36 活字拾いの少女、アレックと話し合う
アレックと話しをするのは楽しいが、活字拾いの仕事をしないといけない。
お給金をいただいているからね。
「仕事があるから、話はまたね。今度はヴァンも一緒でいいよね」
「いや、掃除だけでも数時間はかかるわけだからまだ話しをしていても大丈夫なはずだ。何か言われたら掃除をしていたと言えば良い」
「怒られないかなぁ」
「大丈夫だ。ローズマリアが言うには君の活字拾いが早すぎて組版が追いつかないそうだ」
「本当に? いつもいつも大変なんだけど、ローズマリア様からの視線は「早く早く」って言ってるよ」
「あ~、ローズマリアはあの作品が好きだからな。世界中の皆に読んでもらいたいと言ってるから早く作りたいのだろう。いつも家に帰るとシーラの活字拾いの速さについていけないと嘆いている。今日もお茶会に行くよりここに来たがっていた」
ローズマリアさんの熱意は知っていたけど、それほどとは思わなかった。やはり活字拾いをしなければ。ローズマリアさんの熱意に応えるにはこれしかない。
「シーラ、拳を握っているが、何をする気だ? シーラが張り切りすぎると不安なんだが?」
「何って、活字拾い以外ないでしょ。ローズマリア様のためにも、活字拾いを急がなきゃ」
「だからシーラ一人が急いだところで、変わらないって。それより妹が言ってたんだが、伝書鳥を買ったんだって?」
アレックが話しかけてくるけど、活字拾いの手は止めない。このくらいの妨害はどうってことない。イライラおじさんの妨害に比べたら大したことない。
「うん、真っ白な鳥だから、『ましろ』って名付けたの」
そうだよ。ましろのためにも頑張らないと。鳥籠の中におもちゃを買ってあげたい。いつもカゴの中にいるわけではな。お留守番の時だけだ。魔鳥は適度に運動させなければ魔力が溜まりすぎて害になるそうだ。だから家にいる時は放し飼いにしている。それだけでは不安なので休みの日はたくさん飛ばす予定だ。
「ヴァンとの連絡用か?」
私は活字拾いの手を休めずに頷く。
「魔鳥なんだろう? だったら俺も使えるようにしてくれ」
「俺? 私じゃないの?」
「三人で話す時くらい、俺で良いだろ」
「まあいいけど。じゃあ、明後日の私の休みに森に行くんだけど、アレックも来る?」
「わかった、何時に行けば良い?」
簡単に承諾されたけど、アレックは暇なのだろうか。貴族って仕事しないの? 気になったけど、活字拾いの手は止めない。
「八時に冒険者ギルドの前で待ち合わせてる」
「大丈夫なのか? 冒険者ギルドの前って、危なくないのか? ぽやっとしているシーラが……」
どうして皆が皆、同じようなことを言うのだろう。ちょっとこれは看過できないね。
活字拾いを中断してアレックと目を合わす。
「私、ぽやっとしてませんから!」
キッとした顔を作ってキッパリと言い切った。
「いや、ぽやっとしてるだろう」




