58 活字拾いの少女、拐かされる④
「クラウス、私は魔法のことなんて声に出してないよ。どうして心で思ったことがわかるの?」
「な、何言ってるんだよ。今、シーナが言ってただろ」
クラウスに断言されるとそんな気がしてくる。私、声に出してたかな?
「あっ、そういえば、ヴァン、王都にいないんじゃないか?」
急にクラウスがそんなことを言い出した。
「ヴァンがいないなんて、そんなこと聞いてないよ」
ヴァンが王都にいないなんて聞いていない。でもヴァンの行動全部を知っているわけじゃない。
え~、じゃあ、助けになんて来れない。
「でもシーラが聞いてないってことは俺の勘違いかもな」
いや、明日の夜会うことになっているから、いないことをわざわざ言わなかったのかも。
どうしよう、助けになんて来れないかも。
魔法があるから大丈夫だって思っていたはずなのに、ヴァンが王都にいないかもって聞いただけで震えてくる。
「おかしいなぁ、なんか怖くなってきたかも」
「いや、俺はずっと怖いから。見てみろよ。馬車の中になんもない」
確かに馬車の中には何もない。でもそれが?って感じだ。
「それが何?」
「ガッテン街から王都まで何日かかるか知ってるだろ。食いもんが用意されていない」
確かに攫われている状態で、宿に泊まるなんてことはないだろう。でも心配することが食べ物のことなんて、ちょっと食いしん坊すぎる。
「食いしん坊って、そうじゃない。食べ物がないってことはガッテン街に行くまでに馬車から降ろされるってことだ。ガッテン街ならよく知っているし、馬車の扉が開いた時に隙を付けば逃げれるかもって思っていたんだけど、そうもいかないみたいだ」
やっぱり心の声を聞かれている。でも今はそんなことを聞いている場合じゃない。
クラウスが言うように全く知らない場所だとどこに逃げればいいかもわからないってことだ。
怖い。いや、怖くない。魔法があるもん。
大丈夫。結界魔法がある。悪い奴は入ってこれないもん。
「何? その結界魔法って聞いたことあるぞ。アレック様が作った魔法だろ。なんでシーラが使えるんだ? いや、まあ、それは後だ。その結界魔法ってどのくらい使えるんだ? 魔力がいるんだろ?」
そうだ。ずっと使用できるわけじゃない。
「そうだ、クラウスも魔法使えるんでしょ? なんかやっつける魔法ないの?」
「ない。俺は攻撃魔法は使えない」
「え~~~!!」
「だいたい、そんな魔法が使えるのなら、今頃、この縄だって切ることができている」
「いや、私が驚いたのは、光球ずっと明るいでしょ? 保有魔力も多そうだし攻撃魔法使えないってことはないと思うよ」
「そんなはずはない。俺に使えるのは生活魔法くらいだって言われたんだ」
「誰に言われたの?」
「魔法の先生に言われたんだ。あいつと違って俺には才能がないって」
才能?魔法に才能なんていらないでしょ。魔力があれば使えるのだから。ただ漢字の理解はいるけどさ。
魔法の先生がそんなこと言うなんて驚きだ。だってアレックはそんなこと言わなかった。私の魔法の先生はアレックだからね。




