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その夜。
「これでよかったん…だよな」
アレンは、呟く。
窓の前に立ち、差し込む月の光にその身を照らされながら。
部屋を仰ぎ見る。
そこには、それぞれのベッドで眠るジークとゴウメイ。そして、マリアとココネ。
皆、何事もなかったかのように眠っている。
しかし、アレンの中には残っていた。
あの光景。
あの結末が。
後悔。絶望。抗えない理不尽。
唇を噛み締める、アレン。
そして。
「ジーク」
「この世界ではいっしょにがんばろうな」
「俺も。いや」
「俺たちもがんばるから」
思わず呟いていた。
その呟きに込められているのは、決意。
あの世界。そこでは、最後まで持つことができなかった勇者としての決意だった。
〜〜〜
翌朝。
「よし」
「出発するぞ」
日の光。
その下に響く、アレンの声。
「今日はこの村を苦しめる魔物の討伐。村長さんの話によれば--」
強烈な既視感。
それがアレンを襲う。
そうだ。
あの時も、こうやって。
ジークを追放し、意気揚々と魔物討伐へと出かけた。
〜〜〜
「ジークなんて居なくても、楽勝だろ」
「そうね。だって」
「あいつ。ずっと後ろで手のひらをかざしているだけだもんな」
「最初は俺たちに魔法をかけてくれてるのかと思っていたけど」
「魔法をかけていたのは、わたしだし」
馬鹿にしたように、みんな笑っていた。
ジークを蔑み。追放したことを。
〜〜〜
だが、結果は。
突然、声を発するのをやめたアレン。
そのアレンに、マリアは声をかける。
「アレン?」
「ん? あ、あぁ」
「どうかした? なんだか顔色が悪いけど」
「い、いや。大丈夫だ」
「そう? あんまり無理しちゃダメだよ」
「わ、悪い」
ジーク。ゴウメイ。ココネ。
その三人も、アレンを心配そうに見つめている。
「で? 村長さんの話によれば……なに?」
首を振り、深呼吸をし、アレンは続ける。
「村長さんの話によれば、魔物たちは北の方からやってくるらしい。聞けば、かつて炭鉱として使われていた洞窟がそこにはあるようだ」
既視感。
しかし、今は違う。
今、この場には。
「なら、はやく。その洞窟に向かおう」
ジークが居る。
「俺はいつものように、みんなのサポートをする。だから」
「サポート? ジークって、なにかサポートしてたの?」
「あぁ。実は、みんなの身体能力を無理のない範囲で強化していたんだ。その…みんなが無意識に。ちょっとだけ力を込められるように」
ココネは目は丸くする。
「て、てっきりなにもしてないと思ってた」
「お、俺もだ。でもよぉ…本当かよ、それ」
怪しむ、ゴウメイ。
「サポートならマリアとココネもやってんだろ。なのに、ジークもサポート? し、信じられねぇ」
「わたしも、わたしも」
しかし、それをアレンは遮る。
「ジークの言っていることがほんとかどうか。試してみよう。俺には、その。ジークが嘘を言ってるようには見えない」
「アレンがそう言うなら」
「う、うん」
「いっちょ信じてみるか」
そして、ジークもまた力強く声を響かせる。
「任せてくれ」
「絶対に期待を裏切るようなことはしない」
それにアレンは頷く。
そして。
「俺とゴウメイは前衛」
「マリアとココネが中衛」
「ジークは俺たちの背後を守ってほしい」
「「了解!!」」
こうして、アレンたちは魔物討伐へと向かっていったのであった。
自信に満ちた表情。それを、たたえながら。




