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5

中に踏み込む。

中はひんやりとしている。

同時に、魔物たちの鳴き声が止む。


「みんな、警戒しろ」


「おう。油断大敵ってやつだ」


響くアレンの声とゴウメイの締まった声。

そこに宿るのは、緊張感。


感じる、ジークの力。


決断力の向上。

加えて、視力の向上。


それにより、アレンたちは暗闇の中でも視界と冷静さを保つことができている。


油断、慢心。

あの世界では、それが命とりになった。


ジークがいなかった。

それだけではない。


勇者としての圧倒的な力。

それに慢心し、油断していたことも原因のひとつなのだから。


「ねぇ、マリア」


「ん?」


「アレン。なにか、変わったね。なにがとははっきり言えないけど」


先を行く、アレン。

その背を見つめ、ココネは声を発する。


マリアは答えた。


同じようにアレンを見つめ--


「変わったというより…変わることを選んだみたい。人ってそう簡単に変われるものじゃないし」


そう声を発し、昨日までの。

いやジークの追放を宣言する直前までのアレンの姿を思い出す。


蔑みの顔をたたえ、「役立たずの無能」とジークを小馬鹿していたアレン。

あの姿。それは、【追放】に関して決して妥協しない。そんな雰囲気が漂っていた。


だが、しかし。


「それにしても。わたしびっくりしちゃった」


「ものの数十分よ? ものの数十分」


「それで、あの態度の変わりようだもん」


「一瞬。なにかの魔法にかかっちゃったのかと思ったわ」


「うん。わたしもそう思った」


マリアの言葉。

ココネもそれに、同意する。


そして、二人は同時にジークを仰ぎ見る。


ちらっと。


目が合う。


しかし、ジークは少し恥ずかしそうに目を逸らす。


それに二人は前に向き直る。


「ねぇ、マリア」


「ん?」


「ジークって。よく見ると」


「見ると?」


「なんでもない」


マリアは息をつく。


「もしかして、ココネ」


「かっこいい。って言おうとした?」


「……」


無言で、早足になるココネ。

それにマリアは、再びジークを仰ぎ見る。


またジークは目を逸らす。

今度は少しだけ頬を赤らめて。


三度、マリアは前に向き直る。


そして。


「悔しい。ちょ、ちょっとだけ」


「かわいいじゃない」


そう呟き、マリアもまたココネと同じように足早になってしまったのであった。


〜〜〜


それからの展開は、まさに理想的だった。


待ち伏せしていた、魔物たち。

ゴブリンや、オーク。

その奇襲を、アレンたちは完璧なまでの連携で返り討ちにした。


「ココネッ、あの岩陰に魔法を!!」


「マリアッ、ゴウメイへの治癒の先がけを頼む!!」


「ゴウメイッ、道を拓け!!」


「俺がッ、いく!!」


冴え渡る、アレンの決断。

そしてそれに応える、仲間たち。


皆、ジークの力の付与により、【最強】の名に相応しい戦いを繰り広げた。


そして。


最後の一匹。


それを討伐し--


真っ先に、アレンはジークへと笑顔を向けた。


「ジークッ、やった!! やったぜ!!」


それに続く、仲間たち。


「み、見直したぜ。ジーク。ううう。疑って悪かったな」


「じ、ジーク。その」


「とってもかっこよかったわ」


「マリア。わたしの台詞とらないで」


「早いもの勝ちよ」


「かっこいい? 俺のことか?」


「ば、馬鹿にするなぁ」


じゃれあう、ゴウメイ。マリア。ココネ。


その光景。

ジークはそれに涙ぐむ。


これが、求めていたもの。


これが--


「ジーク」


名を呼ぶ、アレン。


その表情。

それはまさしく。


「今の俺。ちゃんと勇者オレしてるだろ?」


勇者そのもの。


涙を拭う。


しかし、そのジークの顔は幸せそうな笑みに彩られていたのであった。

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― 新着の感想 ―
2週目のアレンはともかくここまで一瞬で仲間が心変わりするのは流石に不自然なので、ジークのサポートを受けると洗脳されるっていう隠し効果がありそう。 本来は追放されて目覚める力がアランに認められたことで…
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