15.エピローグ/とびきり不幸なラッキーガール
四葉のクローバーを見つけるために、三つ葉のクローバーを踏みにじってはいけない。
幸せはそんな風に探すものじゃない。
だが四葉のクローバーはクローバーが若葉の時に出来た傷から四葉になるため
踏みにじって探す者がいなければ四葉のクローバーは生まれてこない。
しあわせなんてそんなもの。
月が綺麗な夜ね。
若い二人に任せ、部屋を抜けてきた私は、近くの公園のベンチで夜風に当たっていた。
さて、やるべきことは大体やったし、そろそろ閉めと行きましょうか。
ポケットから携帯電話を取り出し、始末班へ電話をかける。
「もしもし、私よぉ。Jキラーの遺体だけど首尾はどう?」
「・・・・・・・」
「そう、それは良かったわ。響也に頼んで、首を一突きにしてもらった甲斐があったわ。ちゃんと、
綺麗に捌いて売りさばいて頂戴ね。目標は一億よぉ、よろしく」
細かいことは部下にかませて、電話を切る。
今度は頭を切り替え、今回の仕事のクライアントに報告する為、電話をかける。
「もしもし、お久しぶりでございます。はい、私でございます。このたびは殺人請負組織「無月」をご利用いただき誠にありがとうございます。」
「・・・・・・」
「はい、契約どおり二人のJキラーは始末いたしました。数日以内に警察から正式発表があると思います。・・・・・・。はい。ご契約時の内容どおり一人一億、合計二億になります」
「・・・・・・」
「はい、ですが、ここで一点御朗報がございますわ。今回の件に関して、今回の担当が報酬を辞退したいと言っておりまして。はい、残念ながら理由を申し上げることはできません。ですが、それにより
ご依頼様のお支払いする金額は半額の一億となります。」
「・・・・・・」
「はい、大丈夫です。契約どおりターゲットの死亡確認から一年以内に全額入金いただければ、分割でも一括でも問題ありません。」
「・・・・・・」
「承諾いたしました。では、これにて失礼させていただきます。このたびは殺人請負組織「無月」をご利用いただき誠にありがとうございました。又のご利用はお待ちしておりません。
ご依頼者様が明日から日常に戻り、幸せな人生を送られることを心よりお祈り申し上げます。また最後となりますが、ユキ様のご冥福を心よりお祈り申し上げます」
電話口ですすり泣く依頼人の声を聞きながら、電話を切る。
依頼人の胸中を考えながらも、頭を切り替え、最後の相手に電話かける。
今回は彼にも悪いことをしたわね。
結局私のわがままで、一文の得にもならなかったしね。
まあ、許してくれるわよね。
なんたって、次の任務はもうちょっとましでしょうし。
私は、さっき書いた誓約書をポケットから出しながら、通話ボタンを押す。
「もしもし、響也。ごめんなさいねぇ、結局二人ともだめだった見たい」
「そうか、すまなかった。やはり薬物をナイフに塗布し、その場でしとめるのではなく、生かして運び、バラバラにするのが最適だったようだ。すまない、俺の技量不足により、奴らの息の根を止めるのが早すぎたようだ。俺の過ちだ」
少しだけ、残念そうな声が聞こえる。
ちょっとだけ、心が痛んだが、無いものが痛むとはちょっと笑ってしまう。
「そんなこと無いわよ。薬物を使うのを禁止したのは、私だし、あのナイフで仕留めれたのは響也のおかげよ」
耳と肩の間に携帯電話をはさみ、誓約書を夜空に掲げる。
「それでね、悪いんだけど、今回は経費も嵩んでロハになりそうなのよ。ほら、Jキラー探索時に周囲の電波ジャックしまくったじゃない。そうそう、紗夜ちゃんの電話もジャックして電話したじゃない。あれの機材費用が嵩んじゃったのよ」
「そうか」
「本当にごめんなさいね、その代わりといったらなんだけど、次の任務はもっとましなの回すから。」
「了解した、頼む」
今度は珍しく弾む声が聞こえて、驚いた。
きっと私じゃなければ、この声の違いには気がつかないだろう。
「そうね、ちなみに次はどんな任務がいい?」
「・・・・・・。そうだな。今回の任務でひとつわかったことがある。」
「なにかしらぁ?」
「俺の感覚は、残念なことに千代紗夜のような一般人とはかけ離れている可能性が高い」
可能性が高いというか、かけ離れてるわよ。100%。
苦笑しながら心の中で、笑う私。
「そうなると、今後の任務で支障が出る可能性がある。だから・・・・・・」
「だから?」
「次回は一般人を観察できるような任務を希望する」
またまた、珍しい反応ににやける。
これは、思ったよりも成果のあった任務になったのかもしれないわねぇ。
「おっけいおっけい、ルリルお姉さんに任せなさい。最高のお仕事を提供するわ」
「期待する」
それだけ言って彼は電話を切ってしまった。
私は携帯をそのままポケットにしまい、広げた誓約書を何度か折ってから、
月に紙を重ねた。
「えええい」
自分でも驚くくらい叫んで、勢いよく紙をやぶった。
小気味良い紙を破る音が、公園に小さく響き渡る。
「ごめんねー、紗夜ちゃん。」
紙ふぶきのようにちぎった誓約書をそのまま空に放つ。
夜風に吹かれ、一瞬で紙切れは方々に散ってしまった。
「冗談よ」
届くはずの無い台詞を今回の、とびきり不幸なラッキーガールに向けてつぶやき
淡い電灯が照らす公園をひっそりと後にした。
ここまで読んでいただいた読者の皆様。本当にありがとうございました。
おもしれーとか、つまんねーとか、全然伏線になってねーとか、俺は異世界ものが見たいとか
いろいろ感想はあると思います。それについては、ご自由に感想欄に書いてください。今後の参考にしたいです。また、作者の私から一点だけ聞きたい点があります。
10人にも満たないキャラたちですが、誰が一番好きor嫌いor感情移入etc.できましたか?
寡黙な殺し屋の響也、不幸なラッキーガールの紗夜、ミステリアスなルリル、JKキラーの荏原と灰堂、愉快な友人の千夏と姫野、そして最後に出てきた依頼人。
老若男女が本作品を見ていると思いますが、趣味思考は人それぞれです。、もしも、出てきたキャラたちに一言あれば、感想のほかにその気持ちや意見を書いていただければ嬉しいです。
個人的にはルリルは書いていて、一番感情移入したキャラクターでした。特にエピローグの電話のシーンはとっても気に入っています。
最後となりますが、本作品で伝えたいことは、世の中には色々な人間がいるということです。決して犯罪を助長するような内容で書いたわけではありません。正義も悪も、考えも意見も、趣味も思考も人の数だけあります。本作品を通して、少しでも多くのキャラの思いを捕らえていただければ幸いです。




