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殺し屋の過ち学  作者: ニムゲ総長
2章/低速嫌いの高速バス
32/45

17.命の価値(下)

アナウンスしてしばらく、遠くで水が流れる音がした。


 「全員バスに戻れ、早く」


 そう、響也が叫ぶと皆、バスの中に入った。すぐに鉄砲水が押し寄せる。

見るとタイヤが水に浸かるほど、水嵩が増していた。


 「どうするのよ」

 

 「・・・・・・」


 ゆっくりとバスの通路を後ろへ向かって歩く響也に、先ほどから座っている席から微動だにせず、下を流れる水を眺める彼女。

二人ともこの状況に全く焦っていないように見える。私はというと、泣きたい気持ちを抑えて、ただただ響也の後をついて歩いていた。


 「落ち着いてください」


 刑事さんがゆっくりと立ち上がる。まだ歩くと痛いのだろう、体を揺らすたびに顔をしかめる。


 「次は、屋根へあがる準備です。」


 言われて響也は、割れた窓から身を乗り出し、身軽な体で屋根の上へ進んでいた。


 私達は、響也に引き上げられ、屋根の上へ。

しばらくすると、いよいよ水嵩が増してきて、後、1Mもすれば屋根まで水が来る。


 「もうだめ」


 私は死を覚悟した。涙なのか雨なのか分からない雫が、永遠と私の頬に流れ続ける。


 「諦めないでください」


 そういって、彼女は胸ポケットに手を突っ込み何かを取り出した。


 「これを・・・・・・」


 取り出したのは、ホイッスルだった。それを響也の手に渡す。


 「仕事で使った呼子笛です。まさか、こんなところで役立つなんて思いもしなかったですが・・・・・・」


 何に使うのか分かったのか、小さくうなずき、それを咥えて、大きく息を吸い、雨音を切り裂くように、大きな音を山に響かせる。斜面を、木々を水を反射し、甲高いホイッスルの音が当たりに響き渡る。


 どれ位吹いていただろうか、不意に響也が吹くのをやめる。

どうしたのかと思い、耳を塞いでいた手を離し、響也に話しかける。


 響也は何も答えることなく、森のある斜面を指差す。

見るとそこには暗闇に光る中、いくつかのライトが見えた。


 「助かった!!!」


 そう叫んで安心した私は、気がゆるんだのか。気絶してしまったらしい。

 

 

  

 そこから先は、響也と刑事さんに聞いた話になるが、私達を見つけた、警察は

救助ヘリを飛ばして、私達3人を乗せて近くの病院まで運んでくれたらしい。


 私は、子一時間して意識を取り戻した。病院で簡単な検査を受けて、異常が無いことを確認した。

しばらく頭はぼうっとしていたが、運ばれた病院食を食べたら、元気が出てきた。

遅れたやってきた、芳野先輩に思いっきり抱きつかれた私は、安心したのを覚えている。

この長い一日がやっと終わった。そんな気がした瞬間だった。

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