38 活字拾いの少女、仲間と「翠幻の森」を探索する③
「早い、二人ともどうしてここに? 冒険者ギルド前じゃなかったの?」
馬車を降りると二人の姿が見えたから慌てて、駆け寄る。
冒険者ギルドの前で待ち合わせしていたのに、何故か馬車の停留所に二人は立っている。
時計は持っていないけど、太陽の位置や鐘の音からするとまだ待ち合わせの時間には早いと思っていたのに。
「森に行くから冒険者ギルドで依頼を受けてた方が良いから、早めにギルドに行ったんだ。そうしたらアレックがいて、冒険者ギルドの前は危ないからここで待とうって話になったんさよ」
ヴァンがなんでもないように応えるけど、これはアレックが何か言ったに違いない。心配性なんだから。
「おい、シーラ、それはなんだ?」
アレックが私の肩の方を指して声を上げる。
「ましろだよ。昨日言ったでしょ」
私の肩にはましろが乗っている。
「真っ白だからましろにしたと言ってたが、その鳥はどう見ても真っ白じゃないだろ」
アレックに指摘されて、うっと詰まる。
「そ、そーなのよ!」
私はヴァンとアレックに朝起きてからのことを話した。
「もともと鮮やかな色をしていたって言ってたから、元に戻っただけだろう。気にするな」
ヴァンは気にしなくて良いって感じだけど、アレックは呆れた顔をしている。アレックは昔から細かいことを気にするのよね。
「こんなに違う色になっているのに、すぐ気付かないとは。ぽやっとしすぎだろうシーラ。孤児院にいた時よりひどくなっていないか? 」
「起きたばっかりだから気づくのが遅くなっただけよ。う~ん、ましろって名前にしたのに白くなくなるなんて、困ったよ~」
「そんなに困ることでもないだろ。名前を変えればいい」
そうなんだよね。私もそう思ってましろに提案したんだよ。
「それがましろって名前気に入ってるみたいで、名前変えようよって言ったんだけど首を横に振るんだよ」
「まあ、主人につけられた名前っていうのは重要だからな。そんなに簡単に変えれるものじゃない。シーラだって明日からカーラにするって言われても困るだろう」
カーラ、カーラ、嫌だ。私の名前はシーラだもん。
「それはそうだけど……」
「それとましろが真っ白から元の姿に戻った理由はわかる」
「えっ? わかるの?」
「おそらくシーラの魔力のおかげだろう。ましろは魔力を自力で作れなくなって色が白に変化していたんだ。店でこの鳥がシーラを呼んだのも魔力目当てだ。シーラのそばにいれば魔力が漏れているからいくらでも体内に溜め込むことができる。そして一緒に暮らしているおかげで体の色が戻ったってことだろう」
そんなことがあるのかなって半信半疑で聞いていたら、ましろが頷いている。
「で、でも他人の魔力を溜め込むなんてできるの?」
「……相性が良いんだろう」
適当すぎだよアレック。
そんなことを話していると『翠幻の森』に到着していた。
ましろを肩に乗せて『翠幻の森』へと歩く。
歩いている間にアレックはましろと契約していた。血じゃなくて魔力で契約する方法があるらしい。
「これで連絡がつくようになった。何かあったら知らせてくれ」
「何も起こらないだろう」
「そうだといいが。シーラはびっくり箱のようなものだ。前世が異世界で、漢字を理解できて、どんな魔法でも使えて、新しい魔法まで作る人間なんて聞いたことがない」
「だが皆シーラみたいに隠すだろうから、もしかしたら他にもいるかも知れない」
「それはあるかも知れないな。偉大だと思っている過去の偉人も前世がニホンジンだったかも知れない」
アレックとヴァンは私の話を私抜きで話している。アレックはいつもとは違ってヴァンと同じような冒険者風の服を着ている。全然違和感がないから、時々こうして会っているんじゃないかな。
「ねえ、ヴァンとアレックっていつも会ってたの?」
「ヴァン、話していないのか?」
「その方が良いと思ったんだよ。お前の方、まだ不穏だろ」
「そうだな。巻き込みたくはない」
「お家騒動ってやつ?」
私だって馬鹿じゃない。ローズマリアさんの話からもわかるけど、この二人は前妻の子供だ。第二婦人だった人が義母になったって話だし、色々とあるんだろうなとは思っていた。
「まあそんなものだ。一応嫡子は俺に決まったし、昔のように毒を使ったりとかはないんだが、まだわからない」
「毒?」
「俺たちの母親は毒殺されたんだ。犯人は分からなかったし、父は病気で死んだと報告している。だが俺は知っている。母が毒で死んだことを」
アレックが断言しているということは間違いなく毒殺だったのだろう。
「彼女を第二婦人にって勧めたのは母なんだ。彼女は男爵家の娘だったから身分的に父と会うことすらなかったのに、彼女の魔法を見て母はこの家のために必要だって第二婦人にしたのに、彼女は裏切った。許せない」
二人は大変仲が良かったそうだ。腹違いの弟が生まれた時も皆が喜んだ。
でもいつしか自分の子に跡を継がせたくなったのだろう。
ようある話だ。前世の韓流ではこういう話が人気だった。




