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転生者ですが孤児だったので、活字拾いでなんとか生きています!  作者: 小鳥遊 郁


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44 不思議な少女、シーラ② アレックside

 シーラは名前を覚える気がないのか、ただの馬鹿なのかその後も会うたびに「子分しー」と呼ぶが、その度に私も「アレックだ」と訂正していた。しーとは何なのだ? 本当に変わった娘だ。


 だが唐突にアレックと呼ぶようになった。私の方がシーラより年上なのだから「アレックさん」と呼ばせたいが、はじめにアレックだと言い続けていたせいか、変更はできなかった。


 唐突と言ったが原因はわかっている。

 私が彼女に串肉を奢ったからだ。孤児院は二食である。朝と晩だけしか食事は出ない。成長期の子供にとって二食だと非常にお腹が空く。だから少々危ないがアレックたちは森に遊びにいくのだ。

 森には少なからず食べるものがある。味はこの際二の次である。


 その日は残念なことに木の実は魔獣に食べられていて、収穫がなかった。川で釣りをしたが餌がないのだから食いつく魚はいなかった。

 動いたことでさらにお腹が空いていた私とヴァンとシーラは無言で街を歩いていた。その日は街でお手伝いの仕事を見つけたとかで子分の二人はいなかった。要領が良いのかあの二人はどこからかお手伝いを見つけてくる。ただ成人前の子供を働かせるのは犯罪なので、お駄賃はお金ではなく食べ物になる。


「参ったなぁ。シーラはどうしてこの道を選んだんだ? 余計に腹が空いてきた」


 屋台が立ち並んでいる。炭火で焼かれている肉の香りが通りいっぱいに漂っていた。

 お腹がぐーぐーと鳴っている。我慢などできるはずがなかった。


「匂いだけで食べた気になれる」


 匂いだけでお腹が膨れるわけがない。


「串三つ」


 1番美味しそうな店を見つけて串焼きを買う。


「お金はあるのか?」


 胡散臭そうな目で見られたが、ポケットから出した手でお金を渡すと串を三つ渡してくれた。


「いいのか?」


「いいの?」


 二人は私が串を渡すと驚いていた。

 いつもというわけにはいかないが、その後も時々ポケットからお菓子を出したりお金を出して肉を買ったりしていたら、子分ではなく名前で呼んでくれるようになっていたのだ。



「アレックのポケットはドラえ○んのポケットだね~」


 時々シーラが物欲しそうな顔でポケットを見ていたが、どうしてそこから物が出てくるのかは聞いてこなかった。


 そしてシーラが私を名前で呼ぶようになって、やっと信頼されえうようになったのかヴァンがシーラに前世の記憶があり、そのおかげか魔法が使えることを話してくれた。


 正直初めは信じられなかった。だが本当にシーラは漢字魔法が使えた。そして前世のニホンジンとしての記憶も嘘とは思えないほど綻びがなかった。

 それにニホンジンという言葉には覚えがあったのだ。

 母がカーラのことを話してくれたことがあった。


「カーラにはニホンジンだった頃の記憶があるの。そこでは平民も貴族もなかったそうよ。そして一番大事なことは国民全員が漢字を使えたってこと。本が溢れるほどあって、誰もが本を読むことも書くこともできたそうなの。素敵な世界よね」


「じゃあ国民の皆が魔法を使えるの?」


「その世界は残念なことに魔力がなかったそうなの。魔力があれば皆が魔法を使えたでしょうにね」


「ねえ、カーラさんは? 漢字魔法が使えるの?」


「ええ、すごく上手なの。だから第二夫人になってもらったの」


「私に教えてくれるかな」


「そうね。きっと教えてくれるわ」


 だがカーラからの返事は、「漢字をすべて覚えることができなければ教えることはできない」だった。

 全ての漢字を覚えなくても魔法は使える。だから教える気がないのだなと思った。そしてニホンジンだったって話も嘘なのではないかと疑っていた。


 だがシーラの話を聞き、前世の記憶に信憑性が出てきた。

 だからシーラに頼んだ。私も魔法を教える。だからシーラも私に漢字を教えて欲しいと。


「どうして魔法が使えているのか、わからない。でも漢字がわかるから魔法を使えるのなら教えることができるかも。でもタダでは教えられないわよ」


 魔法については自分の方が知っているから、教え合えば良いだろうと思っていたがシーラの方が上手だった。

 だが大丈夫だ。実家から追い出される時、宝石も持ってきている。あれを売ればなんとかなるだろう。

 もし足らなかったら子分になれば……。


「な、何が欲しいのだ?」


 息を詰めてシーラからの返事を待つ。


「串焼き一つはもらわないと。あっ、ヴァンのもよ」


 シーラの返事に安堵の息とともに膝をついた。

 シーラは前世の記憶持ちではあるが、串焼き以外にも美味しいものがこの世界にあることを知らないようだった。


 横でヴァンがもっと違うことを頼めと言っていたが、シーラはキョトンとしていた。




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