60 活字拾いの少女、悪人を成敗する①
「そんなことより、昔あの男たちをやっつけた時の魔法でなんとかならないの?」
クラウスが焦ったような声を出す。そうしながらも縄を解こうと必死で腕を動かしている。
「やっつけた魔法?」
「覚えていないのか? 重いって言われたあとやっつけるって言って魔法使ってただろ? なんかヴァンがやっつけたことになってたけど、俺はあの場にいたかさぁ。どう考えてもシーラが魔法を使ってたよな」
「おもい? なんか思い出してきた。成敗した気がする」
「成敗って、重いって言っただけで成敗かよ」
いやクラウス、重いってだけで成敗したわけじゃないよ。
あの時は攫われまいとして、確か重力の魔法を使ってたんだよ。だから重いって言われたのはそのせいなんだけど(重くないからね)、まだアレックに会う前だから、そんなに魔法を使ってるっていう感覚はなかった。だから弱い魔法だったんだよね。
「今の私が重力魔法を使うと潰れる気がする。何もかもが」
重力魔法はすごく良い魔法のような気がするけど、使い勝手は悪い。だから使わなくなったんだよね。すっかり忘れてたよ。
「じゅうりょく魔法? なんだよそれ」
「クラウス、重力って知らないの?」
「だからなんだよ、それ?」
そっかぁ、重力って知らないのかぁ。万有引力って言っても通じないだろうし。この魔法は私だけしか使えないね。
「とにかく滅多なことじゃないと使えない魔法ってこと。ぺっしゃんこになった人間見たくないでしょ?」
「まあ、そうだなぁ。でもこっちの命がかかっているんだからもしもの時には使ってくれよ」
「いや結界魔法でいいでしょ。でも私が魔法を使えるのは内緒だから、クラウスが使っているってことでお願いよ」
「でも俺、生活魔法しか使えないんだ」
「そんなこと誰も知らないんだからいいのよ。成人前まで貴族として暮らしていたんだから魔法が使えても誰も驚かないわ」
我ながら良い考えだ。これなら魔法が堂々と使える。
クラウスはなんか不満そうな顔をしているけど、私の魔法は内緒なのだから我慢して欲しい。
「おい、なんか馬車が動き出したぞ」
音は聞こえないけど、確かに馬車が揺れている。
「あら、今から馬車を壊そうと思ったのに、動き出しちゃった。クラウスどうする?」
「停ってからにしよう。動いている時に壊すと俺たちの方が危険だ」
ガタゴトと馬車が走る。外の声が聞こえないのに何故か馬車の音は聞こえる気がする。揺れる振動がそんな気にさせるのだろう。ガッテン街に行くには西門を利用するはず。
門は王都の中で事件がない限り、出る時には検査はしない。いつ停まるのだろうか。
でもその前にこの縄をなんとかしないとね。なんか良い魔法ないかなぁ。




