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転生者ですが孤児だったので、活字拾いでなんとか生きています!  作者: 小鳥遊 郁


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74 人気写本師イングリスは将来を憂う  イングリスside

 ガッテン活字工房が出来てから数年。私の仕事は確実に減ってきている。

 まさかここまで影響を受けるとは考えていなかった。私は人気写本師だったことからそこまで影響があるとは思わなかったのだ。それにひらがなだけの本が印刷されていたから、漢字も扱う本を写本していた私には関係ないと思っていた。

 だがついに漢字を扱う本までもが、印刷されて発売されるようになった。写本師仲間の間でも最近はこの話ばかりしている。今後どうするかだ。まだ数年は仕事がなくなることはないだろう。だがそのあとは?

 写本師という職は衰退していくだろう。あっという間に何冊もの本が出来上がる印刷。

 私は年に三冊くらいしか書けない。頑張れば四冊、書けるかもしれないが、どう頑張ったところで四冊が限界だ。一文字でも間違えば書き直さなければならないのだから、かなり神経を使う仕事なのだ。

 同業者であるレナードは年に一冊しか書いていない。それでも暮らしていけるのだからとてもありがたい仕事だったのだ。

 写本の仕事がなくなれば、代筆の仕事くらいしかない。代筆だけで食べていけるのか不安しかない。


 だがまあ仕方ないかなと思う。時代が変わったのだ。あらゆるものが機械化されている。

 ガッテン活字工房で発売された本を読んでみたが、非の打ち所がない本だった。これが何冊もすぐに印刷されるのだ。一冊の本に数ヶ月もかからないから、待たせることもない。何冊も発行されるなら作者の収入も増えるのだろうか?


 これからのことを考えなければならない。

 『白銀の竜と契約の魔法使い』の本の間に挟まれていた紙を見る。本を読んでいた時に見つけてから気になっていた紙だ。


「新人賞か。……応募してみるか」


 実はいくつか書いている話がある。誰にも言ったことはないが、書くことは私の趣味だ。写本をしていると、ふっと思いつくことがあって、それをだ~っと書きためたものがいくつかある。だがどれもが最後までは書いていない。最後まで書こうとすると次の写本を頼まれたりで、次から次へと他の話が思いついて、完結できた小説がないのだ。


「これも何かの縁だろう。もう写本の時代は終わったのだ」


 賞はとれなくても書籍化されることもあると書かれている。小説を書く人はまだあまりいないだろうから、なんとかなるかもしれない。

 とにかくこの話の中から、どれかを選んで完結させなければ。

 写本師をしていた経験から、どのくらいの量で一冊の本ができるかはわかる。そして起承転結が大事だと聞いたことがある。これを踏まえて本を書き上げよう。


 時間ならある。頼まれた写本がキャンセルされたのだ。次にガッテン工房から発売される本だからだと言われた。その本の予約は一年位前だった。他の本の写本があったから伸びていたのだが、これも新人賞に応募しろということなのだろう。


 

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