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最悪の出会い

 ――廃れた村。


 一目見て、そう感じた。

 草が辺りを侵食し、視界の大半を占めている。

 家々は埃を被り、穴が至る所に開いており、住むことは難しいと感じさせる。


 今日の依頼は、ここが魔物の住処になっていないかの確認。もしなっていた場合は討伐。


 今回も俺一人で依頼を受けた。

 理由は暇だったからだ。


「……前回の依頼みたくならないことを祈るぜ」


 トラウマを思い出し、身震いする。

 ……トラウマがどんどん増えていくな。


 ため息をつきながらも、草をかき分ける。

 今のところ、何一つ魔物の気配は感じられない。

 いたのは虫くらい……


 ――ザッザッ!!


 突然、草が踏み分けられる音が耳に入る。

 音はこの先から発された。


「……これだけぼうぼうだと、足音殺すのは無理だよな」


 だったら、やることはただ一つ。


 ――一瞬で距離を詰める。


 草を踏み潰しながら、一直線に駆けていく。


 ――いた!!


 そいつの姿は、ティラノサウルスに酷似していた。

 どす黒く、ゴツゴツした鱗。

 そして、八重歯が異様に伸び、口元から飛び出している。


「……デカいな」


 全長は俺の数倍。 

 頑強な体躯をしているが、今の俺ならば簡単に勝てるな。


 流石に、こんな場所で炎を使うと大惨事になる。だから、風で殺す。


 左手に風を収束させる。

 草が靡き始め、俺の存在が奴に伝わる。


 奴は俺を見ると、うなり音を出し、威嚇を始める。


 ……その動作、要らねぇだろ。

 ま、本能だから仕方がないか。


「……じゃあな」


 風を圧縮し、放とうとした――


 ――ズドンッ!!


 突然、横から白い閃光が走った。


 次の瞬間、轟音とともに雷鳴が轟く。

 

 光で目がくらみ、轟音で耳がつんざく。

 ……クソッ。どういう状況だ。


 なんとか目を開け、状況を理解しようとする。

 

 目の前には横たわるティラノサウルス。

 ――そして、一人の少女。


 その少女は無言で口を動かす。

 ……いや、何か言っている。


「なんて言った?」


 俺がそのように聞くと、また何か言う。

 だが、聞き取りづらい。

 ……聴覚が回復するまで待つか。


「いでででででっ!!」


 ……何故だ。

 なんで、初対面の人間に足を踏まれているんだ。


「なんで、聞こえないふりしてんのよ!」


 今度は、はっきり聞こえた。


「そんなことしてねえよ。さっきの雷のせいで、耳がイカれたんだよ」


 彼女は信じていないのか、俺を睨む。

 睨むのはまだいいけど、足は退かしてくれよ。痛いんだよ。


「……そうね。確かに凡人は、そうなってしまうわ」


 そう言いながら、足を上げる。


「マジでお前。手を出すのが早すぎんだろ」


「手は出してないわ。足よ」


「それを言い訳にするのは、バカ野郎かクソ野郎だけだぞ」


「喧嘩売ってんの?」


「お前の方が喧嘩売るのは早かったと思うが?」


 その言葉を聞くと、彼女はハァと大きなため息をつく。

 ……何こいつ。


「そんなことより、さっきの魔術見てどう思ったの? まあ、『すごい』の3文字が浮かんだのが予想できるけど。そんなすごい魔術は私が放ったの。そこで提案なのだけど……て、ちょっと、どこ行くのよ!!」


「なんだ?」


「いや、私を無視してどこ行ってんのよ!!」


「もしや、俺に話しかけていたのか。俺はてっきり、そこの草と会話しているのかと」


「そんなわけないでしょ!!」


「確かにそうだな。会話というものはお互いに話すもの。だが、お前は草に対して一方的に話しかけていただけだから、お前の独演会か」


「それも違うわよ」


「じゃあ、会話の試みか?」


 そのように煽ると、彼女は俺へ近づく。

 そして、突然胸ぐらをつかみ、こう言い放つ……


「……これ以上は殺すわよ」


「……やめます。すみません。ごめんなさい」


 こっわぁ……。

 俺を一瞬で生存モードに切り替えさせたぞ。


「あなたはいつ逃げてもおかしくなさそうだから、単刀直入に言うわ」


「へぇー」


「興味がないのは減点だけど、この際そんなことはどうでもいいわ」


「寄り道せずに早く話せー。こっちは早く帰りたいんだー」


「ブッ殺すわよ」


「……すみません」


 ……眼光が凄まじいな。


「それじゃあ話させてもらうわ。あなた、私と組みなさい」


「組手?」


「違うわよ! パーティーよ!!」


「断る」


 俺は何のためらいもなく、ばっさり彼女の提案を切る。


「……は? いやいや」


 そう言いながら、首を横に振り、自分の考えを否定している。


「聞き間違いをしたようだから、もう一度言ってあげるわ」


「なんで、聞き間違いになるんだよ。自分の意思のまま断った、ただそれだけだ」


 彼女の顔には信じられない、という文字が浮き出ていた。


「……さっきの魔術見たでしょ?」


「ああ」


「一撃で魔物を倒して、あなたの命を救ったのも?」


「命を救われた事実はないが、倒してたな」


「いやいや、私が助けなかったらあなた、死んでたから」


「そんなわけねぇだろ。あんな雑魚」


「見栄をはらなくて大丈夫よ。わかってるんだから」


 なぜだろう。だんだんムカついてきた。

 ――いや、落ち着け俺。

 相手は初対面。そんな人間に普段通りの俺は出すべきじゃない。


 だから、取るべき行動は……


 ――全力逃走。


 あんな暴力女なんかの縁は要らねぇんだよ!!


「はあぁぁぁ? 待ちなさいよぉ!!」


 もちろん、無視だ。

 残念ながら、俺の脚力は女では到底たどり着けない領域にいる。


 じゃあな、クソ野郎。二度と会わないことを祈るぜ。


 ――けど、こういうのに限って、再会するんだよな。

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