42 活字拾いの少女、『祝福の儀』について学ぶ
空間魔法じゃなかったらアレックの授かった能力ってなんなの?
そもそも『祝福の儀』の後は説明とか何もなく帰された。スキルのようなものを授けたのなら説明があっても良いと思う。
「なんとなくわかるんだ。こう頭の中に浮かんでくるっていうか」
『祝福の儀』を受けた後、何か変わっただろうか? 何か浮かんだだろうか?
全く覚えがない。
前世の記憶は儀式の前からあった。だから前世の記憶や漢字の魔法は関係ないと思う。
あれ? 漢字の魔法を使えるようになったのはいつからだっけ?
そんなに幼くなかった気がする。
「シーラにはなかったのか?」
「ない、と思う」
「多分それ本当。俺、儀式の後にシーラにいろいろ聞いたけど、全くなんもないって言い切ってたからな」
期待していた分、ショックだったからよく覚えている。(チートもらえるかなって思っていたからね)
「そうだよな。確かに俺もアレックからそう聞いた」
そういえば昔も同じように聞かれた。あれはアレックに魔法を習っている時だった。アレックと会った時は儀式を受けてから数年経っていたから、聞かれても覚えていないとしかいえなかったんだ。
「それでなんだけど、シーラが『祝福の儀』で得たものは漢字魔法だと思うんだ」
「でも前世のことはそれ以前から知っていたよ。漢字のこともね」
「そうだね。でも小さい頃は魔法を使っていなかった。これはヴァンがおぼえていた。シーラは小さな頃から変わっていたけど、魔法が使えるようになったのは『祝福の儀』の後だったと」
「え? ヴァン、何もないって言ったら、そうかって言ってたよね」
「その時はそう言うものかなって思った。目に見える形で、髪の色とか目の色とかが変わったりしたらわかりやすいんだけど、目に見えないところが変化してもわからないから。きっとシーラも目に見えないところに変化があるのかなって」
「目に見えない変化って、どんなものがあるの?」
「目に見えないものだから、わかってないものが多い。ただ、ものすごく運が良くなったものがいたと言う話が残っている」
「運って、それこそ『祝福の儀』が原因かわからないでしょ」
運ってすごいチート能力だけど、目に見えなさすぎ。
「その少年は、『祝福の儀』が終わった後、財布を拾った。貧乏だったから届けずに頂くつもりだったが、「届けろ」っていう声が頭に響いてうるさくて、届けた。大商人の財布だったから、お礼として一割のお金をもらい、そのお金で、富くじを買った」
「え? 富くじに当たりはないっていう噂の富くじ?」
「噂では当たりはないと言われていたが、特賞を見事に当てた。特賞はマジックバックだった。それを売って、彼は大金持ちになった」
「確かにすごいけど、運だってどうしてわかるんだ?」
「彼が言ったんだよ。『祝福の儀』で運のレベルがMAXになったって」
運がMAXって、いやMAXってレベルがあるのを初めて知ったよ。
「それで運の良い彼は今何をしているの?」
「それが、その後かなり良い暮らしをしていたんだが、一年後くらい経った頃に殺されたんだ」
「は? 全然運が良くなくない?」
「お金がある人間は守りを固めておかないとダメってことだ。『祝福の儀』の力を過信しすぎるからそんなことになったんだ。彼が得たのは運MAXだけ。最強の男になったわけではない」
「じゃあ、私がもらったものは漢字魔法だとして、どうして書いただけの絵のストーブに火を付与することができたの?」
「それはシーラが授かったのはただの漢字魔法じゃないってことだ。だが俺にもよくわからない。未知なものだからな。学院で調べてみたが、シーラのように漢字魔法を自在に使う者はいなかった。まあ『祝福の儀』について事態よくわかっていないんだ。いまだに研究されているが教会の協力がないし、誰もが隠すからね。かくいう俺のこの魔法について知っているのは父と母だけだった。母が亡くなってからは父だけだ」
「でも貴族の人が魔法を使用する時には漢字を使うわけでしょ。だったら私の魔法は特別ってわけじゃない。絵で描いたストーブに付与したのは偶然ってだけ。これでいいじゃない」
特別な子になりたいわけじゃない。普通に暮らしたいだけ。昔は毎日お風呂に入れないのが不満だった。でも今は寮にお風呂もあるし食事だって3食お腹いっぱいに食べれてる。
このまま活字拾いで働いて、ずっとガッテン工房で働くのも良いし、自分のお店を持っても良い。夢は広がるばかり。なぜこんな魔法を使えるのかなんてどうでもいい話だ。
「そうだなって言いたいのだが、シーラの魔法はカーラの魔法に似ている気がするんだ。だから調べておきたい」
「カーラ? カーラってこの前も出てたけど、実在する人なの?」
「カーラは父の第二夫人だった人の名だ。今は正妻になっている」
なんか昔、聞いた気がする。アレックからじゃなくてヴァンが言ってた。
第二夫人に命を狙われているって。あれ本当の話だったのかな。




