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転生者ですが孤児だったので、活字拾いでなんとか生きています!  作者: 小鳥遊 郁


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55 活字拾いの少女、拐かされる①


「ここはどこ?」


 目覚めると真っ暗で何も見えなかった。


「知らない天井だ」


 真っ暗で何も見えないけど、一度言ってみたかったのだ。

 それにしてもどうしてこんなところで寝ているのだろう。

 確かガッテン工房の廊下を歩いていた。図書室からの帰りだった。それは覚えている。

 後ろから腕が回されて、その時、てっきりクラウスだと思った。時々わって驚かされる時があったから。あっ、それって昔の記憶だ。今はそんなことしなくなった。そうだ、今一緒に働いているのは本当はコンラートだから。そう私をからかって遊んでいたのはクラウスだったっけ。

 だからこの腕は彼じゃない。と思った時には布を口に当てられていた。

 その後の記憶がない。

 

 油断大敵。

 

 アレックには言われてたんだよ。常時「結界」魔法をしていないといけないって。でもそんな危険、全然ないから忘れていた。


 だってこの「結界」魔法には欠点がある。

 自分も守れて、結界張ったまま攻撃もできる。

 超便利に思えるけど、実はそうでもない。


 私の「結界」に触れただけで、吹っ飛ぶのだ。

 うちにいるときは、触れたら不法侵入だから吹っ飛んでも構わないけど、街中とか仕事中はそうはいかない。

 過剰防衛になってしまう。改良の余地があるよねってアレックとも話をしていたのだ。

 まさか仕事場で拐かされるなんて思っていなかった。


 

 起きあがろうとしたけど、目が回る。なんか薬品でも使われたのかな。

 頭の中を整理しよう。

 今日は朝、クラウスが寮に迎えに来なかった。

 寝坊でもしたのかなって思って、一人で工房に出社した。

 結局昼になってもクラウスは現れなかった。でも心配はしてなかった。

 なんであの時、おかしいって思わなかったのだろう。


 たぶん私の頭の中は、まだ日本人なんだと思う。平和な日本人だった時の記憶が邪魔をしたのだ。

 だから呑気にもお昼を食べた後に、アレックやヴァンに連絡するでもなく図書室に寄ったのだ。  あの時、ましろを指笛で呼んで、二人に知らせるべきだった。セシルさんにも知らせるべきだった。無断欠勤を知らせたらまずいだろうなんて考えた自分の頭を殴ってやりたい。


 図書室には懐かしい人がいた。活字先生だ。


「シーラさん、お久しぶりです」


「あっ、えっと、か、活字長さん、お久しぶりです。どうしてここに?」


 活字先生とは私が勝手に呼んでいるだけだから、なんて呼ぼうか迷ってしまった。


「セシル様に呼ばれてね」


 あっ。もしかして活字長もここで働くことになるのかな。クラウスが入ってきたけど、まだまだ人手不足だからね。


「もしかして、活字長も王都で働くんですか?」


「あ~、まあ、いずれはそうなるかな」


「わ~、楽しみです」


 活字長も本好きだから、ガッテン街の図書室でもよく本を読んでたんだよね。ガッテン街へ帰るための馬車の時間がまだなので図書室に寄ったそうだ。

 私はその後、少しだけ本を読んだけど、昼からの就業時間になったので図書室を出た。

 活字長はまだ本を読んでいた。集中しているようだったので挨拶はしなかった。

 本を読んでいる間は邪魔されたくないものね。わかる、わかる。


 その後歩いていたら、こんなことになっていたのだ。


「おっ、やっと起きたのか?」


 ちょっと離れたところから声がした。


「えっ、クラウス? クラウスなの?」


 声だけで顔は見えないけどクラウスに間違いない。ここ声はクラウスだ。

 犯人はクラウスだった。

 


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