69 活字拾いの娘、新人賞の賞金を見て嘆く
ガッテン小説新人賞
募集作品:オリジナル小説・完結済みに限る
応募資格;貴族、平民問わず
締切:八の月の末日
応募方法:ガッテン活字工房に持参、もしくは送付。紙とインクがない人はガッテン工房へ相談してください。 善処します。
賞:大賞:金貨20枚とガッテン工房での書籍化。優秀賞金貨10枚とガッテン工房での書籍化
賞に選ばれなくても書籍化に値する作品があれば書籍として販売することもあります。奮ってご参加ください。
これが大々的に発表された。
金貨20枚とは、さすがガッテン工房。ううっ、欲しかった。白雪姫とかシンデレラとかラプンツェルとか色々あるのに……。残念すぎる。
「ガッテン活字工房の一大事業よ! これから忙しくなるわ、頑張りましょうね」
「あのぉ? 審査員は私たちだけってわけじゃないですよね?」
「当たり前でしょ?」
「そうですよね~」
ほっとした。
「あなたたちの仕事は、仕分け作業よ。たくさん送られてくる作品の中からこれはっていう作品を選ぶ係ね。重要な役目よ」
要するにここで篩にかけるってこと? 一番重要かもしれないけど、一番大変な作業では?
「セシル様、それだと活字拾いができませんが?」
「大丈夫よ、三日後に新人二人が入社するから。ガッテン街の活字工房で活字拾いの基礎を学んでもらってるからすぐに戦力になるはずよ」
どうやらガッテン孤児院の二人が十四歳になったようだ。でもすぐ戦力になるかはわからない。クラウスは十四歳になるまで貴族として漢字を学んでいる。だからここでもすぐに活字拾いができたけど、採用された二人はそれだけ漢字を知っているのだろうか。
「その二人ってフリードとルイーゼですか?」
「そうよ。クラウスは知っているのね。シーラも二歳しか違わないから知っていると思うわ」
残念ながら名前だけでは誰だかわからない。たぶん本人を見たら思い出すだろう。たぶん。
「クラウス、知ってるの?」
「ああ、二ヶ月だほどだが、孤児院に戻った時世話になった。あの二人はシーラが書いた本のファンだぜ。まあ俺はシーラが書いたとは知らなかったんだが、二人は知っていたんだろ」
「どうして二人だってわかったの?」
「それは二人が漢字を使っているのを見たからな。これであってるかって聞かれたこともある。漢字のことを話していたのは二人だけだった。まあ、隠しているだけで他にもいるかもしれないが」
フリードとルイーゼが孤児院に来たのは七歳を過ぎた頃らしい。それまでに習っていた漢字を忘れないように努力していたようだ。
「そうそう、ガッテン街で思い出したわ。さっき手紙が届いたのだけど、シーラがイライラおじさんって言ってたドンク製紙長なんだけど、今度この新人賞に応募するそうよ。題名は「三匹のオーク」ですって。売れそうにない題名よね」
三匹のオーク? どこかで聞いた題名だよ。まさか盗作の盗作?
「「三匹のオーク」ってシーラの作品じゃないか。すごいなイライラおじさん。他人の作品で出品するのか」
「えっ? シーラの作品なの? 興味のない題名だったけど、読んでみましょうか」
セシルさんはイライラおじさんの盗作には興味がなさそうだ。それにしてもイライラおじさんはどうして「三匹のオーク」を知っているのかな。ガッテン孤児院にしか置いてない本なのに。




