譲れないもの
て、手足が震える。冷や汗が止まらない。
……こ、怖い。本当に……マジで。
いつ爆発するかわからない爆弾が、目の前に立っているのだ。
もう、プライドは捨てて、土下座する。
これくらいしか、できることはない。
「……ねぇ」
「……なんでしょうか」
「もし、申し訳ないと思っているなら、私とパーティー組んでよ」
その言葉には怒りが含まれていた。だが、弱々しい。
それに――震えていた。
……地雷、というよりトラウマか。
どうするのが正解かはわからない。けど、返答は……
「悪いが、それは無理だ」
俺がそのように言うと、白雪は拳を握る力を強め……
「理由、聞いてもいい」
「俺は昔、世界がつまらない、そう感じてしまったんだ。感情を表に出さず、周りに流されながら、ただ生きていた。もちろん、ただ、生きることが悪いとは思わない。なんてったって、生きてるだけで丸儲けだからな。――けど、とあるきっかけで、俺は変わった」
そのきっかけとは『死』。
……残念だが、この場で俺が一度死んだことを、公開するつもりはない。
……信じてもらえないだろうしな。
「そのきっかけのおかげで、俺は常に本心に従るようになったってわけ。だから、この場でも本心に従う」
俺はそのまま、こう言い切る。
「俺の本心は今の仲間を絶対に捨てるなって言っている!!」
――これが、俺の選択。
……かっこよ!! 俺!!
まぁ、いつもかっこいいんだけどね。
けど、今回は特にかっこいい!!
――だが……
「……それ、土下座しながら言うことじゃないですよ」
そういえば、そうだった。
……忘れてた。
俺はそっと立ち上がり、終始立っていた雰囲気を出す。
まぁ、気休め程度ではあるが。
「……もし、いなくなったら、どうするの」
いなくなる……。
二人がいなくなったら、俺はどうなるんだろうか。
だが……
「なんていうか、俺は裏切られたり、いなくなるのを前提でコイツらと組んでないから、そんなこと言われても、わからないな。どちらかと言うと、ずっといる前提で組んだし」
「……あっそ」
「俺的にはこれが正解だと思ってる。だって、変なこと考えずに済むから楽だしな」
「……楽」
これは全て事実。
こんなことに、リソースを割くのは御免だ。
――俺の精神を保つためにも、変なこと考えずに生きたい。
二度目の死が迫っている、この事実は意外と俺を蝕んでくる。だが、耐えなきゃならないんだ。――生きるために。
「……その前提、ちょっと重くないですか?」
「黙ってろ」
この雰囲気を壊すな、バカ野郎。
絶対、あと一歩っていう感じだろ。
「……確かに重いわね」
「いや、その話題はさっきので終了でよかっただろ」
「でも、嫌いじゃない」
おっと? 流れがきたか?
「――だから、私も重くなるわ」
「はい?」
「私はあなたと組むのに執着する」
「ちょっと待て、意味がわからないんだが」
「そのままの意味よ」
「いや、そうなった経緯を教えてくれ」
「あなたの重さが気に入った。ただそれだけよ」
いやいや、なんでそっちを気に入ったんだよ。
「……ていうか、うちのパーティーに入る。というのはどうなんですか?」
「俺はこの際、それでいいと思う。なんか、変なことされそうで怖いし」
そう提案すると、白雪はばつの悪そうな顔をする。
そんな顔のまま、口を開き……
「……その、私、人見知りなの……」
その言葉に俺と永久輝は同じ言葉が思い浮かぶ。
――どこがだよ。
「……そんな感じ、しなかったが」
その言葉に永久輝も頷く。
「……親近感が湧いた人には、大丈夫なの」
「……ぼっち顔だったから話しかけられた。ということか?」
そのように聞くと、白雪は黙って頷く。
「……じゃあ、永久輝にも」
また頷く。
「……冗談……ですよね?」
否定しない。
「俺たち二人、ぼっち顔認定、というわけか……」
「そういうことになるわね」
まあつまり、類似性の法則が働いたんだろうな。
「……それで、どうするんですか? パーティーに入るのか、入らないのか」
「そういえば、聞きそびれていたな。ちなみに、今は俺たち2人と、もう一人の三人パーティーだ」
「一人……」
俺たちにとっては、一人しかいない、と感じる。だが白雪は一人もいる、と感じているんだろう。
人見知りの緩和には、考えを変えることが必要になる。
ただ、それは人間にとって困難。
だがしかし、困難というだけで、不可能じゃない。
「とりあえず、顔だけでも見て考えるか? お前は観相に長けているみたいだし」
白雪の場合、顔を見るだけで考えが変わる可能性がある。
まぁ、変わらない可能性もあるが。




