33 活字拾いの少女、ヴァンとの連絡手段を得る②
※一部に残酷な描写を含みます
店の名前は『ヴェルーナ』。
「本当にここなの?」
カシムが言ってた店の名前は『ヴェルーナ』だから間違いないとは思う。でも外観は普通の家のようだ。
「ああ、間違いない。中に入ると目的によって部屋に案内されるそうだ」
「目的? 」
「そうだ。とりあえず入ってみよう。説明するよりその方が早い」
ヴァンがドアを開けて入っていくので、私もその後に続く。
中に入ると、
「いらっしゃいませ~。どのようなものをお探しですか?」
とヴァンより少し年上っぽい男性が声をかけてきた。店員さんだろう。
店の中には動物は全くいなかった。カウンターと応接セットが置かれているだけだ。
それでも私には目新しいので呆けていた。
ヴァンがそんな私を見て、息を吐くと店員に応えた。
「メッセージのやり取りができる鳥を買いに来た」
「どのくらいの距離ですか?」
「王都の西門から南門までの距離でいい」
「それなら普通の鳥でよさそうですね」
「普通の鳥? 」
「訓練された鳥なのでそのくらいの距離なら運べますよ。普通の鳥の良いところは価格が抑えられることとエサ代が安子ことです」
「なるほど、どうするシーラ?」
「見てから決める」
価格が安い方がありがたい。でも……。一緒に暮らすんだからビビってくるのを選ばないと後々後悔することになる。
「それでは両方置いてある部屋に案内しましょう」
「チュッチュ、チッ、チ、チ」
私たちが部屋に入ると鳴き声の合唱で迎えられた。部屋の外では鳴き声は全くしなかったから防音設備のある部屋なのだろう。
一匹、一匹、別の鳥籠に入れられている。
清潔な部屋だ。
「全然匂わないんですね」
「脱臭の魔法ですよ。この部屋に魔法を定着させているんです」
なんと魔法を定着する技術があるらしい。私が作った冷蔵庫もどきとはちょっと違う。多分こちらの方がいろんなものに応用できそうだ。
「へ~そんな魔法があるんですね。ヴァンは驚いてないけど知ってたの?」
「部屋に脱臭を定着させる魔法は知らないけど、剣とか防具に付与させる魔法があるのは聞いたことがある。まあ、俺には縁がないが」
別に隠していた訳じゃなさそう。多分定着させている魔法は漢字を使うのだろう。ただ漢字を書くだけではない気がする。これは検証しなければならない。つくづく魔法は面白い。そして便利だ。
「それで気に入った鳥はありますか?」
魔法にばかり考えていて、肝心の鳥を見ていなかった。
一羽、一羽、確認しながら歩く。
どの鳥も華やかだ。色が鮮やかで目が痛くなってくる。それにちょっと騒がしい気がする。これでは寮で文句を言ってくる人が出てきそう。
「ちょっと騒がしくないですか? 寮だから苦情が出そうなんだけど?」
「舌を切りますか?」
店員さんがなんでもないように応えてくれたけど舌を切るってなに? 舌切り雀じゃないんだからやめてほしい。
「それ冗談ですか?」
「え? 普通の処置ですよ。鳴けなくなるだけで生活するのに問題はないですよ」
異世界こわっ。そういえば前世で読んだ物語に奴隷がその家の秘密を話すことができないように話せないように処置される描写があった。奴隷は字を習ったこともないものが選ばれていた。
残酷すぎる話なのだけど、物語だからこれでは終わらない。実は奴隷の一人が字が書けたのだ。それで悪事がバレるって話だった。
残酷な話だなって思っていたけど、この世界では日常的にあることのようだ。
「じゃあ、シーラは魔鳥から選ぶべきだな。訓練された魔鳥ならそんなに鳴かないぞ」
ということで店員さんに魔鳥の部屋に案内してもらうことになった。




