24 活字拾いの少女、ヴァンと森へ行く②
木々の隙間から降りそそく木漏れ日。風に吹かれて重なり合う葉の音。
この心地よさは森の中でないと味わえない。
「そうだった。思い出した。妹のためにって言ってた。妹のためにこの魔法を覚えないとって」
新鮮な空気を吸ったおかげか、忘れていた記憶が蘇ってくる。
「えっ? あいつ妹がいたのか?」
「うん、多分。妹がいるの?って聞いたら、しまったって顔してたからそれ以上聞かなかったけど、あれは多分いる」
私は空気が読める女の子だからね。
「そうか、なんか事情がありそうだったもんなあいつ」
「そうそう、孤児院にいるのにお金に不自由してなかったし……」
森からの帰りにいつも串焼きを奢ってくれた。ポケットからいつもお金が出てくる。ドラえもんかって、いつも思ってた。
「串焼き美味しかったな」
「美味しかった」
「帰りに食べるか」
「うん。食べよう」
昔のことを話しながらも足を動かしていた私たちは目的の場所に到着していた。
串焼きの話をしたせいか、お腹が空いたけど、ここには食べ物はない。
「周りに人の気配はない。この辺りまで来れば、大丈夫だろう」
「魔物が出てきたら倒せば良いの?」
なんかちょうど良い感じに、木が生えてない場所だった。
「火の魔法は使うなよ。風とか水とか氷がいいな」
「はーい」
魔物に向かって魔法を使うのは久しぶりだ。ヴァンが孤児院を出て冒険者になる前だから四、五年前になる。
孤児院を出たら、当座のお金がいる。特に冒険者になるヴァンは王都までの旅費もいるから、魔物を倒してお金を貯めていた。まだ冒険者になっていないから冒険者ギルドでは魔物の肉や魔石は買い取ってもらえない(討伐費用ももらえない)から、肉屋や魔石屋に買い取ってもらっていた。足元を見られて買い叩かれていたけど、それでも雑用を引き受けて貰う小遣い程度のお金よりはずっと良い収入になっていた。
魔物ホイホイじゃないけど、なぜか私とヴァンがいると魔物が寄ってくる。
だから【結界】魔法は絶対に必要。
この【結界】魔法、かけたままでもこちらから攻撃できるのが良い。
ゲームでも守りが下手だったんだよね。こういうことはなんとなく覚えている。盾持ってるのに、使わないまま終わってた。攻撃と守護を一緒にって器用なまねはできない。だから考えて考えて作った【結界】魔法。
ウインドカッターを使う時は【風刃】
アイスボールを撃つ時は【氷球】
ウォーターボールを撃つときは【水球】
餓狼が群れで現れた。【風刃】を広範囲で使う。
「おい、やりすぎだって」
ミキサー並みにぐちゃぐちゃの情景。
これは酷い。
「魔石だけ頂いて、あとは土魔法で埋める。できるか?」
「はーい」
失敗、失敗。
魔石以外を土魔法で掘った穴に埋める。こういう細かい魔法の方が得意だ。これは多分生活魔法になるのかな。
その後も嵐になったり、水魔法で溺れそうになったりと、魔法を制御できるようになるまでに何体も魔獣が犠牲になった。いや魔獣だから犠牲というのは変か。
「じゃあ、帰るか」
「そうだね、帰ろう」
「それにしてもシーナの魔力ってどんだけあるんだ?」
「さあ、今のところ無くなりそうでもないかな。【結界】魔法はあんまり魔力使わないからね」
【結界】魔法は魔力をあまり使わないことは、昔から知っていた。それもあってアレックはこの魔法を欲しがっていたのだから。
「串焼き~串焼き〜」
歌を歌いながら、森を歩く。どこの店の串焼きがいいのかな。王都で岸焼きを食べるのは初めてだ。
まあ探すのも楽しみの一つだよね。




