結局お金
「それで、僕はどうしたらいいかな」
「確か、目で人相とかがわかる、と聞いたことがあるな」
あれから数日後、今度は海隅も入れて、話し合いをすることにした。
集合場所は俺の部屋。
今は、俺と永久輝、海隅の三人で集まり、事前相談中。
「じゃあ、サングラスでもする?」
「悪化するだろ」
「それじゃあ、眼帯とかは?」
「それも悪化するだろ」
「それじゃあ、アイマスクは?」
「悪化はしないが、おかしな奴だと判断されるぞ」
「そっかぁ……」
そう言いながら、海隅は少し考え……
「後ろを向いて、顔を見せなければいいわけか」
「いや、それもダメだから。というか、もしかしたら、今後とも関わるかもしれない奴だぞ。常にそんな変な格好でいるつもりか?」
「……確かにそうだね。どうしようか」
「変なことせずに、彼女の判断に任せるべきでは? それに、私までぼっち顔認定されたんですから、大半の人間をそう判断していると思います」
「『私まで』ということは、俺がぼっち顔認定されたのは当然のことだとでも言うのかよ」
「はい」
「……迷いの無い二つ返事は傷つく……」
「……というか、ぼっち顔って……何?」
「知らねぇよ」
***
結局、何もしないのが正解、という結論に至り、俺たちは雑談しながら、白雪を待つ。
――何やってんだか。
俺は立ち上がり、部屋を出る。
その際、二人は何も言わなかったし、気づいてるんだろうな。
「何やってんだ?」
部屋を出ると、辺りをチラチラと見ながら、部屋に入ろうと努力していた、白雪がいた。
「べ、別に……」
「強がんなよ」
にしても、コイツが本当に人見知りだったとは。
俺と永久輝への接し方は、そのように感じさせなかったが、今の状態はとても感じる。
「入らないのか? ちなみに、お前の気配には二人も気づいてたぞ」
「……わかったわよ」
そう言いながら、白雪はドアノブに手をかけようとするが……
「今のお前はかなり不審者だぞ」
その手は止まる。
彼女のトラウマはかなり根強いようだ。
――彼女の手は小刻みに震えていた。
「バックレてもいいぜ。多分、あいつらは何も言わない」
ここで、俺が無理やり入れるのも選択肢には入ってくる。だが、それで本当にいいのか、という話になってくる。
だから、ここではやるべきことは、ちょっとした会話のみ。
本音を言うと、白雪にはパーティーに入ってほしいと考えている。
理由は実力。ただそれだけ。
まあ、もしこの状況が続くようだったら、潔く諦めるつもりだ。
「それで? どうする?」
そう聞くと、白雪は俯く。
――そのまま、動かなくなる。
……おかしいんだよな。
俺が永久輝の部屋へ行くことを提案した時、このような状態にはならなかった。
つまり、考えられるのは――どこかで俺たちを見たことがある。
てことは、まじまじと見ずとも、海隅がどんな顔しているかわかっているから、こんな状態というわけか。
「……ねぇ」
不意に声をかけられる。
「どうした?」
すると、また俯き、何かを考える。
「……なんでもない」
そう言いながら、白雪は慌ただしく、この場を後にする。
……めんどくさいな。
――俺は大きなため息を吐く。
「……そんな顔されたら、ほっとけないじゃねぇか」
***
「こんなところで泣いてんじゃねぇよ」
――路地裏。
ここで、白雪は縮こまりながら、すすり泣いていた。
ここは確かに人通りも少ないし、遮蔽物も多いが、誰かに見られる可能性もある。だから、こんなところで泣くべきじゃないが、限界だったんだろうな。
「こんなところで泣いてると、見知らぬ誰かに見られるぜ。だから、泣くのは知り合いの前にしとこうぜ」
「……なんでよ。……見られるのは……いや。……あんたも……早くどこか行って」
「俺はさ、泣くことって、他者にSOSを伝えるための動作だと考えているんだよね。だって、そんな動作をとられると、心配するし、助けたいとも思う」
誰にも見られない涙は、確かに楽かもしれない。だが、それだと泣いて終わり。
もし、立ち直れたとしても、それは形だけのもの。
――それじゃ、ダメだろ。
「お前の愚痴とか泣き言を聞いてやってもいいが、俺たちは会って数日の関係。だから、そんなこと聞かされても、こっちが困る。それに、その後なんて声かければいいかもわからん」
……もっと俺が、善く生きていたら違ったかもしれない。
ま、そんなこと考えてもしょうがないか。過去にタイムスリップなんて、できないんだし。
「……じゃあ、何しに来たのよ」
「う〜ん……話し相手?」
「……何それ」
「だってお前、俺と話してた時が一番生き生きしてたじゃん。だから、話し相手が欲しいのかと思って」
「ふざけんな」
「おいおい、俺も傷つくんだぜ。ま、いいや。そんなこと言われたら、帰るしかないな。……これ、置いていくから、好きに使え」
「え?」
俺は小袋をその場に置き、ここを離れる。
こんなこと考えたくないけど……
――人間はお金を数えている時が、一番幸福なんだよな。
結構な量をあげちゃったし、明日から超貧乏生活になりそうだ。
――ま、別にいいか。
……関係の薄い俺には、これくらいしかできないし。




