20 活字拾いの少女、活字を並べ替える ②
「え? それならそのあと二人ってガッテン孤児院から選ばれたんですか?」
活字の並べ替えは、順調に進んでいた。とりあえず『ひらがな』はこんなもんかな。句読点が『ひらがな』と『漢字』の間に置いた。
「ええ、あの孤児院は、貴族の隠し子とかちょっと訳ありな子が引き取られているの。中には漢字を学んだ子もいるって聞いてたから、大きくなっても家族に引き取られなかった子を紹介してもらったの」
「漢字を知っている子がいたなんて気づきませんでした。
来年入ってくる予定の子ってことは、私も知っている子のはずだ。私より一つ下の子ども。誰だろう。全く思いつかない。
「皆出自は隠しているはずよ。そう言う契約なの。話をしたら死が待っていると思っている子もいると思うわ」
あの孤児院の闇の部分かしら。アレックが昔なんか言っていたような気もする。
なんだったっけ? 覚えていない。
「でも私は貴族出身じゃないです。他にもいますよね? 貴族とか関係ない子」
「そうね。親が冒険者で亡くなったから孤児院に入ったって子もいるわよ。元々は親が亡くなって教会とかの孤児院に引き取られてた子どもたちが多くて、教会からなんとかならないかって話が来た時にガッテン孤児院を作ったのよね。それが何故か貴族の隠し子とかを預かるようになって、噂で聞くのかそういう子供が増えてったって父様が言ってたわ」
「断れなかったんですか?」
「断れないわよ。あの頃はガッテン工房もまだ小さくて、貧乏貴族だったの。上からの命令には逆らえなかったみたい。それに本当の孤児と違ってお金も入ってきてたらしいわ。いわゆる口止め料? そのお金で工房を広くすることができたの」
え~、それならスープの具、もう少しなんとかならなかったの?って聞きたい。
いや、そのおかげで活字拾いの仕事があるのかもしれないから、スープが薄くてもいいのか。あれでも他の孤児院よりマシだって話だし。
「孤児院に預ける親はマシな方なのよ。不幸な事故で始末することもあるみたい」
怖っ! 貴族怖っ!
「まあ、そういうわけで、貴族の子は隠すのよ。寄贈だったことを。生き残るために」
そういえばアレックは最後までどこの貴族家か教えてくれなかった。
あれは私とヴァンのためだっったのかもしれないな。あの時見捨てられたような気がして、彼と最後の挨拶もしなかった。子供だったなって悔やむ。まあ子供だったんだけどね。前世を合わせたら、三十とか四十歳なのに情けないなぁ。
「ところで漢字はどう置くの?」
漢字も『あいうえお』順でおこうとは思う。でも漢字って良い方が色々あるから悩んでいるのだ。
「それなんですよ。たとえばこの『火』っていう漢字。これは『あいうえお」順だと『ひ』だからここら辺になるんだけど、火災だと『か』になるでしょ? それだと『か』になる。どちらにおくべき?」
「なるほど読み方で置く場所を決めるってことね。私は『か』の方がよく使うと思うわ」
貴族であるセシルさんの意見は大切だ。多分こっちの読み方の方がよく使用するってことだろう。
要するに音読みと訓読みだ。
とりあえず、音読みで並べてみることにした。




