27 活字拾いの少女、『白銀の竜と契約の魔法使い』
昼の食事は社員食堂でいただいた。
貴族のご令嬢だけど、ローズマリアさんは社員食堂のご飯を美味しそうに食べていた。ここで働いていたときからこの社員食堂で食べていたようだ。
そして昼からの仕事も手伝ってくれている。
私が活字拾いで、ローズマリアさんが組版をやってくれている。一緒に活字拾いをしようと言ってくれたけど、活字棚を見たあと固まってしまった。
「これは何かしら? 置き方が変わっておりますわね」
ビクッとしたよ。置き方変えたのを忘れてた。
「活字を拾いやすいように変えたのです。えっと、駄目でしたか?」
セシルさんに許可は得ているけど、ローズマリアさんは反対するかもしれない。
「いえ、前の置き方は活字が作られた順に並べていたのでシーナさんが拾いやすいようにされるのが一番です。それでは私は組版をしますわ」
ローズマリアさんは活字棚の活字の置き方を勝手に変えた事を受け入れてくれた。
それに組版は苦手だったので、助かった。
活字拾いなら任せてください。
しばらく二人で仕事をしていると、セシルさんが現れた。当分来れないようなことを言ってたけど、結構やってきます。
「まあローズマリア様、いらしてくれたのですね」
セシルさんはローズマリアさんを見て喜んだ。
「長いこと来れなくてごめんなさい。セシル様からの手紙を読みましたの。とうとう『白銀の竜と契約の魔法使い』の本を作っているって手紙を。居ても立ってもいられず、参ってしまいましたわ」
「お義母様は大丈夫なのですか?」
「ええ、王妃様に私のことで嫌味を言われたとかで、急にお茶会だの舞踏会だのに連れ回されたけれど時間が経って落ち着かれたみたいですわ。とはいえ侍女が私の行動を見張ってますから兄に頼んで連れてきたもらいました。あの方、兄のことは苦手ですから何も言えませんわ」
お昼を食べてる時に伺ったのですが、ローズマリアさんの母親は彼女が十歳くらいの時に亡くなられたそうだ。そして側室だった方が正妻になり、義母になったとか(貴族の家ではよくある事らしい)。彼女の兄はすぐに外国に留学したから、その後二年くらい会っていなかったそうだ。ローズマリアさんにとっては色々なことが急に起きて不安になった。でもローズマリアさんの義母も父も彼女には構ってこなかったので、本を読んだりして過ごすしかなかった。その頃夢中になった本が『白銀の竜と契約の魔法使い』という本。その本は彼女の兄の部屋に置かれていた本だった。
ローズマリアさんは、この本を活版印刷して世界中に広げたいらしい。
「ローズマリアさんはお兄様が大好きなのですね」
私がローズマリアさんにそう聞くと、
「違いますわ。私が好きなのはこの本です」
と言われた。けれどローズマリアさんのお顔が赤くなっていたので、間違いなく彼女は兄のことが好きなのだ。
『白銀の竜と契約の魔法使い』は兄妹で助け合う物語なのだから。




