15 活字拾いの少女、幼なじみの友人と王都の街を歩く
幼なじみの友人であるヴァンが寮の前で待っていた。
「ヴァン! どこに行ってたの? もっと早く会えると思ってたよ」
「どこにじゃない。バッテン街行きの護衛を引き受けてたんだよ」
「え~そうだったの?」
完全なるすれ違い。まさかヴァンがガッテン街に行ってたなんて。もしかしたら王都までの道のどこかですれ違っていたのかも。
「あっちに行ったら、クビになったってアパートの管理人が言うし、しかもアパートも出て行ったって言うし、びっくりしたんだぞ。ギルドの伝言を見なかったら失踪届を出してたよ」
アパートの管理人さん、三日以内に出て行けって言ったことは言わなかったらしい。ヴァンは冒険者になるだけあって体格が良いから本当のことが言えなかったのだろう。
「ごめん、ごめん。急に決まったから、知らせることができなかったの。それにちょっと前にガッテンに来たばかりだったから、当分来ないと思っていたし。だから王都に行ってから話せば良いと思って」
「今回は、たまたま前回と同じ商人がぜひ護衛してくれって指名依頼があったんだよ。そろそろシーラの誕生日だからお祝いしようと思って引き受けたんだ」
「誕生日?」
一応孤児である私にも誕生日がある。といっても私の誕生日は、孤児院に捨てられていた日なんだけどね。
幼い頃は捨てられていた日だから祝う気も起きなかったんだけど、ヴァンとアレックが誕生日なんだから祝うべきだって、祝ってくれるようになって、アレックがいなくなってからもヴァンがいつも祝ってくれてた。そういえばアレックは毎年、誕生日の近くにはガッテンに来てたっけ。
たまたまだと思ってたけど、違ってたらしい。
「また忘れてたのか」
呆れた顔をするヴァン。
「だって、祝ってくれるのヴァンだけだし」
この世界というか、私が住んでいるルーンベルク大陸の暦は一年が十二か月で、七日周期なのは日本と一緒。ひと月は30日。ルーンベルク大陸には八つの国がある。私が住んでいるのはその中の一つバルディアナ王国。
「俺の誕生日を祝ってくれるのもシーラだけだよ」
ヴァンが言うけど、それが本当かはわからない。冒険者のヴァンを知らないから。冒険者仲間に祝ってもらってないのかな。
「じゃあ、今から王都の街を案内してよ。まだ冒険者ギルドと服屋しか行ったことないの。今日は寮の賄いもお休みだからお腹ぺこぺこだから、美味しいお店を教えて」
寮に入ってから、ずっと働いてたから全然知らないんだよね。今日は光の日で工房自体がお休みになるから食事が出ない。朝ごはんも出ないんだよね。食べるものが何もないから、今から買いに行こうと思ってたんだよ。
「もう昼近いけど朝も食べてないのか?」
「溜めてた服を洗濯してたら遅くなっちゃった」
「洗濯か。そういえば服買ったのか? なんか雰囲気変わったな」
「へへへ~。支度金を貰ったから、それで買ったの。なんか孤児院で貰ってた服じゃあ、かえって目立つみたいだったから」
「あれはなぁ。ガッテン街だとあんまり目立たないけど、王都だと目立つよな。そうだ。誕生日プレゼントは服にしよう。あっ。、その靴も買うか。これは就職祝いだ」
いつも服を買ってくれるって言うのは断っていたけど、誕生日だし買ってもらうことにした。
「ヴァン、ありがとう。嬉しいよ」
私がありがたく買ってもらうことにして返事をしたら、ヴァンが嬉しそうに微笑んだ。
「だがランチが先だな。乗り合い馬車で商業区に行くか。あっちの方が知ってる店が多いんだ」
「ランチ~、ランチ~~!」
歌を歌いながらヴァンの隣を歩く。王都に来てよかったなぁ。




