31 活字拾いの少女、ヴァンに報告する
ヴァンにアレックのことを言わなきゃ、と思い冒険者ギルドへ急ぐ。
冒険者ギルドのある場所は、馬車を利用しないといけない。まあ歩いていけない距離ではないけど、時間がかかるので、乗り合い馬車を利用した。
冒険者ギルドに来たけどヴァンはいなかった。 そういえばヴァンが、ギルドへは依頼を受ける時と依頼が終わった報告の時にしか来ないって言ってた。
どうしようかな。ギルドの中をうろうろと歩く。
よく考えたらヴァンのアパートを聞いてなかった。あれ宿屋に泊まってるんだっけ?
ヴァンがどこに住んでいるのか聞いていなかったことに気付く。いつも会いたい時はヴァンの方から寮に来てくれていたからだ。
「あれ? シーラじゃないか? 」
ヴァンの声が聞こえて振り向くと、ヴァンは階段を降りてくるところだった。
「ヴァン、良かったよ~」
ヴァンの姿を見てホッとした。
「何かあったのか? 今日は休みじゃないだろ」
ヴァンは私の休みを把握している。でも私はヴァンの何を知っているのだろう。
「おい、シーラ。なにぼうっとしてるんだ?」
「ぼうっとしてるんじゃない。ちょっと考えてたの」
「はぁ? 俺が話しかけてるのに考え事?」
ヴァンが不満そうな声を出す。
「あっ、そうだ。アレックに会ったの。ヴァンに言っとかないとって思って」
「アレック? シーラが王都で働いてるってなんで知ってるんだ?」
「いや知らなかったと思うよ。偶然だから。一緒に働いている侯爵令嬢のローズマリア様がアレックの妹だったの」
「そんな偶然ってあるのか?」
「あるんだね~」
「あるんだね~って」
「でもね、アレックってば、初めましてって……」
「それは仕方ないだろ。あっちは妹を迎えに来てたんだろ」
「そうなんんだけどさ……」
そっかぁ。わかった。私がどうしてもヴァンに会いたかった理由。
初めましてって言われて、怖かったんだ。なんだかあの頃のこと全てが夢だったような気がして。
だからヴァンに会わなきゃって。
「ヴァンは言わないよね。初めましてなんて」
「あぁ? 言う訳ないだろ、そんなこと。それよりせっかくここまで来たんだし、なんか食っていくか?」
私が心細く思っていることを察したのか、ヴァンが食事に誘ってくる。
「なんか。食べ物さえ与えとけば良いって思ってない?」
「違うのか?」
「酷い!」
「悪かったって。一番うまい肉奢ってやるから」
「もう。肉で誤魔化されないからね」
「わかった。わかった。なんでも好きなもの食べていいから」
「なんでも?」
「ああ、今日は結構儲かったからな。なんでも食べていいぞ」
「ヴァンさん、俺たちも奢ってもらえるんですよね」
ヴァンの後ろにいた男たちが、ヴァンに何か言ってる。実は後ろに誰かいるなとは思っていた。
この二人。どこかで見たことあるような。
「今日はダメだ。またな」
「「え~、奢ってくれるって言ってたのに。シーラが現れるとこれだから~」」
ああ、ヴァンの子分だ。そうかぁ、二人も冒険者になってたんだ。名前なんだったっけ?
「え~と、子分二人も一緒でいいよ」
「シーラ、子分っていうのやめてくれって前から言ってるだろ」
「いや、多分、俺たちの名前覚えてないんだろ」
「いや、そんなことないだろ。ずっと同じ孤児院にいたのにさ」
「でもシーラから名前で呼ばれたことあるか?」
「そういえば、ないな。いつも子分えーとか子分びーとかで呼ばれてた」
ああ、そうだった。いつもどう読んでたから名前が出てこないんだ。
「おい、カシム、バルト。シーラをからかうな。一緒に育ったんだ。名前くらい知ってるさ」
「そ、そうだよ。カシムとバルトでしょ。覚えてたわよ」
「「いやいや、絶対に覚えてないでしょ」」
二人はその後もヴァンさんはシーラに甘すぎるって文句言ってたけど、結局は帰って行った。
夕食を奢ってもらいながら二人のことを聞くと、三人で家を借りて住んでいるらしい。
今度お邪魔させてもらわないとね。




