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殺し屋の過ち学  作者: ニムゲ総長
3章/真っ赤に染まったブルーオーシャン
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7.Five Land Coast(下)

そんなこんなでトラブルもあったが、後半の海の家のバイトはあれからは何事もなく無事終わった。天気もずっと晴れており、その分忙しい日を過ごした。そしてバイト最終日水着から着替え終わって、みんなで集る。

 

 「今回は来てくれてありがとう。はい、これがバイト代ね」

 

 今回のバイト代、六万円が手渡される。あー、これで何を買おうかしら。せっかく夏だし水着?、高くて買えなかったコスメ?、長年使ってボロボロになった財布? うちは基本的にバイトは禁止だから、おこずかいのやりくりが重要になってくる。そんな中降ってわいたこのバイト代をどうしようかと頭の中はぐるぐる回っていた。。

 

 「それで、最初に言っていたように、明日明後日まではここで泊って遊ぼう!」

 

 それも今回の予定の一部だった。バイトが終わった後、二泊三日はここに止まって遊ぼう。宿泊費は一泊五千円二泊で一万。だから、一週間のバイト代七万 - 一万で六万だ。

 

 「プランは芳野さんに任せるって話でしたけど、決まってるのかしら」

 

 「まずは明日だね! 明日は海に行くと疲れると思ったから、五陸町を案内するよ。色々あるからね。海を一望できるおしゃれなカフェとか、馬鹿みたいにでっかい神社、満潮でしかいけない小島とか。見ようと思ったら一杯あるよ。んで明後日は海! 午後からはビーチバレー大会があるからそれにも出てさ! 優勝商品はなんと10万円! バイトよりも割がいいね。それから・・・・・・」

 

 本当にマシンガンのように止まらない、明日明後日の予定を楽しそうに喋る芳野先輩。残念ながら疲れ切った私達はバイトで疲れ果てた体を癒すため、温泉に入ることにした。バイト中はみんなバラバラの時間に終わっていたから、三人で一緒に、入るのは一週間ぶり。まだこの時間なら夕食前のため人はいないはず。

 

 「女」と書かれた赤い暖簾をくぐり脱衣所へ。するりと服を脱ぎ捨て、体を洗ってから、温泉へ飛び込む。少し集めのお湯が私の肢体を包み込む。

 

 「あー、生き返るわぁ」

 

 「あら、紗夜さんは、おじさんみたいな台詞を言うわね」

 

 「たしかにー」

 

 遅れて入ってきた先輩達が私を茶化しながら、湯船の縁に腰かける。

 

 「えぇー、本当のことだし、いいじゃないですか。私もう疲れて死にそうですよ」

 

 私はそのまま首まで浸かって、体育すわりのような格好になる。普段運動している二人とは違って、めっきり運動もしていない私。最近ちょっとお腹も気になり始めてきた今日この頃、なんとなくおなかのお肉をつねって感触を確かめて、不覚ため息をつく。これはダメかも・・・・・・。

 

 ちらりと目の前に腰掛ける先輩達を見る。タオルで隠れているから見えないが、芳野先輩は山登りしているだけあって全体的にしっかりとした体つきだ。健康的な美人とみんな言うが、まさに正鵠を得ている。一方、桜先輩は全体的に肉つきもなく、本当にすらっとしている。こう見えて剣道の腕はすごいんだから、まさに人は見た目に寄らないわね・・・・・・。

 

 「紗夜っちのエッチ! そんなにじろじろ見ないでよぉ」

 

 「見てません!」

 

 いや、まあ見ていたけど。不意に目が会った先輩にからかわれる。そのまま、二人は私を湯船で挟むように座り込んだ。隣に座った芳野先輩はろくでもない笑顔を浮かべていた。

 

 「所で、紗夜っちさぁ、響也君とはどうなのよ」

 

 「どうとは・・・・・・」

 

 「またまた、しらばっくれちゃって、キスくらいした?」

 

 「そ、そんな関係じゃありません」

 

 私はとっさに立ち上がり、二人を眺めた。突然立ち上がった私をぽかんとした顔が見えた。なんとなく、恥ずかしくなり、また私は無言で湯船に体を沈めた。

 

 「芳野さんの話は行き過ぎだとしても、ちょっとは思うところはあるんじゃないですか?」

 

 諭されるように、優しく言われる。そう言われると、思うところがもちろん無いわけではない。二回も助けられてるし、表情には出さないが、なんとなく私に気を使ってくれている気がする。・・・・・・、多分。

 

 「んー、なんと言うか、良くわかんない奴ですよね。喋らないし、表情は読めないし、そのくせ、やることは突拍子もないし。この前だって、あんな危なそうな人達と揉めるなんて、普通じゃありませんよ。・・・・・・、まあ、そのおかげであの時は助けられたけど」

 

 「結構さ、響ちゃんって、顔かっこよくない? 目鼻くっきりしてるし、体だってしっかりしてるし、しかも運動神経抜群だよ。勉強ができるか知らないけどさ。なんというか超クールな感じ? あれでおしゃべりで来たら今の三倍はモテてるね」

 

 「今の響也のモテ値は0で、0に何かけても0だとおもうんですが・・・・・・」

 

 「いやー見る人が見れば、やっぱかっこいいと思うよ。だからさ、とっととアタックしちゃいなよ!」

 

 人事だと思って、好き勝手言う。それくらい、私も気がついてる。ただ・・・・・・。アイツに恋愛感情とか、そういうのはあるのだろうか。外面だけ見れば確かに悪くない、っていうかいいほうだと私だって思う。伊達にこれまで女子をしていない。

 ただ、価値観というか考え方というか、その辺が全然かみ合っていない気がする。皆がブレーキをかけるところで、アクセルを前回にするというか、そういう節がある。以前あったルリルさんは短い時間だったが、話した限り普通の人だった。響也のこれまでとやっぱり関係があるのかな・・・・・・。そういえばあいつは何時からああいう事をしているのかな・・・・・・。全然想像もつかないけど、なんとなく思いを巡らせてします。

 

 「はあ、まあ考えておきます」

 

 「そんな気持ちじゃだめです、紗夜さん。命短し恋せよ乙女、人間いつ死んでしまうのか分からないんですから、今のうちに胸に秘める思いの丈を伝えないと。居なくなってからでは、取られてからでは遅いのですよ。兵法は拙速を尊ぶ。さっさと言ってしまった方が楽になれますわよ」

 

 珍しく熱く語る桜先輩に、少し驚きつつも、これ以上話を続けられるのが面倒だと思った私は、二人の恋愛事情に話を振った。二人とも校内ではかなりの人気だから、話は尽きないはず。

 

 「ははは、私は山が恋人だから」

 

 「私は、・・・・・・。私より強い人としか、お付き合いする気が無いので」

 

 そう言われうまい感じにはぐらかされた。というか、桜先輩、剣道は県内トップですよね。つまり県内の男子は眼中にないってことですよね。先輩を狙っている男子がどれくらいいるのか知らないけど、なんとなくかわいそうになった。不意に夜空を見上げると、空には三日月が薄い雲に半分ほど隠れていた。そういえば、初めて響也と会ったのも、こんな月が綺麗な夜だったな・・・・・・。

 

 

 

 次の日、芳野先輩に連れられ町を回った。海の町として有名な五陸町だが、山も近くにあったりして、意外な発見も多かった。山際のおしゃれなカフェで木漏れ日あふれる森の景色を見ながらお茶を飲んだり、地元の山菜や海の幸をふんだんに使った天ぷらそばが有名なお蕎麦屋さん、海沿いの目の前の海でとれた塩を打っている塩屋さんで塩ソフトクリームを食べた。

 夕方にはこの辺で一番大きな華仙神社にも行った。有名だという、純金の蛇の像は綺麗だったし、山の上にある境内のから見た海に沈む夕日は絶景だった。なんせ響也が綺麗だと、つい感想を言ってしまうくらいだ。この一週間で、一番の驚きだった。

。その時ひいたおみくじが小吉だったのが、ちょっと残念だったけど・・・・・・。

 

 さらにその次の日、私たちはここに来てやっと海で遊んだ。大きな浮き輪を借りて泳いだり、芳野先輩が船を借りてくれて、ちょっと沖でシュノーケリングしてみたり、ちょっとしたBBQをしてみたり楽しかった。午後からは芳野先輩が申し込んでいたビーチバレー大会に参加した。四人一チームなので人数も丁度良かった。しかも女性が入れた点は2倍というルールだった。これがラッキーだった。なんたって、先輩達はバレーもできて、バンバン点を決めていった。響也と浩太君も普通にうまくて、綺麗にトスを上げたり、レシーブしていた。私が一番足をひっぱたのは言うまでもない・・・・・・。結果は準優勝だった。優勝は大学生のチームで、いい試合をしたが、僅差で負けでしまった。

 

 そんなこんなで、夕方。一日中海辺で遊んで、焼けてヒリヒリする肌をシャワーに当て、塩水を洗い流す。皆いつもの服装に戻るけど、みんなちょっとだけ焼けている。最初は日焼けするのを嫌がっていた桜先輩も手首や足首や足首周りだけは焼けてしまっている。しかし、ほかは全然焼けていない・・・・・・。一体どんな日焼け止めを使っているのかしら。

 

 「みんな、今回はバイトに来てくれてありがとう。また、来年もよろしくね」

 

 多分私は来年は行かないけど・・・・・・、そんなことをあえて言う勇気はないため、ハイと小さな声で返事をする。

 

 「じゃあね、みんな。また、学校で」

 

 「紗夜さん、またお茶室で」

 

 そのまま家に帰る芳野先輩にここから家が近いとバスで帰る浩太君、もう少し町を見たいと言っていた桜先輩と別れ、私は響也と一緒に、駅に向かって歩いた。

 

 「疲れたわー、もう歩けない」

 

 ぶっちゃけ疲れて歩けない。ビーチバレーって見た目よりキツイのね。そう言って、私はその場にしゃがみこんで、ふと海を眺めた。夕日沈む海が私達を照らしている。そんな私を俯瞰するように眺める響也。

 

 「紗夜ちゃん、乗る?」

 

 唐突にさっき別れた先輩の声が聞こえる。びっくりして顔を上げると、タクシーの窓から、こちらを見ていた。

 

 「先輩、どうしたんですか?」

 

 「せっかくなんでちょっと街中を見てみたいと思って、タクシー呼んだんだけど、へたりこんでる紗夜ちゃんが見えたから。駅まで乗る?」

 

 「乗ります」

 

 先輩が言い終わる前に返事をした私は、最後の力を振り絞ってタクシーに乗り込む。響也は何も言わず前の席に乗り込む。私は目的地を駅だと言っていないけど、運転手はさっきの会話を聞いていたのだろう、すぐにタクシーが走り出す。走ってすぐになんか甘い匂いがするのに気が付く。

 先輩が微笑みながら横で何か言っているが、安心して疲れがどっと来たのか頭が朦朧として、耳に入ってこない。そのまま私は不覚にも眠ってしまった。先輩がさらに私に声をかけている気がするが、私の瞼は閉じられ、意識は夕焼け空に消えるように、溶けていった。




「・・・・・・、さん。・さ・・・さん、紗夜さん」


 朦朧とする頭を誰かが揺らす。寝ぼけ眼をゆっくりと開けると、先輩の顔がゆっくりと映る。


 「よかった」

 

 なぜか、安堵する先輩を見て、ゆっくりと頭が回転しだす。そういえばタクシーに乗った後、私すぐに寝ちゃったんだ。ということはここは駅?そう思って、回りを見渡す。どこをどう見ても木、木、木。鬱蒼と生い茂る森、今にも壊れそうなベンチ、どこから電気が着ているのか分からないような、電灯、細い砂利道。

 

  「先輩、ここどこですか?」

 

 「ごめんなさい、私も分からないのよ。目が覚めたら、紗夜ちゃんの隣でね。」

 

 不安そうな表情で、話す先輩。

 

 「響也は?」

 

 「周りに何か無いか探しに行ったわ。こんな森のど真ん中に置き去りにされて、何があるか分からないし・・・・・・」

 

 携帯電話が通じないかとポケットから取り出す。しかし、無常にも画面には圏外の二文字が映し出される。

 

 「やっぱりだめね、私のも響也君のも圏外だったわ」

 

 首を振りながらため息をつく。携帯の時計を見ると、もう、八時過ぎ。相変わらず、外は暑いが、今出ている汗は暑さからではなく、もっと他の理由から出ているに違いない。聞こえる虫たちの声は、昼間は気持ちよく聞こえていたはずなのに、今は不気味に囁いているように感じる。

 

 「二人とも」

 

 不意に砂利道の奥から、声がする。良く見ると響也が居る。

 

 「響也君、何か見つかった?」

 

 「ああ、家らしきものがあった。電気も点いている」

 

 「そう、じゃあひとまずそこへ行って、事情を説明して電話を借りることにしましょう。」

 

 私達は響也の後ろを進む。地面を踏み旅に砂利がかき鳴らされ、私たちのいる場所を誰かに教えている。そんな気さえする。時々風に揺れる木々の音が私の心臓を刺激する。恐怖で高鳴る心臓を押さえ、私は先輩の横にぴたりと着いて歩く。

 

 「紗夜さん、怖がりすぎですよ」

 

 「いやー、あはははは。っていうか先輩は怖くないんですか?」

 

 ごまかすように笑うが、はっきり行って超怖い。っていうか、響也はともかく先輩は全然怖くないわけ?

 

 「実は私、ミステリー小説とか、ホラー映画とか大好きなの! なんか、こういう状況って、小説とか映画の中に迷い込んだみたいでちょっと興奮しません?」

 

 先輩の意外な趣味を聞いたが、こっちは全然面白くは無い。架空の登場人物なんて、殺し屋の響也だけで十分! そうですかと、話を流し、響也の背中を見つめる。響也は今何を考えてるのだろう、そもそも、

 

 「痛ったい」

 

 気がつくと、響也の背中に当たっていた。ぶつけた鼻と転んだお尻をさする。

 

 「急に止まらないでよ」

 

 まあまあと、差し出す先輩の手をとり響也を見る。

 

 「ついたぞ」

 

 そういう響也の背中越しには、この前も温泉で見た三日月が、家というには大きすぎる不気味な屋敷を背に分厚い雲を着て、不気味に笑っていた。。

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