57 活字拾いの少女、拐かされる③
どうしよう。
魔法があるから大丈夫だって、思ってたけど。いや、今でも死ぬことはないだろうって今でも思っているけど、困ったなぁ。本当に困った。結界魔法使っても大丈夫かな。他の魔法も魔物相手と違って、敵が人だと使いにくい。
「急に黙ってどうしたんだよ。怖くなったのか?」
普通怖いよ。っていうか、意外と落ち着いているクラウスがおかしい。
「クラウスはどうして落ち着いているの?」
「それはヴァンが助けてくれるだろうって思っているからさ」
驚いた。孤児院出身の子って、ヴァンを神聖視しすぎじゃないだろうか。いくらC級冒険者だといっても、私たちが攫われていることすら知らないのだから助けになんて来られない。
「ヴァンは私たちが攫われていることすら知らないのだから、助けになんてこれないよ」
「いや、そんなことはない。俺は一日に一回ヴァンにシーラについて何もなくても知らせることになっている。だからヴァンは異変に気付いている」
「それってどうやって知らせているの?」
「ましろを使っている」
ちょっと待って。私のましろを使っているのに、どうして飼い主である私が何も知らされていないの?
もう少し詳しく聞こうとした時、私を呼ぶ声が聞こえてきた。
『シーラ、シーラ、どこ?』
ましろの声だ。その声は耳で聞く声ではなく。直接頭の中に聞こえてきた。不思議な感じだ。
「ましろ、ここだよ、ここにいるよ」
私はガバッと起き上がると、キョロキョロと辺りを見回しながら声を出す。
「おい、急にどうしたんだよ」
「ましろが呼んでる」
「いやなんも聞こえないぞ」
どうやら頭の中に響く声は私にしか聞こえないみたい。
「光球」
クラウスが光る玉を浮かべた。
「クラウス、魔法が使えたの?」
「成人になる前に多少は教育されたからな。このくらいの魔法なら使える」
「じゃあ、もっと前から明るくしてよ」
「馬鹿だなぁ、シーラは。ずっとつけていたら魔力がなくなるだろ。いざって時のことを考えてたんだよ」
せっかく光る玉を出してくれたけど、ましろは見当たらない。それもそうだ、ここは鍵もかけられる馬車の中なのだから。じゃあ、ましろはどこにいるんだろう。
『シーラ、魔法使った? 今、魔法使った?』
「使ったよ」
『シーラ、魔法使った? 返事聞こえない。シーラ返事するときは魔力を使って』
ましろっていつもシーラとしか言わないから、シーラしか言えないのかと思ってた。まさかこんなに話せるなんてびっくりだよ。
『ましろ、聞こえているよ。えっと、光の玉を出す魔法をクラウスが使ってるよ。これで聞こえる?』
よくわからないけど、返事に魔力を乗せてみた。
『いる、この馬車の中、シーラいる。ヴァン、知らせる。待ってる』
「やったよ、クラウス。ましろがヴァンに知らせてくれるって」
「本当か。でもこの馬車、鍵かかっているけど開けれるかな」
「大丈夫だよ。ガッテン工房の馬車なんでしょ? セシル様に知らせて、開けてくれるよ」
少し時間はかかるかもだけど、助かりそうで安心だ。これなら私が魔法を使わなくても大丈夫そう。
「おい、シーラ。今魔法を使わなくても大丈夫って言わなかったか? やっぱ、シーラも魔法使えるんだな」
また心の声が漏れている? いやおかしいでしょ。絶対に声に出していないよ。
この間からおかしいなって思ってたんだよ。いくらなんでもそんなに声出してないよって。




