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第十七話

私とセレスは部屋から出て、再び一階へ降りた。

登る時より足取りが軽いのは、気のせいではないだろう。


ラルスは先ほどと同じ席に、同じ体勢で座っていた。

相変わらずテーブルの上の、何もない空間を見つめている。


一人で考え事をする時のクセなのでしょうか。

まるで石像のようですわ。


「まだいらっしゃったのですね?」


「ん?ああ、お前たちか。もう話は終わったのか?」


「はい」


「早かったな。それでどうなったんだ?」


私とセリスは先ほどと同じ席に座った。


「ぜひ私たちをあなたの仲間に加えて下さいませ」


「そうか。」


どういう感想を持ったのかは表情から読み取れない。

また何かを考えているようだった。


「お前たちの職業は……魔術師と戦士か?」


ここに来る前に、私たちが襲いかかった時のことを、思い出していたのだろう。

確かにあの時、セレスは斬りかかり、私は火の魔法を使った。


「ちょっと違いますね。正確には私が賢者で、セレスが騎士です」


「賢者?賢者って初めて聞くな。何ができるんだ?」


「火と水の魔法。あとは回復の魔法が使えます」


「3つも使えるのか……。複数魔法は難しいんじゃなかったのか?」


「確かに一つのイメージを持ってしまうと、なかなか頭から離れませんわね」


魔法のエネルギーは、体に流れる血液を変換して作られる。

そして、この作業には頭の中のイメージが重要になってくる。

火の魔法を使うためには、自分の血を火の魔力に変えるイメージを浮かべるのだ。


問題は、一度固まってしまったイメージは頭から離れなくなってしまうこと。

自分の血液に火のイメージがついてしまうと、水の魔力に変換しようとしても難しくなる。


「勇者のパーティに選ばれたミリアムでさえ、二種類しか使えなかったのにな。

賢者っていうのは三種類も使えるのか」


「職業だけではありませんわ。努力と……才能が必要になります」


「才能。才能ね」


この男はまた私の素性に迫ろうとしている。

確かにこの才能は、先祖から受け継がれたものだ。


「まぁいいか。

あんた達が何者かっていうのは気になるが、あまり詮索しない方がいいんだろ?」


「そうして頂けると助かりますわ」


私はよそ行きの微笑みを浮かべてそう答えた。


いつかこの男には話せる時が来るかもしれない。

しかし今はまだ早い。


「今の俺にとってはあんたが何者かっていうことより、何ができるかの方が大事だ。

そう考えると火、水、回復の魔法っていうのは、かなり魅力的な力だな」


「戦闘の役に立つということですか?」


「それもある。

だが、もっと大事なことがある」


「なんでしょうか?」


「魔王を倒すと言っても、1日や2日でできるわけがないだろう?

何日もかけて魔界を進む必要がある。

その時、水と火があるとないとでは話が全く違ってくるんだ」


一人で魔界の森を歩いていた時のことを思い出しているのだろう。

なるほど、そういう見方もできるのか。


「回復魔法も絶対に必要な能力だな。

ケガをしたら終わり、っていうんじゃ話にならないからな」


ラルスは独り言のようにつぶやいて、何かを納得したようだった。


そして私から興味を失ったかのように顔を背け、セレスの方を向いた。


「あんたは騎士だったか。変わった長剣を使っているな」


ラルスはテーブルに立てかけた剣を見ながらセレスに尋ねた。


「あぁ。普通の直剣と違って少し反りが入っているんだ。

異国で作られたものらしく、『刀』と呼ばれているものらしい」


「騎士なのに盾は使わないのか?」


「私はこの剣一本で防御もできる。」


「こんな細い剣じゃ折れてしまわないか?」


「真正面から受け止めればな。

たがそんなことはしない。

重い攻撃は受け流すんだ」


「なるほど」


ラルスの質問は続く。

まるで面接を受けているようですね。


「攻撃には自信があるのか?」


「私の剣はどちらかというと攻めより、守りに重きを置いているな」


「ふむ、前衛で支えられるわけか…… 」


そこでセレスへの質問は終わったようで、ラルスの顔は天井を仰いだ。

何かを想像しているようだった。


「攻撃力に少し不安が残るが……

うん、バランスはとれそうだな」


魔物との戦いをイメージしているのだろう。

上を向きながら、ふんふんと鼻を鳴らしている。


「何よりあんた達は、俺の話に共感してくれたようだ。

変な奴だと思われて終わりかと思ったがな」


「あなたの話はとても興味深かったですわ」


ここは素直に感想を言っておくべきだろう。

セレスもコクリと頷いた。


「そうか」



どうやら決め手を打てたようだ。


「分かった。

とりあえず一旦パーティを組んでみようか。

合わないようだったら、解散すればいいだけだしな」


歯切れが悪いですね……

が、まぁいいでしょう。


私は立ち上がりラルスに握手を求めた。


「ありがとうございます。

あらためまして。私はシアと申します。

これからよろしくお願いいたしますわ。」


セレスも私に倣って立ち上がる。


「セレスだ。よろしく頼む」


ラルスも立ち上がりテーブルの上で握手を返してきた。


「あぁ。俺はラルス。よろしくな」


数日後、王国に名を響かせる3人の出会いだった。

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