61 活字拾いの少女、悪人を成敗する②
「縄を切れるのか?」
「切れなくはないけど、足もなくなるかも」
縄だけを切れるほど、魔法の練度はよくない。繊細な扱いは苦手だ。それに切断された足を元に戻せるほど治癒魔法が得意でもない。前世が医者だったら治癒魔法とかで無双できたかもね。
「なんだよ、それ。足がなくなるのは困るぞ」
そうだよね~。どうするかな~。縄を解くだから~。【縄解】? 読み方がわからない。
反対にするかぁ。【解縄】ときなわだけどかいじょうの方が魔法が反応しやすい気がする。
「クラウス、足を出して」
「いや、足がなくなるのは困るって、それに痛いのも嫌だ」
「大丈夫。大丈夫。良い魔法考えたから」
「なんで自分の手からやらないんだよ」
「それは……。初めての魔法は何があるかわからないから、自分に使ったらダメだってアレックに言われてる」
「こ、怖っ。怖いだろ、それ」
「もう、縄を解こうって言ったのはクラウスでしょ。ごちゃごちゃ言わない」
私はごちゃごちゃうるさいクラウスは無視して、縄を解くことにした。クラウスは往生際悪く足を私から隠そうと後ろを向いたから、ちょうど良い。手に巻かれている縄から解くことにした。
「【解縄】かいじょう!」
縄がするりと緩み下に落ちた。
「おっ? 解けた。縄が解けたぞ」
「じゃあ、足出して」
「いや、手が使えるから、もういいよ」
どう言うことだろう。ちゃんと魔法使えたのに、まだ嫌がられてる。
まあ、いいか。自分の手の縄を解こう。無詠唱でも解けるけど、ここはやっぱり詠唱しよう。
「【解縄】かいじょう!」
「ええ~、自分で解いたの?」
「魔法が使えるからね」
なんか縄で括られたところが赤くなっている。ちょっとヒリヒリするよ。容赦ないな活字先生、
「まあ、これでなんとかなりそうね」
「なるべく王都から近いところで停ってくれるといいな」
クラウスが言うように近場で解決しないと、そこから歩いて帰ってこなければならないんだもんね。いやそうでもないよ。
「この馬車で帰ってくればいいじゃない」
「誰が馬車を動かすんだ? 俺は馬車に乗ったことはあるけど、馬車を自分で動かしたことはないよ」
「馬はあるんだから、馬に乗れば? 貴族だったんだから乗馬はできるんでしょ?」
そう言うとクラウスは目に見えて落ち込んだ。どうやら乗馬は苦手らしい。
どうやって慰めようか悩んでいると馬車が停まった。思っていたより王都から近い。
私はすぐにでも結界魔法が使えるようにクラウスの手を摘む。そうしないと弾いてクラウスが結界の外に飛ばされたらいけないからね。仲間だって認識がないと弾かれるのだ。検証した時はヴァンやアレックだと大丈夫だったからクラウスも大丈夫だと思うけど念のためにね。
馬車の扉が開いた。
灯が照らされた。
「あら? 縄で括っていたはずが解いてありますね。クラウスが外したのですか? 意外と力があったようだ」
「活字先生、どうしてこんなことするのですか?」
「シーラはまだ私のことを先生と呼んでくれるのか」
名前を知らないからね。仕方ないんだよ。
「シーラはあなたの名前を知らないんですよ」
おいクラウス余計なことを。しかもクラウスは私たちと話す時とは違う、上品な感じで話している。
「はぁ? そんなことないだろ。一年近く一緒に働いていたんだぞ」
「シーラならよくあることです。私のことも双子でなければきっと覚えてなかったでしょう」
クラウスが言うように私は人の名前を覚えるのが苦手だ。横文字の名前は覚えにくいんだよ。
「仕事中に鼻歌を歌ったり、人の名前を覚えられない子供がどうして王都に栄転するんだ。しかもその次に選ばれたのも子供だ。私はずっと王都への異動を希望してたんだ。ずっと……。妻子が王都に住んでいるんだ。このままでは離縁すると言われた。お前たちさえいなければ私が異動できる。悪いがいなくなってもらう」
活字先生は賢い人だと思っていただけにがっかりだ。がっかりだよ活字先生。




