土下座
「いででででで!! 耳を引っ張るなよ!!」
「それに値する行動をとったでしょ」
……まさか、本当に再開するとは。
ただの散歩……になるはずだったのに、このざまだ。……俺はどれだけ運がないんだか。
「わかった。謝るから、その手を離してくれ」
「本当にいいの?」
「いや、何がいいんだよ」
「私のパパはこの状況は男にとってご褒美だ、そう言っていたわ」
「お前のパパはクレイジー変態野郎だな。この状況は普通、最悪でしかないんだよ!!」
理解できない、という表情で俺を見てくる。
本当になんなんだよ。コイツは。
「前回の件、少しくらいは考えてくれた?」
「何それ?」
「パーティーのことよ!!」
「それはオブラートに包まずに、断っただろ。……ていうか、なんで俺に固執するんだよ」
すると、彼女は少し、もじもじしながら、
「……だって、あなたの顔が……」
えっ? 嘘でしょ?
顔がカッコいいからとか、イケメンだからとか、タイプだからとかが理由?
いや~。困っちゃうな〜。
「ぼっちの顔してたから……」
「殺すぞ」
なんだよ、ぼっちの顔って!!
そんな事言われた過去も、そんな顔してるつもりもないんだが。
「理由がぼっちの顔してたからって、どういうことだよ!! ていうか、俺はボッチじゃねぇし!!」
そう俺が言い放つと、彼女は鼻を鳴らしながら……
「クフフフ。冗談は顔だけにして、話す言葉くらいは純白にしたら?」
落ち着け、俺。
ここは町中。
これ以上は通報レベルの問題になる。
……まぁ、既に遅いかもだが。
ちらほらではあるが、俺たちを見ている人がいる。
彼らの目には非常識な人間として、俺たちは映ってるんだろうな。
逃げたいが、そうなると彼らは俺が悪役と、判断するかもしれない。だから、やるべき行動は……
「……場所を変えるぞ」
***
「……で、何で来たんですか」
「だって、女の子を自分の部屋に連れ込むのはマズイだろ? だから、ここは第三者の部屋が一番だと思ったわけ」
そう、ここは永久輝の部屋。
さっきの理由で、ここがベストと考えた。それに、ぼっちじゃないという証明もできるし。
もちろん、突然押しかけて悪いと思ってるが、前に同じようなことされたし、お相子だろ。
「……というか、誰ですか。その人は」
「……そういや、お前の名前は聞いていなかったな。とりあえず、名乗ってくれ」
彼女は面倒くさそうに、口を開き……
「白雪 蓮希よ。覚えときなさい」
「……上から目線ですね」
「そう言うお前は、俺に対して無味無臭の自己紹介してきたぞ」
「私は最低限のみで十分と思っているので」
面接での自己紹介は最低限で十分だが、あのような場ではもう少しほしかった。
「私は自己紹介したわよ。あんた達は?」
「私は永久輝悠羅です」
「俺はぼっちじゃない人間。空賀龍輝だ」
俺はぼっちじゃない人間、という部分を特に強調して名乗る。
全員の自己紹介が終わった後、白雪はあからさまなため息をつく。
「……まさか、本当にぼっちじゃないなんて」
「信じてなかったのかよ」
「今はそうかもしれませんが、昔はぼっちだったので、元なら付きますよ」
「元ぼっちはなんだか複雑だから、やめてくれ」
「……そろそろ、本題に入らせてくれない」
「ぼっちの話題はお前が始めたぞ」
そのように言うと、また睨まれた。
……喧嘩腰はやめようよ。
「……それで、何の話をしていたんですか?」
「まぁ、要約すると、コイツが俺に告白して、それを断った。にも関わらず、しつこく追ってきた、というわけだ」
「違うわよ!!」
「何が違うんだよ」
「『告白』の部分よ!!」
「……お前まさか、『告白』という言葉を好意を伝えるもの、としか考えていないのか? まったく、これだから年頃の娘は」
やれやれ。脳内ピンクにはなりたくないものだね。
――チッ!!
……舌打ち。
これ以上は俺の体が危険だ。やめておこう。
「……ムカつくわね。あんた」
「いつものことですよ」
……仲間ゼロ。
「ムカつくことは知ってたし、もうこの際、どうでもいいわ」
……顔は怖いままなんですけど。
「で、結局どうするの? パーティーを組むか、組まないのか」
何度も言ってるだろうが、とは顔が怖すぎて言えない。
「……既に所属してるし、やめとく」
ふと、永久輝の顔を見ると、なぜかドン引きしていた。
いや、変なこと言ってないでしょ。
……そっか、俺は今、女の子にびびってるんだった。
「……そう。じゃあもういいわ」
あれ? そんなにあっさり?
もしや、俺との相性を理解したとか?
――いや、なんか少し違う気がするんだよな。
判断には情報が必要。
ここで白雪が手に入れた情報は何だ?
――『俺がぼっちじゃない』この情報か。
う〜ん。ここから、彼女の性格とかも考えると……
「お前、もしかして、ぼっちなの?」
一瞬で、空気が凍った。
……地雷だったのか。
こ、このままじゃまずい。――怒りが、言葉が、暴力が飛んでくる。
あれ? 飛んでこない。
それどころか、白雪の動きが完全に止まった。
――まさか、これは前兆。
次の瞬間、ぼっかぁーんってやつだ。
だったら、やることはただ一つしかないだろう。
「誠に、大変、本当に、非常に、とても、すごく、申し訳ございません」
――土下座。
これしかないだろ。




