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殺し屋の過ち学  作者: ニムゲ総長
2章/低速嫌いの高速バス
18/45

3.部活動(中)

 ひとしきり、笑った後、あまりに笑いすぎて涙が出てきた。涙を指でぬぐって真剣な眼差しでこちらを見ている彼に視線を戻す。

 なぜ私がそんなに笑っているかが、分からないといった表情でこちらを見る。なんとなく、もうちょっと会話をしてみたいと思った私は彼の隣に腰掛ける。不意に春の暖かい風が私達を包み込む。

 

 「お前は、どんな部活に入っているんだ」

 

 私に興味を持ってくれたのか、珍しく彼から話題を振ってきた。それがちょっと嬉しくなり、にやけてしまう。

 

 「なによー、私の部活に興味あるの?」

 

 「・・・・・・」

 

 なぜか、返事をしない。本当は興味ないのかな?彼の鉄皮から表情がまったく読み取れない。普段なら、私は相談なんてするキャラじゃないんだけど、なんとなく、春の暖かい風が口をふわりと押し上げたのか、私は、ポツリと言ってしまった。

 

 「それがね、まだ迷ってるのよ」

 

 「なぜだ?」

 

 なぜ?自分でもなぜ部活を決められないのか、はっきりわからないから困ってるのよ! 彼から理由を聞かれ改めて考えてたけど、なんて説明すればいいか分からない。やっぱり、どの部活も長く続けれる気がしないから? これと言った部活がみつけられないから? 自分でも答えの出ていない疑問を聞かれ、頭の中で答えを探すが、やっぱり、見つからない。というか、それが分かったら、きっと私は悩んでいないだろう。

 

 「さあ、何でかしら。難しいわね」

 

 「なぜ、この質問が難しいのか、理解できない」

 

 不思議そうな顔で、私の表情を伺う。まるで子供が素朴な疑問の答えを聞くような。

 

 「あれよ、まあ、私の乙女心はあんたみたいな、朴念仁には理解できない繊細で尊い、ひび割れた硝子みたいなものなのよ」

 

 そうか、とつぶやいて、またグラウンドに目線を戻した。それからはもう彼は口を開かなかった。

 私も、なんとなくここにいるのも飽きたし、帰ろうかなと、腰を上げスカートについた芝生を払った。腕を空に伸ばし体をほぐしたして、帰ろうとした時、不意に見知った声に呼び止められる。

 

 「あれ、珍しい組み合わせだね」

 

 声をかけてきたほうに振り向くと、響也君とこの前の調理実習でペアを組んだいた浩太君と、多分先輩だろう、同学年では見たこの無い、女子生徒が歩いてきた。ぼさぼさの青みがかった髪を膝まで伸ばし、細いながらも、しっかりと筋肉が着いたグラマラス胸、猫のように気まぐれそうな瞳に、自由気ままそうでかわいらしい口元。一目見て美人だなと思う先輩だった。

 

 「やぁやぁ、どうもどうも、ご両人、青春してるねー」

 

 今までの私と彼のやり取りのどこを見ていたら、そんな感想が浮かぶのか、・・・・・・。小一時間聞きたいが、流石にそんなことをすれば先輩に怒られるだろう。そう思って今の気持ちをぐっと胸の中に押さえ込んだ。

 

 「いやいや、そんなんじゃ無いですよ。珍しく彼がいたので、興味本位で話していただけです。それだけです」

 

 「そんな強く否定しなくても、私は何も言わないからだいじょーぶ!!」

 

 白くまぶしい八重歯を見せながら、にやけ、親指をグッと掲げる。なんかテンション高いわね、この先輩。その横を見ると、この人のテンションの高さがちょっとはずかしいのか、浩太君はちょっぴり顔を赤くしながら、もじもじしている。

 

 「それで、私達に何のようですか?」

 

 きっと、何か用事があるから話かけてきたのだろう、じゃなきゃ、浩太君はともかく、初対面の彼女が私達に話かけて来るわけが無い。というか、初対面よね・・・・・・。ちょっと不安になって入学してから、会った顔をちょっと足りない頭で思い出したが、やっぱり知った顔ではない。

 

 「あっははは、せっかちな子だねー、まあいいけど。浩ちゃん、よろしく」

 

 そう言われた、浩太は私達に向けて一枚の紙を差し出した。見るとそこには、「山岳部員募集」と大きな文字でかかれていた。なぜか彼も興味を引かれたのか、いつの間にか私の横に立っており、そのビラをもらって真剣に眺めていた。

 

 「山岳部は灰堂先生の件があって、廃部になったと聞いたが」

 

 芯の通った彼の声が、当然の疑問を口にする。私もビラを見て同様のことを最初に思った。灰堂先生が顧問をしていた部活は、あの事件の煽りを受けて廃部になったと聞いた。元々、そこまで大きな部活ではなく、半分くらいが掛け持ち部員だったから、職員会議で廃部が決定したと聞いた。

 

 「あっはははは、さっすが、耳が早いねー。でも、それはチョーット間違いだね、廃部になったのは登山部のほうなのさ」

 

 はあ?私達の口から同時に疑問符が立ち上がる。そんな私達の反応は予想していたと言わんばかりに、手を叩き、浩太君の背中を押し、説明よろしく! と話を振る。

 

 「実はね、・・・・・・」

 

 口火を切った浩太君が、ゆっくりとした口で、今までの経緯を説明する。しばらく聞いていたが、要約すると、・・・・・・、こうだ。


 灰堂先生の件があり、問答無用で登山部は廃部となってしまった。元々、本当に登山をするような主要メンバーは少なく、半分以上はシーズン毎に海でキャンプしたり、冬にスキーに行ったりする、軽めのアウトドアをするような部活だったらしい。残念ながら、主要メンバー以外はメインの部活に集中したい、という理由をやめてしまったり、風評被害からやめてしまったらしい。当然と言えば当然よね。


 それで一番被害を被ったのは、少数だった主要メンバーだ。ここで廃部にされたら、同好会扱いになっていまう。部から同好会に格下げされると、・・・・・・、嫌だな話だが、内申点にも響くし、受験時の推薦でも不利になる。そこで、生徒会に廃部中止を掛け合ったらしい。そこで、職員会議で出た折衷案は

 

 「登山部は廃止、山岳部として移行することはOKする。ただし、山岳部の部員が5人に満たない場合は、山岳同好会として活動すること、部員は他の部活との掛け持ちをしていない生徒とすること」

 

 と言うものらしい。なるほどね、先生達もなかなか厳しい条件を出すわ、・・・・・・。私はその条件を聞いて、先生達は山岳部もできるだけ潰したいと思っているのが、本音なのだと思った。最後まで残った山岳部員は、浩太君を含め二年と三年の先輩を合わせて四人。つまり、完全に新規の部員をもう一人この時期に探してくる必要がある。

 

 「これ、なかなか、難しい条件ですよね」

 

 「だよねー、これがまた、先生方も意地悪な条件を出してくれて困っているのさー」

 

 そういって、高らかに笑う先輩。きっと先輩もこの条件を見たとき私と同じ感想をもったに違いないことは、反応からして想像に難くない。

 

 「なぜだ?」

 

 事情を知らない響也君が、当然の疑問を呈す。そう思うのは、当然だろう。それに答えようと浩太君が、お手上げのポーズをしながら説明する。

 

 「それはね、この時期に部活に入っていない生徒はほとんどいないからだよ」

 

 「どういうことだ?」

 

 「新入生の君は知らないかもしれないけど、ウチの生徒はほとんど部活をやってるんだよー。部活が好きだからって言う理由ももちろんあるけど、推薦がもらいやすくなるって言うのも大きい理由なのさ。」

 

 推薦。ウチの学生の半分は、エスカレータで八雲大学まで進むことができる。その推薦枠は毎年決まっており、成績がほぼ同様なら、部活をやっていた生徒が優先して通る。

 

 「まあ、今回の廃部は学校としても例外だから、ここでやめても推薦には影響しないって言ってくれるんだけどねー。そういう問題じゃないんだよね、本当に山が好きだった私達のとってはね」

 

 そうさびしそうにつぶやく先輩。

 

 「あのー、それでも、適当に部活に入っていない人達を引っ張ってくればいいんじゃ、・・・・・・。数は少ないと言っても、いないわけではないですよね」

 

 いいところを付いてくるねと、笑いながら、私のほうをその細い指をぶんぶん振りながら指す。

 

 「まぁ、ぶっちゃけ、それでもいいと私は思うんだけどね。」

 

 結構ピンチな状況のはずなのに余裕綽々な先輩に私はちょっとあきれてしまった。本当にこの人状況分かってるのかしら?

 

 「それではダメなのか?」

 

 「いやー、ウチの部長がさぁ、ここまで来たなら、本当に山登りが好きな人を探して部にしたいって聞かなくってね。前は、半分旅行部というかイベント部みたいな感じで、登山は私たち主要メンバー向けのおまけ扱いだったし。一応登山は危険なスポーツだからね。生半可な気持ちでやって欲しくは無いっていう、部長の気持ちも分からないわけじゃないんだけどさ」

 

 要は、本当に山登りが好きな人しか募集していない。されど、そんな人はなかなか見つからないと言った状況らしい。きっと彼女も部長の言うことも半分分かるが、やっぱり廃部にするには心苦しいのだろう。乾いた笑いが、私の耳に残っている。

 

 「成程ね、それで浩太君たちは私達二人を勧誘に来たってわけね」

 

 「せーかい!!!。どう、君達山登りに興味ない?」

 

 「・・・・ろぅ」

 

 ん?一瞬なにか響也君が喋った気がしたが、気のせいだろう。そう思って、断る理由を探し始める。まあ、そんなもの適当でいいんだけど。

 

 「ごめんなさい。私もう、入ろうとしている部活があるんで」

 

 もちろん大嘘である。入りたい部活など無いし、そもそも、入りたい部活が決まっていれば、こんなところで油を売っていないでとっとと部活に行っているだろう。そんな私の嘘を見破ったのか、いぶかしむように、私を見る先輩。しかし、そこは大人だ。下手に追求はしてこない。きっとみんな体よく断ってきたに違いない。それでも、なぜか私の体を下から嘗め回すように、見る先輩。

 

 「なにか?」

 

 「いやいや、君みたいな美人さんが入る部活の男子どもは、さぞ嬉しいことだろうと思っただけさ!なあ、浩ちゃん」

 

 背中を叩かれ話を突然ふられ、焦った浩太君は顔を赤くしている。それを見た先輩はからかうように背中をさらに叩く。なんか、仲の良い兄弟みたい、・・・・・・。

 

 「んで、そっちの無口の彼はどうかな?山岳部に興味ない?」

 

 無いに決まってるじゃない、このころし。

 

 「入部しよう」

 

 は? 私は耳に入ってきた言葉が信じられず。目にも見えない速さで首を回し、彼の無表情を目の当たりにする。

 

 「本当?、響也君!!!」

 

 両手をぶんぶんと振り回し飛び跳ね、嬉しさをあらわす浩太君に、私と同じくあっけにとられ目が点になっている先輩。そりゃそうだ、正直全く当てにしていなかったであろう彼が、突然入ると言って来たのだ。驚かないほうがおかしい。そんな様子に、彼は首を傾げる。

 

 「何か問題が? 誘ってきたのはそっちだろう」

 

 いよいよ、本気らしい彼の態度に、二人は大喜びする。これで、廃部は免れるのだから、当然と言えば当然だ。

 

 「でも、本当に大丈夫かい?結構厳しいし大変だよ、山登りって」

 

 一応、最後の確認のためか、先輩が彼に忠告をするが、彼は変え色ひとつ変えずに返事をする。そりゃそうだろう、どこの世界に殺し屋の仕事よりも厳しい部活があるというのか。そんなものがあるのならば、私のほうが見てみたいわよ!!そう心の中で叫んで、苦笑いする。

 

 「登山部には元々興味があった。無くなったと聞いていたため、見学はできなかったが・・・・・・。それに運動神経には多少自信がある。」

 

 そう言って、少し距離を取り、誰にも頼まれていないのにその無表情のまま、不意に地面を蹴り上げる。背筋を綺麗に伸ばしたまま華麗に宙返りを決める。それを見て、あっけにとられ口をあける二人、いや三人だった。

 

 「やるじゃん! 君。いまさらだけど、ウチじゃなくて体操部にでも入ったほうかいいんじゃない?」

 

 想像以上の動きを見せた彼に苦笑する先輩に、ちょっと、と慌てて先輩の口を塞ごうとする浩太君。

 

 「ちょっと、アンタ、本当に入る気?」

 

 姫野と千夏に続き彼にも置いて行かれた気がして、つい、イラだった口調で彼が入るのを止めてしまう。

 

 「本気だ、俺は嘘はつかない」

 

 横で喜ぶ二人を目にする。まさか、ここで「目の前にいるのは殺し屋で、顧問の灰堂先生をぶっ殺した張本人ですよ。黒猫だって、烏だって尻尾巻いて逃げだす、歩く不吉の殺人鬼ですよ」なんて、・・・・・・、言えないわね。

 事情を知っている私は、なんとなく素直に喜べず、春の木漏れ日にため息しか口からは出てこない。ああ、なんて日よ。

 

 「いやー、まっさか、こんなところで五人目が捕まるとは思わなかったよ、人生何があるかわからないねー、ホント!」

 

 「響也君、これから同じ部活の部員としてよろしくね。」

 

 「よろしく頼む」

 

 浩太君と彼が握手する。先輩はようやく五人目が見つかり、部が存続となったことが嬉しいのか、叫びながらグラウンドのほうに向かって叫んでいた。喜びを出し切った先輩がふと何かを思い出したかのように私達に近づき、これまでで一番の満開の桜のような笑顔を向けて、手を差し伸べてくる。

 

 「そういえば、二人には自己紹介がまだだったね。私は二年の亘理 芳野。草冠に方向の方に、野原の野で芳野。よろしく!!! よしのんって呼んでね」

 

 「了解した。よしのん」

 

 まじめな顔で、芳野先輩を呼ぶ響也君に、目を丸くする浩太君。まじめにあだ名で呼ばれたのがよっぽど面白いのか、お腹を抱えて笑う芳野先輩。

 

 「あはははは、君面白いね。名前教えてよ」

 

 笑う先輩とは対照的に、無表情で手を取る彼。

 

 「一年の霧崎 響也だ。」

 

 「よろしく霧崎君、そっちの美人ちゃんは?」

 

 山岳部に入る気はさらさらに無い私は、そのままフェードアウトしようと考えていたのが、そんな考えはお見通しと言わんばかりの妖しい目つきで呼び止められる。

 

 「わ、わたしですか?、・・・・・・、一年の千代 紗夜です。言っておきますけど、私は入部しませんからね」

 

 「わかってるわかってる、でもまあ、見学くらいしていってよ。どうせ暇なんでしょ」

 

 芳野先輩の勢いに押され、なぜか私も新生「山岳部」の部室に連れて行かれた。部室棟の目の前に来ると、一瞬嫌な記憶が蘇った。「登山部」の部室は忘れもしない、3階の端っこだったが、「山岳部」の部室は一階の一番右奥だった。ドアの前に着くとなんだか、いい香りが漂ってきた。それは、そのさらに奥の細い通路からだった。こんなところに通路なんて合ったんだと思いながら、そちらを覗き込み奥を眺めたが、薄暗い通路が延びるだけだった。

 

 「なに、立ち止ってるのさ! さあ、入るよ!」

 

 手を引っ張られ、山岳部の部室に入った。中には誰もおらず、荷物がはいったダンボールが乱雑に置かれた部屋が広がっていた。

他の二人の先輩は、まだ勧誘中ということで、嬉しそうに芳野先輩が電話で新入部員が見つかったと報告していた。引っ越してきたばかりで、散らかっており、ごつい服や靴、ライトなどが転がっている。流石に、あの馬鹿でかいクーラーボックスやピッケルは無かった。きっと警察に押収されてしまったのだろう。その中に見覚えのあるナイフを見つけた。私が恐る恐る手に取ろうとしたが、彼がいち早くそれを掴んだ。

 そのまま天井のライトにかざし、まじまじとナイフを見る。

 

 「あれ? 響也君、サバイバルナイフが珍しいの?」

 

 「いや、そうではない。いいナイフだなと思っただけだ。」

 

 「それに目をつけるとは、お目が高いねぇ。スミス&ウェッソン CK5TBS。肉や野菜の調理から、薪割り、ロープの切断、緊急時には車のウィンドウガラスまで割れる優れものだよ」

 

 興味深そうに刃の両面や、柄の部分をまじまじと見つめる。刃を口に近づけ、息を吹きかけ何かをまじまじと観察する。殺し屋としての血が騒ぐのか、それともあの日のナイフだから気になるのか。彼の黒い瞳だけがそれを知っている。

 

 「知っている。また、刃こぼれしにくく、研ぎやすい。メーカーのこだわりから、製作誤差が少なく、百本あったら、百本の重さ、形状、切れ味がまったく一緒だといわれている、業界では有名なナイフだ。」

 

 アンタの言う業界ってどこのことよ! 少なくても登山業界やナイフ業界ではないことは確かででしょうね・・・・・・。

 

 「詳しいね、響也君。もしかして、キャンプとか登山とか元から興味があったの?」

 

 「いや、そうではない。俺がナイフを集めるのが趣味なだけだ」

 

 どこからか、ナイフを取り出し、なぜかそのナイフの説明を始める。材質がどうだとか、握りやすさがどうとか、私はまったく興味なかったので、右から左に流していたが、浩太君は興味があったのか、興味深深に聞いている。

 

 「いやいや、響也君が、登山部に入ってくれて嬉しいね」

 

 響也君がナイフが集めるのが趣味という発言をサラりとスルーして、ナイフ談義に花が咲いている二人をよそに、座っている先輩の横に行って、語りかけるように小さな声で言う。

 

 「大丈夫ですか? 彼相当変わってるんで、大変だと思いますよ。色々と」

 

 「それは私も同じだから大丈夫さ」

 

 笑えばいいのか、笑わないほうがいいのか困る冗談を言われ、迷った私の口からは、ただただ乾いた笑いが出てしまった。

 

 「と・こ・ろ・で、紗夜ちゃんはどうかな?」

 

 「どうとは?」

 

 「入部の話。もう五人そろってるけど、女子部員は私ひとりだし、良かったら入いって欲しいなって。もちろん、一緒に山を登れとは言わないよ、もちろん、一緒にできれば嬉しいけど。山登りはさっきも言ったように結構危険だからね。そうだね、マネージャーとかどう?移動の手配とか、食料の買出しとか、宿泊の予約とか、そういう手配は私がやってるんだけどね、できたら手伝って欲しいなって。まだ、入る部活決まっていないんでしょ?」

 

 心を見透かされたような瞳で頬をかわいらしく上げて笑いながら、まじまじとこちらを見る先輩に隠し事はできないなと理由もなく思った。

 

 「何でわかるんですか?」

 

 「はっはっは、私を甘く見ちゃだめだよ、紗夜ちゃん。入る部活が無くて困っています。っていう顔してるからさ!!」

 

 「・・・・・・」

 

 私はそんなに分かりやすい顔をしていたのか、鏡で確かめたかったがあいにく手鏡はない。

 

 「まあ、せっかくの機会だし考えておいてよ! ウチはいつでも歓迎さ!」

 

 あいまいな返事をして話を流す。ふと、時計を見ると六時、それに気がついた芳野先輩が何かを思い出したように、大げさに手をぽんと叩く。

 

 「二人とも、おなかへっていない?今からお菓子とお茶を飲みに行こうよ!!!」

 

 男達の話題は、なぜかサバイバルナイフから銃や火気、手錠と言った物騒なものに変って言った。なに?スミス&ウェッソンの手錠は軽くて丈夫、価格もお手ごろで、使いやすい?

 そんなもの知るか、ボケー。そう叫んで、私は芳野先輩について部屋を出た。

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