73 活字拾いの娘、ヴァンへの贈り物を考える
ずっと悩んでいることがある。
「シーラはずるい。ヴァンに頼りすぎ~」
新人コメットは、ずるいずるいととにかく騒がしい。それで思い出した。確かに孤児院にいたよ。
「シーラはずるい」「シーラはずるい」
ずるいっ子だ。いつも私の後ろから「ずるい、ずるい」言ってた子だ。害がなかったから放ってた。
私が嫌いならついて来なければいいのに何故か私のいる所の近くにいつもいた子だ。
あまりにもずるいずるいうるさいから、ずるいっ子って呼んでいたから、コメットって名はすっかり忘れていたよ。
「ヴァンと私は兄弟のように育ったの。だからヴァンに頼るのは当たり前」
「そんなこと言ってたら、孤児院のみんな家族になるじゃない。ヴァンはシーラだけ特別に構ってるでしょ~」
あんまり考えたことなかったけど、確かにヴァンは私のこと特別に構っているかもしれない。でもずっと昔からそんなだったから不思議に思ってことはない。
「う~ん。でもコメットとアンリも仲が良いじゃない」
「そ、そんなことないわよ。シーラとヴァンの方が仲が良いわ」
「そうかなぁ。コメットとアンリは一緒の職場に就職してるし、二人の方が仲が良いよ」
「それはシーラが王都に就職しなかったからでしょ? ヴァンが何度も一緒に王都で冒険者をやろうって何度も誘ってたじゃない」
「そうだっけ?」
そういえばそんなこと言ってたかもしれない。コメットは私よりよく知っているよ。
「どうして王都に行かなかったの?」
「そ、それは、なんとなく?」
「何よ。それ」
実を言えば冒険者はないとずっと思っていからだ。魔法を使えば討伐ができるだろう。でも冒険者って討伐明けじゃないからね。野宿とか絶対に無理。特に虫がダメ。こっちの虫ってなんかデカイのが多いし。小さくてもダメだけど、大きくてもダメだ。
そういうわけで何故かヴァンに贈り物をするべきだってなっていた。
コメットってなんだろう。私より二歳も年下なのに逆らえないんだよね~。というか命令されちゃったよ。
「でもさ~何が良いのかわからないなぁ~」
ヴァンに贈り物なんて誕生日くらいにしかしていない。それも食べ物が多い。まあお金がなかったからだけど、今はお給金も良くなってるから形に残るものも買えるようになっている。
だからか余計に悩む。
「私が決めてあげる」
「なんでお前が決めるんだよ」
コメットに突っ込むアンリ。いつものことだ。二人が来てから、活字拾いの部屋が賑やかになった。
クラウスはそんな二人に目を向けながらも組版をしている。
「おかしが良いよ。おかし作ってよ」
「コメット、それお前が食べたいものだろう」
「砂糖なら私が買うから、初給料もらったし」
「いや、私からの贈り物なんだから、私が買うよ」
「えっ? でもそれだと私は食べれない?」
なんだろう。コメットの中では、おかしに決まってるけど、お菓子だと形に残らない贈り物になる。
それにコメット食べる気満々?
「そのおかしっていうの俺も食べたい。おかしの家で二人の兄妹が食べているのを読んでた時から気になっていたんだよ。なんかみんなシーラが作ってくれた、美味しかったって言ってるし」
クラウスが手をあげている。そう言えばクラウスは食べたことなかった。
「え~、じゃあ俺も! 俺も食べたい」
アンリまで手を上げている。いやみんな、ヴァンへの贈り物でしょ? なんでみんな食べる気満々なの?




