49 活字拾いの少女、双子について語る
「シーラ商会のことは聞いているよ。セシル様がやる気になってるみたいだから、私も出資させてもらったよ」
アレックには話していることは聞いていたが、出資者の一人になったことは聞いていなかった。
ローズマリアさんはアレックがガッテン孤児院にいたことを知らないけど、セシルさんはガッテン子爵の子供でもあるし、いずれはガッテン子爵家を継ぐことが決まっているので、アレックが孤児院にいたことを知っていたそうだ。そして私とアレックが仲が良いことも調査済みだったようで、商会を立ち上げるにあたってアレックにお伺いを立てていたようだ。子爵家と侯爵家。身分の差は歴然としている。
こういう立ち回りも覚えていかなければならないことなのよとセシルさんは言っていた。
「ってことは、アレックがいなければシーラ商会ではなくセシル商会になっていて、全ての利益はガッテン子爵家のものになっていたってことか?」
ヴァンがエールを飲む手を止めて、会話に参加してきた。
「いや、それはないだろう。あの家は昔から甘いところがあるからな。先代も人が良過ぎてよく騙されていたらしい。だがその人の良さのおかげで今がある。本を大量に作る知識を得ることができたのも先先代が人助けをしたからだと聞いている」
「やっぱり。私の人を見る目は確かだったのね。セシル様は貴族なのに一度も私のことを蔑んだりしなかったもの。良い人よ」
「まあ、悪い人間ではない。ローズマリアもガッテン子爵家だから手伝いを許されたのだ」
ガッテン子爵とは会ったこともないけれど、評判の良い方のようで安心だ。やっぱり雇い主は悪人にょり善人の方が良いもんね。
「ローズマリア様と縁談のお話はしたの?」
「ああ、それな。今、少々揉めている。当分工房には行けないだろう」
「そっかぁ」
まあ王子様との縁談だもの大変だよね。
「でも新人が入ったんだろ」
手紙で知らせていたからヴァンもアレックも新人が入ったことは知っている。
「ガッテン孤児院にいた子だろ。誰だ?」
「双子のクラウス」
「ああ、あいつか。確かシーラより一個下だったよな」
ヴァンもクラウスのことは知っていた。まあヴァンは私と違って孤児院にいる皆と仲が良かったからね。
「そんなやついたか?」
アレックが首を傾げている。私でも知っている双子たちだけど覚えがないらしい。
「アレックが来た頃にはもういなかったんじゃないか。あいつら祝福の儀のあと実家に引き取られたからな」
「そういえばシーラより一つ下ってことは、そうなるな。どこの家なんだ? 成人する一ヶ月前に孤児院にまた入れるなんてすごい家だよな」
「確か、アルクレインって言ってた」
「アルクレイン? あそこの息子はコンラートだけのはずだ。双子だとは聞いていない。初めからひとりだけしか引き取るつもりはなかったってことか」
どうやらアルクレイン家は双子のうち優秀な方しか引き取るつもりがなかったようだ。コンラートとは双子の片割れの名だ。
「貴族の世界は大変だな」
「そう大変なんだよ、本当に。でも双子とはいえ、そんなに似ているのか? 私はまだ双子を見たことないんだが」
「似ているというか瓜二つだよ。同じ髪型をしていたから見分けがつかなかった」
「そんなにか?」
「でもヴァンは騙されなかったよね」
あの二人よく入れ替わって、人を騙して笑ってたけどヴァンだけは騙されなかった。
「よく見れば違いがわかるもんだよ」
「二卵性なら違うんだけどね~」
「二卵性?」
「二卵性とはなんだ?」
「そう双子でも性別が違ったら二卵性だからあんまり似ていないでしょ? まあ性別が同じでも卵が違ったらあそこまで似ないから、あの二人は一卵性だね」
「卵子とはなんだ? またニホンジンが関係しているのか? まさかニホンジンは卵から生まれるのか?」
「いやこっちも同じでしょ。あの二人は同じ卵から生まれるから全く同じ顔なんだから」
私が断言すると二人は微妙な顔になった。だがいうことを言った私は卓上に並べられている肉を食べることにした。二人がコソコソと話しているが食べることに集中だ。二人だけでコソコソするのは昔と同じで、ちょっと嬉しい。
「おい、シーラは子供が卵から生まれると思ってるのか?」
「いや、そんなはずはないと思うが……」
「そういうのはきちんと教員しないと……」
「……」




