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転生者ですが孤児だったので、活字拾いでなんとか生きています!  作者: 小鳥遊 郁


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9 活字拾いの少女、王都へ旅立つ

 

 私は日が昇る前から、馬車乗り場に来て王都行きの馬車を待っている。

 この世界では前世にあった目覚まし時計なんて便利なものはない。前世の私自身のことはあまり思い出せない部分があるにも関わらず、寝坊を(目覚まし時計があったにも関わらず)よくしていたことだけは覚えている。特に旅行とか大事な時に遅刻していたようだ。

 今世での大掛かりな旅行は今回が初めてなので、余裕を持って行動することきした。

 王都への馬車のお金はガッテン活字工房から出ている。絶対に乗り遅れるわけにはいかない。


 クビになったのに、新しい職場が王都にあるガッテン活字工房本店ってどうなのよとは思っている。

 でも今回は正社員にしてくれるらしい。あまりにも良い話だからかえって不安になる。

 正社員の給料っていくらなんだろう。歩合制より良いのだろうか。でも選べる立場ではない。



 セシルさんは救世主だったのだ。実はアパートに帰ったら、大家さんが部屋の前で待ち構えていたのだ。

 クビになったのを聞いたらしく、三日以内に出ていってくれと、言われてしまった。

 就職については断ろうかと思っていたのだ。日本には上手い話には裏があるって諺があるからね。でも断るわけにはいかなくなった。

 なぜかアパートまでついてきてたセシルさんに、仕事の方よろしくお願いしますと頭を下げることになった。

 セシルさんは、


「三日で追い出すなんて違法よ。訴えたほうがいいわ」


って騒いでいたのに、私がお願いすると


「そうね。王都では社員になるから寮もあるし、こんなボロアパート追い出される方が良い暮らしができるわよ」


と手のひらを返した。


 荷物らしい荷物はないので、荷造りはすぐ終わった。

 箱で作った冷蔵庫は持っていけないので、解体してゴミに出した。ゴミを出す収集所は捨てる端から拾う人がいるので、日本でのように袋に入れて捨てたり、紐で結ばなくて良いから楽だ。馬車に乗せることができる荷物は一つだけ。私の鞄の中身は服が数着と精米してた残りのお米。全財産の入ったお金は腰に巻きつけている。

 馬車での旅で一番の被害は、盗賊ではなくスリなどだ。これはヴァンにも注意されているから間違いない。

 私の全財産なんて大した額ではないけど、この財布の中には王都に行くまでに泊まる宿屋のお金も含まれている。万が一盗まれたら詰んでしまう。

 ガッテン街から王都までは、馬車で三日。夜は街灯などないので、途中の街で泊まらなければならない。野宿なんてしてたら、攫われて売られてしまう。


「絶対に安い宿に泊まっては駄目よ。これは支度金よ。引っ越し費用として社員にはいつも渡しているお金と同額だから気にしないで。わかっていると思うけど、子供とは言っても女性である貴方の一人旅は危ないの。本当は私と一緒に王都へ行く方が安全なのよ。絶対に安い宿はだめよ。聞いた話では賊と手を組んでいる宿屋もあるそうよ。一人旅の若い娘なんて狙ってくださいって言ってるようなものよ」


 そうなのだ。本当はセシルさんの視察?が終わるのを待って一緒に王都へ行かないかと誘われたのだ。でもそれってお貴族様と一緒の馬車に乗ることになる。三日もお貴族様と一緒。これは厳しい。かなり嫌だ。それに足が治っていることもバレてしまう。


 それで三日でアパートを追い出されるから、王都で働く前に、王都にいる幼なじみに会って王都で働くこと話したいと言って説得したのだ。

 私だって一人旅がいかに危険かは知っている。ヴァンからも注意されているからね。

 でも私には魔法がある。普段は使う気なんてさらさらない魔法だけどもしもの時は使うつもりだ。

 お貴族様と一緒に王都に行くよりは精神的に楽だろう。

  つらつらと考え事をしている間に、王都行きの馬車が来た。


「切符を見せてください。はい、乗ってください」


 私は五番目だった。もうこのガッテン街に来ることはないかもしれない。

 馬車に乗ると一応故郷になるだろうガッテン街を見る。名残惜しい気もしてきた。

 生まれてからずっと住んでいた街なのだ。


 馬車が走り出しても、小さくなる街を眺めていた。

 でも感傷に浸りたかった私を嘲笑うかのように、馬車は激しく揺れた。

 これはひどい。ヴァンから聞いていたけど、こんなに揺れるなんて。


 五分も経たないうちに、私は後悔していた。


「セシルさんと一緒に王都にいけばよかった……」


 きっと貴族の馬車はこんなに揺れないはずだ。

 

「さいあくだ・・・・・・」



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