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6

だが、アレンは感じる。ジークは笑っている。

しかし、その表情にどこか違和感を感じてしまう。


どこか。


「俺もみんなの為になれて嬉しい」


「これから、もっと。俺、がんばるよ」


響くジークの声。

それはどこか儚げに、アレンの耳には聞こえてしまった。


「ジーク」


なにかあったのか?


そう問いかけようとした、アレン。

しかしそれを、仲間たちの声が遮る。


「よーしッ、今日はぱーっと打ち上げだ!!」


ゴウメイ。


「そうね。なんだか新しい一歩を踏み出したような気がするわ」


マリア。


「これも、アレンとジークのおかげ」


そして、ココネ。


皆の楽しそうな雰囲気。

そしてジークの元に駆け寄っていく、仲間たち。


それに、アレンは言葉を飲み込む。


アレンの視線の先。

そこには変わぬ笑顔を浮かべる、ジーク。


首を振る、アレン。


考えすぎか。

そう自分に言い聞かせ、アレンもまた皆の後を追う。


その足を踏み出し--


顔に柔らかな笑みを浮かべながら。


〜〜〜


その日の夜。

街は、静かに賑わっていた。


魔物の巣をひとつ潰したことで、周囲の脅威は減った。それを祝うかのように、酒場には人の声と笑いが満ちている。


「ほらアレン! 飲め飲め!」


「うるせぇな、ゴウメイ。ペース考えろって」


木製のジョッキがぶつかり合う音。

料理の香り。

暖かな灯り。


すべてが、平和そのものだった。


「ふふ。こういうの、いいわね」


マリアが柔らかく笑う。


「うん。なんか安心する」


ココネも頷きながら、スープを口に運ぶ。


その様子を見て。


アレンは、小さく息を吐いた。


(悪くない)


いや。

むしろ、これが“あるべき姿”だ。


無理も無茶もない。

誰も欠けない。


そんな当たり前。


(あの世界では、こんなことできなかった)


ふと、思い出す。


血と絶叫に塗れた記憶。

だが、それはもう過去だ。


今は違う。


「ジーク」


視線を向ける。


テーブルの端。

そこに、ジークはいた。


皆の輪の中にいる。


いる、はずなのに。


妙な違和感。


笑っている。

ちゃんと、笑っている。


ゴウメイの話に頷き、ココネの冗談に少し照れ、マリアの言葉に礼を言う。


完璧な“仲間”の姿。


なのに。

妙に、遠く感じる。


まるで。

一枚、薄い膜を隔てて見ているような。

そんな感じ。


「アレン?」


不意に、目が合った。


ジークがこちらを見る。


その瞬間。


「どうした?」


にこりと笑う。


変わらない。

いつも通りの笑顔。


なのに。


アレンの背筋に、冷たいものが走る。


「いや。なんでもない」


誤魔化す。

そのまま、視線を逸らす。


疲れてるだけだ。

そう、アレンさ思い込もうとする。


だが、その時だった。


カラン。

ジークの手から、スプーンが落ちた。


同時に、ジークは呟く。


「俺。ここに居てもいいの…かな?」


どこか遠いところを見ているかのような顔。


しかし、それを。


「なに言ってるの? いいに決まってるじゃない」


落ちたスプーン。

それを拾いあげ、ジークに微笑むマリア。

アレンも頷く。


「ジーク。ジークはずっと俺たちといっしょだ」


「俺たちの大切な仲間だからな」


「あ、あぁ。そうだよな」


頷き、ジークはマリアからスプーンを受け取る。


その姿。

それに、アレンはまた違和感を感じる。


同時に脳内に微かに響く声。


それは、あの世界での結末のひとつ。


〜〜〜


「ありがとうございます。そ、そのジークさま」


「わたしたちを人間から助けていただいて」


あの洞窟。

その中で、追放されたジークが人語を話すゴブリンやオークたち囲まれ力強く頷いている。


〜〜〜


朧げな光景だった。

しかし、それは確かに。


アレンの中にわだかまる違和感。

それの原因そのものだった。

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