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転生者ですが孤児だったので、活字拾いでなんとか生きています!  作者: 小鳥遊 郁


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59 いつか、きっと俺が助ける  ヴァンside

 今回の依頼は指名依頼だった。

 不穏な噂があると聞いてから、王都から離れる依頼は受けていなかった。だがこの指名依頼は断ることができない依頼だった。


「流石に王族からの依頼は断れないよなぁ」


 二年前に希少な花の依頼を達成してから、毎年頼まれるようになった。まさかあの依頼が王族の依頼だとは思わなかった。もし王族の依頼だと知っていたら、絶対に受けなかったのに。厄介ごとに巻き込まれるのはごめんだ。

 だが、王族からの指名依頼は断れない。それに報酬も格別に良い。


 この花はこの時期にしか咲かない。それもダンジョンでしか咲かない。偶然見つけることができたのが二年前。なぜか他の人には見つけることができないようで、あれからは指名依頼されるようになった。


 いつもは一週間くらいかけて採取していたが、今回は急いだ。明日はシーラと約束している。なんとか間に合いどうだ。さすがに三日はきつかったな。


「そろそろ門が閉まる時間だ。この辺りで野宿でもするか」


 最終の馬車が出ていなかったら、間に合ったのだが仕方ない。ダンジョンのある街で泊まればよかったかもしれないが、なんとなく急がなければと思って走った。だがやはりと言うか、ずっと走り続けることはできなかった。

 気ばかりが急く。 


 この感じは昔を思い出す。

 あの時も嫌な感じがしたのだ。


 俺がまだ十一歳で、シーラが七歳だった。

 俺は他の孤児院の子供達とガッテン街の森で遊んでいた。成長期だった俺たちは常にお腹を空かせていた。

 森には美味しくはないがなんとか食えるものはある。

 だがシーラはその日、来なかった。シーラは俺たちと違ってそれほど空腹ではないらしく、美味しくないものをわざわざ食べたくないと言っていた。

 だからいつもだったらそれほど気にならなかったのに、なぜかその日は森で山芋を見つけても食べる気にはならなかった。

 どうにも気になるから、森から帰ることにしたのだが、森の出口まで来たとき、孤児院に残って本を読んでいたコンラートが走って来るのが見えた。


「シ、シーラが、変な男たちに絡まれてる」


 コンラートが咳き込みながら、なぜ絡まれたか話してくれた。走りながらだからよく聞き取れないが、この街では見かけない男たちがシーラに近づいてきてわざとぶつかってきたらしい。

 コンラートは近くで見ていて、これは何か変だと思って俺を呼びにきたそうだ。

 コンラートはまだ六歳だが、その場でシーラを助けにいかず俺を呼びにくるという機転をきかす。

 四歳の自分では助けにならないとわかっているのだ。

 だが俺だってまだ十一歳だ。助けることができるだろうか。

 連れ攫われていたらどうしようかと思っていたが、まだその場所で揉めていた。


「どうしたんだ、シーラ」


 その男たちとシーラの間に割り込む。三人の男だち。コンラートが言うように知らない男たちだ。


「わからない。歩いていたら急にぶつかってきた」


「だから~、ちょっとこっちにおいでって言ってるだろ。ぶつかっておいて謝ることもしない。孤児だから礼儀も知らないのか?」


 シーラが孤児だと知っていてぶつかってきた? 何が目的だ?


「だが噂は本当だったな。この街の孤児は見目が良いって。これなら高く売れるぞ」


 隠す気もないのか、男の一人がつぶやいた。

 人攫いだ。まさかこんなに堂々と犯罪が行われるのか。

 周囲には誰もいない。この通りはいつもなら人がいるのに何故いないのか。

 皆、察して隠れているのだ。誰だって自分が可愛い。


「ほらこっちに来い」


 その時の俺はその男たちとシーラの間に割り込むことしかできず、それも二人の男たちにどつかれただけで吹っ飛んで転がっていた。すぐに起き上がることができない間にシーラは男に捕まっていた。


「おい、早く抱えろよ、片手で抱えられそうじゃないか」


「いやそれが結構重くて」


 あっ、それは言ったらダメなやつだ。俺はその時、シーラじゃなくて男たちの方が心配になった。


「重い? 失礼なやつだ。やっつけてやる」


 シーラがそう言った瞬間に、三人とも地面に潰れていた。


「「「……おもい、おもい……」」」


「じゅうりょくまほうで重くなった。悪いやつ、やっつけた」


 その後、現れた憲兵によって三人は捕えられた。そんなに強くない憲兵はどこかに隠れて見ていたとしか思えないタイミングだった。


 そして何故か、この三人を捕まえたのは俺になっていた。どこに行っても賞賛される俺は居たたまれなかった。

 だがシーラが魔法を使ったことは内緒にしなければならず、誤解だ自分じゃないとは言えなかった。


 俺は強くならなければならない。その時決意したのだ。今度は絶対自分が助けるのだと。そう誤解ではなく自分が助けるのだ。



 昔のことをつらつらと考えながら野宿の用意をしていたら、ましろの声が聞こえた。


『ヴァン、見つけた。シーラ、シーラ、攫われた。大きな大きな馬車の中』


 大きな大きな馬車? クラウスが言ってたガッテン工房の馬車か?

 それならこの道を通る。待ち伏せするか? いや、それより走ればまだ門が閉まる前に着くのではないだろうか。


 今度こそ俺がシーラを助ける。




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