7 活字拾いの少女、クビになる
足を怪我した私は、ガッテン活字工房をクビになった。
実のところ、もう足は動くようになっている。
でも治ったなんて言えないから失敗したなとは思っていたら、まさかのクビ。
魔法を使ったことを隠すためにしばらく休まないといけないかなくらいにしか思っていなかっただけにショックだ。
「すまないね。君はよく働いてくれていたからと工場長には言ったんだが、規則だと言われてね」
心の中で活字先生と呼んでいた活字長が、申し訳なさそうな顔をする。
社員でない人間が、怪我や病などで働けないと判断されたら、解雇する。そういう規則があるらしい。
なんか昔、怪我をしてないのに怪我をしたとか言って休んでギャンブルをして、お金がなくなったら戻ってきて、を繰り返す人たちがいたらしい。社員でないからと働きたい時だけ働いて、忙しい時でも急に休んだりとかもっと給料の良いところにヘッドハンティングされたりして困ったらしい。まあ社員でないのだから保証もないわけで、もっと良い働き場所があったらよそに移るのは自由だよねとは思うけど、そういうことが重なって、こういう規則ができたみたいだ。困ったもんだよ。
足は治っている。でもそれを言えば治癒魔法を使用したことがバレるかもしれない。
それに多分、規則だけが問題ではない気がする。イライラおじさんが何か言ったのだろう。梯子が壊れたことも私のせいみたいになってるのかもしれない。
今月分の給料はもらえた。梯子代は請求されなかったらしい。減額はなかった。ちょっとホッとした。
「なんか梯子代金を引けとかいう者がいたけど、あの梯子は調子が悪いって皆から言われてたんだ。なかなか直せなかったのも、その人がまだ良いって止めてたからなんだ。それなのに弁償させようとするんだから困ったやつだよ」
絶対それ言ったの、イライラおじさんだよね。
「え~それなら落ちた私をクビにしないでくださいよ~」
「すまないね。規則だからね」
先生と呼ばれる人は、前世でも規則規則って煩かったっけ。勝手に活字先生と呼んでいたいただけなのに、本当に先生並みに真面目な人だった。
まだ一年も働けていない。もう図書室の本も読めないのか。それだけが心残り。
これからどうしよう。
結構頑張って稼いでたからすぐ困ることはないけど、就職難しいだろうな。
トボトボと歩く。まだ工房に近いから一応足を引きずる演技も忘れない。
ヴァンは王都に帰ったから、相談することもできない。
本当に1人なんだなと途方に暮れていた。




