが、一人の影と、"一つ"の大きな影だと分かった。
(あれは!?)
天寧が人だと思っていたものは、到底人とは思えない姿形をしていた。
「ば、化け物!」
天寧はそう叫んだ。
天寧の声を聞き、影は振り返る。こちらは人の方だった。
「・・・何をしている!此処から離れていろ」
男は刀を手にしていて、刀には光が立ち込めていた。
「何……その光」
天寧の呟いた言葉に男は驚いた様子を見せ、刀をも下ろす。
「・・・お前は特異能が見えるのか?」
とくいのう…?なんだろうかそれは。
「とくいのうっていうのはよく分からないですが、刀にともっている光と、あの禍々しい化け物なら」
この間化け物は、不思議なことに襲っては来なかった。
「見えるのか……」
男は諦めたような顔を見せる。
「説明は後だ。仕方がないから、そこで黙って見ていろ」
男は下ろした刀を振り上げ、化け物に斬りかかった。化け物は、一瞬で首らしきところを落とされ、塵となって消えた。
「・・・驚かせて悪かったな。俺はこの屋敷の主人だ。中で詳しく話そう」
男は、伏見影千夜と名乗った。
◯●◯
「・・・で、お前は何であんなところにいた?」
天寧は居間で、影千夜に詰められていた。深夜三時のことである。
「寝ていたら、物音がして目が覚めたんです。寝ぼけていたから物音がする方へ行ってみたら、貴方とあの化け物が見えました。そして、腰が抜けて……」
天寧は、あったことをそのまま話した。
「お前が見たのは、本当に化け物だったか?暗くて、あんまり見えなかったんじゃないか?」
急に何を言い出すのだろうか。あの化け物を切り捨てたのは、他でもない影千夜だ。見ていないわけがない。
「いや、貴方も見てましたよね!?俺は確かに、あの化け物を見ましたよ。それに、貴方はこうも言っていたはずです、『お前は特異能が見えるのか』って。特異能って何ですか!」
思わず早口で捲し立ててしまった。今の天寧には、知らない情報が多すぎる。脳が容量過多になっていた。
「・・・知ってしまったからには、教えなければならないな。あの化け物や、特異能のことを」
"知ってしまった"?知られてはいけないことだったのか。
「あの化け物は、異怪と呼ばれる。そして、その異怪を倒すのが、我々特異能隊だ」
一度にたくさん説明されて、上手く理解ができない。あの化け物は異怪で...それを倒す?
天寧が情報処理に手間取っていると、知っている声が聞こえてきた。
「・・・師匠、天寧が困ってるでしょ」
ったくもー、師匠は説明が下手なんだからー、と言いながら部屋に入ってくる。
「桔梗くん!寝てたんじゃ……」
起こしてしまったようで申し訳ない。ただ、桔梗に気を遣う余裕はない。桔梗もそれを分かってるようだった。
「あんだけ物音立ててたら起きるよー!師匠は勝手にバラしちゃったみたいだし」
悪かったな、と影千夜は口を曲げる。
「ここからは僕が説明するよ」
•••改めて言う。今の時刻は、深夜三時半である。
◯●◯
「・・・特異能とは、この江戸の町で密かに継承されてきた極秘の能力である。その存在を知ったものは、一人残らず"消される"。それが、特異能規約にて定められている」
桔梗は、そう語り出した。
「ちょっと待って、俺は今、その特異能ってやつを知ってしまったわけだけど」
流石に黙ってられなかった。
「まあ、最後まで聞きなよ。特異能を知ってしまったものが生き延びるには、たった一つだけ方法がある」
天寧は思わず息を呑んだ。
「……それは、自らが異能者となること」
「・・・へ?」
天寧は理解ができなかった。というより、脳が理解するのを拒否していた。
(俺が……異能者になるだって……?)
「ってことだから、明日から俺と学校に行こうね」
なぜ学校に?
疑問は留まることを知らなかった。




