表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生者ですが孤児だったので、活字拾いでなんとか生きています!  作者: 小鳥遊 郁


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
51/58

51 活字拾いの少女、ストーカーされる

 最初は偶然だと思った。


「おはよう」


 寮の前で挨拶され一緒に職場まで話をしながら歩いた。

 活字拾いをしている時も視線を感じた。クラウスも一緒に活字拾いをしていたからだと初めは思っていた。


「クラウス、今日は活字拾いが遅いよ。集中が大事」


 活字拾いが遅いことを注意する。


「はい。シーラ先輩」


 あっそうだった。もう呼び捨てでいいよって言わなきゃ。


「クラウス、あの……」


 私が言い終わる前にクラウスが活字拾いをしながら、口を挟んできた。


「この先輩っていうのいいですよね。どちらが年上か周囲から見てもわかるようになるから。さすがです。シーラ先輩」


 それは見た目ではどちらが年上かわからないって言いたいのかクラウス。そんなことはないと言おうとして、クラウスをもう一度じっくり観察する。

 私より20センチは高そうな背丈。白銀の髪と磨きあげられた宝石のような翡翠色の瞳。貴族らしい上品さは孤児院にいた時にはなかったものだ。


 それに比べて自分はどうだろう。15歳の平均より低い背丈。実年齢より幼く見える顔立ち。

 悔しいけどクラウスが言うように、先輩呼びはせめて私が実年齢に見えるようになるまでは現状維持で行くことにした。


 お昼には一緒に社員食堂で食べて、そのあとはいつものように図書室に行くことにした。

 そこにもクラウスは付いてきた。あれ? とは思ったけど、クラウスも本が読みたいのだろうとその時は思った。本を読んでいる間にも視線を感じたけど本に集中したかったからスルーした。

 休憩が終わりに近づいて、図書室を出て活字拾いの職場に戻る前にトイレに寄ったのだ。


「じゃあ、先に戻ってて」


 確かにそう言ったはず。それなのに用事を済ませてトイレを出たら、クラウスが待っていたのだ。ビクッとしちゃったよ。

 

「クラウス、あなたストーカーなの?」


 思わず言ってしまった私は悪くないと思う。


「すとかー?」


 そういえばこの世界にはストーカーという言葉はなかったんだった。


「変質者のことよ。今日は朝からずっと付き纏ってくるし、視線も感じてるよ。どうしたのよクラウス」


「変質者って酷いよシーラ。俺はシーラのことを心配して護衛をしているのに」


 クラウスが大きな声で否定するけど騙されないよ。


「私に逆恨みしてる人がいるって知ったのは、ガッテン街にいる時でしょ。でも昨日までのクラウスはこんなに付き纏わなかったよね? ヴァンたちとの待ち合わせだって一緒に行かなかったじゃないの。それなのにどうして今朝からこんなに付いてくるのよ」


「あ~、それは、ヴァンとアレックさんが、シーラから目を離すなっていうから~」


 確かにあの二人に命令されると断れないかもしれない。でも外ならともかく、職場で危険なことなんてあるはずがない。

 それはクラウスだってわかるはず。クラウスは無駄なことが嫌いだ。それなのにここまでするには理由があるはず。


「ただ命令されただけで、クラウスは動かないよね」


「いや、俺だってシーラのこと心配してるんだよ」


 目が心なしか泳いでいる。


「私と目を合わせられないことなの?」


「いや、そんなことは。でも……」


「もう言い逃れはできないよ。お見通しですからね!」


 クラウスがガックリと肩を落とした。


「シーラ先輩を守れたら、美味しいお酒のお店に連れて行ってくれるって……」


 なんと! 私には一度もお誘いがなかった店だ。きっと美味しいお酒がたくさん置いてあって、綺麗な女の……、いや流石にそれはないか。クラウスはまだ14歳だからね。


 それにしてもこの世界はお酒を飲む年齢にこだわりがなさすぎ。私の周りではなんとなく14歳で成人してからっぽい感じになっているけど、実は何歳から飲んでも構わないのだ。王都だとそうでもないけど、水がそのままでは飲めない地域もあるからってことらしい。

 そういうわけでアルコールに弱い私は水が普通に飲めるところにしか住めないってことになる。

 でもまだ日本で言えば未成年の私。だから20歳になれば飲めるようになるのではないかと期待している。


「クラウス、あの二人にはうまく言うから、護衛は外出の時だけで良いよ。職場は関係者しか入ってこれないから大丈夫だよ」


「いや、俺もやりすぎだなって思ってたんだ。シーラの方で誤魔化してくれるのなら有り難い。でも美味しいお酒だけに釣られたんじゃないんだからね。ヴァンもアレックさんも迫力があって、逆らえなかったんだ」


 こうして半日ストーカーだったクラウスは普通に戻った。

 たった半日だけだったけど、付き纏われるのは精神的にきついものだった。


「それにしてもクラウスは本好きだと思っていたのに、図書室で本を読まなかったの?」


「えっ? 読んだよ。ここに勤めることにして1番良いことって本を読めることだよね。シーラは図書室にあった『推理する猫』読んだ? ちょうど良いところで昼休みが終わったから、気になって仕方ないよ。早く明日がこないかなぁ」


 そうなんだよ〜。図書室で読ませてくれるのはとてもありがたいけど、貸し出しはしていないから続きが読みたくて読みたくて‥‥‥、あれ?


「図書室で本読んでたの?」


「図書室で本読まなくて何するんだよ」


 ずっと見られてるって思ってたけど、違ったようだ。自意識過剰だったみたい。反省。反省。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ