21 活字拾いの少女、ひとりで活字拾いをする
今日から活字を拾う。
やっと活字の並べ替えが終わったのだ。
今日はセシルさんは来られない。子爵令嬢としての仕事があるそうだ。
仕事の仕方については、セシルさんから教わっている。
一ページに必要な活字をまず拾う。前のところでは活字長が用意してくれていた拾う活字の紙はセシルさんが用意してくれていた。一冊分だとすぐ終わるといけないから十冊分用意してるわって言われて固まっちゃったよ。
紙を見て思ったんだけど、これって手書きして製本されている本をバラしたものだと思う。
私の好きそうな本からでいいよと言われているので、本を選ぶ。
十冊中、七冊は神様を扱った本だった。セシルさん曰く。神様を扱った本は、売れると!
売れる本から売らないとねってことらしい。
そして残りの三冊。一冊は冒険譚。あとの二冊は恋愛もの。
これはセシルさんを今まで手伝ってくれていた有志の皆様のリクエストだそうだ。
この世界にもこういう本があったんだね。でも手書きだからあまり出回ってないらしい。
『手始めにこの三冊の本を世界中のみんなに読んでもらいたい』
それが漢字を使った活版印刷で本を作ろうとした理由。それには莫大な資金が必要になるから。初めは神様の本を売る。そして漢字の活字が集まったら(漢字の活字はひらがなと違って複雑だからお金がかかる)皆がワクワクする本を作る。すごい夢だね。
各本の上にあらすじのようなものが書かれている。どの本も面白そう。この神様の本も書き方を変えたら面白くなりそうだけどね。なんかとても難しく書かれているんだよ。古語みたいな感じ。このままじゃあ、読みにくいよね。
よし冒険譚の本の活字を拾おう。
剣と魔法、それに竜。貴族の三男の成長物語。って一番上にあらすじが書かれている。私もどうせ読むならこんな本を読みたい。活字拾いもさくさく進む気がする。
ということで、私は活字を拾い始めた。三ページ目を拾い始めた時に気づいたんだけど、カタカナの活字が足りなくなりそうだ。あと句読点も。漢字が足りなくなったら、そこはひらがなでカバーすることになっているけど、カタカナやひらがなはそういうわけにはいかない。
「よし『手引き書』を読もう」
『手引き書』はセシルさんから渡されたマニュアルのようなもので、わからないことがあったらこれを見てと言われている。
ひらがなやカタカナの活字がなくなった時は、ひらがなの活字拾いの活字長に頼めば運んでくれる。なるほど。確かにあそこには沢山の活字があったっけ。でもわざわざ頼みに行くのもな。他の方法は、え?
活字は印刷が終わったら返ってくる。その返ってきた活字は、右端の箱にあるので、それをまた活字の棚に並べるって、ここには他に人がいないから、それも私の仕事になるのか。
「どれどれ、箱って……、これ全部?」
箱は十箱以上ありそうだった。ひらがなの箱が多い。
戻す人がいないから、ひらがなの活字が少なかったってことか。
箱の中を覗くと活字がバラバラに、でも活字が壊れないように丁寧に置かれていた。
これ全部戻すのは一日がかりになりそうだ。ため息しかでない。
「金貨三枚の仕事はやっぱり楽じゃないってことね」




