41 活字拾いの少女、『祝福の儀』の真実を知る
「ところでアレックのその鞄、変だよね」
角ウサギや薬草を入れても膨らんでいない鞄が気になる。昔持っていた鞄も芋が出てきたり、お金が出てきたり、変だった。あの頃は芋しか頭になかったけど今は違う。
「ふむ、さすがに気付いたか? 食べ終わったし、魔法の話をしようか」
やっぱり魔法が関係していたんだ。もしかしてマジックバッグってやつかな。わくわく。私も欲しい。
異世界転生でマジックバックは定番。やっときたかって感じ。
「その鞄いマジックバッグでしょ。いくらくらいするの? 私も欲しい。買えるかな」
「シーラは勘違いをしている。これはマジックバッグではない。あれは国宝級だよ。王族くらいしかもっていない」
「え?」
私が知っている異世界では誰もが持っていたのに。国宝級なら諦めるしかない。アレックは侯爵家の人間だから持っているのかな。王族じゃあ、なさそうだけど。
「アレックが言ってるのは本当のことだ。マジックバックはダンジョンの宝箱からしか出てこない。しかもその中に入る量もランダムだ」
私が不死語そうな顔をしているのを見て勘違いしたのか、ヴァンもマジックバッグについて説明してくれる。
どうやら憧れのマジックバックは平民である私が持てるものではなさそう。ダンジョンの宝箱から出てくるから冒険者で持っている人もいるらしいが、ほとんどの冒険者はこのマジックバックを売って、冒険者は引退するとか。それだけ高額取引きされる品物ってことだ。
「……私の夢は潰えた……」
「そんない落ち込むな。もしかしたらシーナの魔法で作れるかもしれないだろ」
「え?」
アレックは不敵に微笑んでいた。こういう顔をしたアレックは危険だ。
「とりあえず、魔法の話だ。長くなるが聞けるか?」
「「はい」」
私とヴァンは黙って頷くしかない。
「まずヴァンは知っているがシーラは知らないことがある。七歳の時の『祝福の儀』についてだ」
祝福の儀は、ただ祝福されるだけの儀式だったはずだ。本にもそう書かれたいた。
確かにおかしな儀式だった。耳や目や口を使えないようにして、儀式の最中にピカって光った。
でも、でも、何もなかったはずだ。教会の人もそんな説明しなかった。
私がぽやっとしているからじゃない。絶対に。
「平民が受ける儀式ではなんの説明もないからシーラが知らないのも無理はない」
ヴァンがそう言って私を庇ってくれる。
「そうか、ヴァンもガッテン街の教会で儀式を受けたのか」
「待って、じゃあヴァンも儀式で何か得たの?」
知らなかった。ヴァン、何も言ってなかった。私が儀式を受ける時も儀式が終わった後も何も聞かれなかった。いやもしかしたら何か聞かれたのかもしれないけど、全く覚えていない。
「目だ」
「え? 目って、ヴァンは儀式を受ける前も目を持っていたわ」
ヴァンの見た目は青い髪にグレーの瞳だ。ずっとグレーの瞳だったと思うけど、儀式の後に変わったの?
「色が変わっただろう? 以前は髪と同じ青だった」
「そうだっけ? 覚えてない。それよりただ目の色が変わっただけなの?」
「シーラ、平民の子供が神から得るものはそういうものが多いんだ。だからわざわざ教会も説明しないんだ。聞かれたら答えるようにしているらしい。目の色や髪の色が変化するのが圧倒的に多い。だがヴァンの場合はそれだけじゃない。彼の視力は遠くまで見える。おそらくましろがどこにいるかわかっているはずだ」
ましろ? 遠くまですごい速さで飛んでいったましろが見えているの?
「本当に? ヴァン、見えてるの?」
「ああ、どこにいるかわかる。だがそんなに便利じゃない。人混みだと見えにくいし、シーラの寮までは遠くて見えない」
さすがにヴァンが住んでいる所から、私の住んでいる所までは遠すぎるよ。ヴァンは時々、変なことを言う。
アレックも呆れているよ。
「ただその能力はどう使うかでまるで違う性能になると言われている。だからヴァンの場合も遠くが見えるだけじゃないかもしれない。どう? ヴァン、何か言うことある?」
ヴァンは肩をすくめるだけで答えなかった。何か他の能力にも目覚めたのかな。でも言う気はなさそうだ。
「わかった。じゃあアレックが授かったのは空間魔法なのね。だから物を取り出したりできるのでしょ?」
「はぁ? 空間魔法? 聞いたことのない魔法だ」
しまった。空間魔法を知らない? でも何もないところに芋とか預けていて、欲しい時に取り出せるって空間魔法の応用だよね。




