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殺し屋の過ち学  作者: ニムゲ総長
1章/とびきり不幸なラッキーガール
14/45

14.ロングタイム with ボゥイズエイジ

「寝坊したー」


玄関のドアを思いっきり開けて、家の外に飛び出る。

まぶしい太陽を背に、架城駅へひた走る。

小学生の歩く高架下を通り、サラリーマンや中高生の送り迎えが込み合うロータリーを抜け

架城駅の改札に飛び込む。時刻表を目の片隅で捉えると、

次の電車の出発まであと1分。これを逃せば15分後。遅刻確実。


出発の合図がなり響き、飛び乗る人を制止しようとする駅員を振り切り、ホームドアを

ハードル選手もびっくりの格好で飛び込む。

すぐに電車のドアが閉まり、出発する。


「ま、間に合ったー」


息を切らしながら、ドアの近くに立っていると見慣れた顔が近づいてくる。


「相変わらず、無茶しますわね。紗夜さん」


「あら、同じ車両なんて奇遇ね、しかもこんな時間に」


飛び込んだ私を笑う姫野。

伊達駅に着くまで、他愛ないおしゃべりをして時間をつぶす。

駅のホームを出て学校へ向かう途中で、いつも通りゆっくり暢気に歩いている、千夏を見つけ声をかける。


「二人とも、おっはよう」


相変わらず元気な千夏。

三人そろって、思った。

これが私の日常なんだ。姫野がいて千夏がいて。

これから、夏祭りに行って、部活やって、文化祭いって、人生で一回の青春を楽しむんだ。

昨日までの良くわからないことは綺麗さっぱり忘れよう。きっと夢だ。そうに違いない。

そう言い聞かせて、私は下駄箱で上履きに履き替え、階段を昇り教室に入る。


「おはよう」


大声で挨拶をして、扉をあけ、なんとなくみんなに挨拶しながら席へむかう。

よし、今日からまた、学校生活を楽しもう。

残念ながら、後ろの席はしばらく空席だろうけど、それもしばらくの間だろう。


そう思って、席に座りかばんから、教科書を机の中へいれる。

朝の教室の喧騒の中、誰かが私の席の方へ近づいてくる。

音も無く、イスを引き後ろの席へ座る。


もしかして、もう席替えしたのかな?

そう思って、後ろを振り向くと、相変わらず無表情の彼が

昨日は何にもなかったという表情で座っていた。


「アンタなんで、ここにいるのよーーーーー」


朝の喧騒を全部ふっとばす勢いで、私は叫んでしまった。

みんながこっちを見るが、私は気にせず、彼の手を引いて屋上まで連れて行く。


なんで、なんで、いるのよ。


昨日あんな別れしたばかりじゃない。

恥ずかしいのかうれしいのか、何を言っていいのかわからないまま

屋上で二人きりになってしまった。


「おはよう、千代紗夜」


こちらの気も知らず、彼は普通に挨拶してくる。


「なんで、アンタがここにいるのよ。昨日忘れろとか散々行ったくせに。」


「それについては、謝罪しよう。本当にすまない。」


珍しく殊勝に謝る姿に、何も言う気は起きなかった。


「まあいいわ、教えて。次の任務とやらに行くんじゃなかった。」


「実はもう、次の任務に既に就いている」


えッ。

ということは・・・・・・。


「あの、もしかして、次の仕事ってやっぱり」


「そうだ。殺しだ」


やっぱり。

一歩後ずさりをし、身を引いてしまう私。


「でも、なんでここに?」


「簡単な理由だ、次のターゲットもまた、この学校にいるからだ」


嘘、そんなまさか。

知り合い?


「誰、言いなさい!!!」


声を荒げて、問い詰める。

そんな私の勢いなどに、まったく気おされず、彼は話を続ける。


「わかった」


冷静なコイツはどこからとも無くナイフを取り出し、こちらに向ける。

私が彼を見ると、目線が合う。


「次の任務は、千代 紗夜を殺すことだ。」


「嘘」


「嘘ではない。俺はルリルと違って冗談は言わない」


私は本能から逃げようとするが、右手を彼につかまれ逃げられない。

叫ぼうとするが、毎度のように口をふさがれ逃げることができない。

そのまま、フェンスに体を押し付けられる。


「おちつけ、最後まで話を聞け」


この期におよんで何を聞けというのか。

私は、涙を流し抵抗するも、やっぱり抜け出せない。

観念して、力を抜く。

それをみたコイツはゆっくりと口元から手を離す。


「俺の次の任務は、君を殺すことだ。ただし!」


「ただし?」


「殺すのは3年後の君だ。それまでは、逆に命を守るように厳命されている」


訳がわからない。三年後の私を殺す?

誰がそんな依頼したの?

色んな疑問が浮かんだが、確認したいことはたったひとつ。


「それまでは、私を守ってくれるの?一緒にいてくれるの?殺さない?」


「そうだ、少なくとも、君が俺より先に死ぬことはない。命を懸けて君を守ろう。任務だからな」


なぜかわからないが、目から涙が流れてきた。


「ありがとう」


本物の殺し屋に後で殺してやると言われているのに、出てきた言葉は感謝の言葉だった。

彼のほうも困った顔をしている。

始めて、表情を崩した彼の顔を見た気がする。


「どうしたの?」


「いや、殺してやると言われて、礼を言われたのは初めてだ。正直言って初めての反応で困っている」


「私もよ、殺してやるって言われて、初めてお礼を言ったわ」


フェンスに押されていた、体をひょいと横に回し、今度は彼をフェンス側にむける。

ちょっと驚いた顔をしているのが、可愛い気がした。


「そういえば、まだ、自己紹介してなかったわね。八雲高校1年の千代紗夜よ。よろしく」


挨拶をして、笑った後右手を彼に伸ばす。

その手を見た後、思い出したかのように、彼も姿勢を正す。


「そうだったな。俺も名乗ろう。君と同じ八雲学園1年の霧咲響也だ。無月の殺し屋でコードネームは「ボゥイズエイジ」だ。

短い間だが、よろしく頼む」


彼も私に向けて手を伸ばす。

三年と言う期間が短いのかさておき、私は始めて彼と握手した。

これから何があるかわからないが、少なくとも退屈しなくてすみそうだ。


雲ひとつ無い空に太陽が燦燦と輝き、春の花が咲き乱れ、桜が少し散り始めた、

春の朝の出来事だった。

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