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留年になったので異世界生活することにしました  作者: 萌えがみ
第7章 うさぎさん達、外海旅行に赴きます
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72話 うさぎさん、イカ野郎を討つ

【屋台でおっちゃんがくれるイカ焼きが食べたい】


 水深して数秒。全速力で泳いでイカを追いかける。水中の空気を蹴るようにして前へと促進しようとすると、それに応えるようにパーカーの素早さはぐーんと速くなっていく。

 その速さは周りをうろつく魚たちよりも速くあっという間に通り越すくらいだ。


 久々にこのパーカーで潜ってみたが、あのときの感覚は衰えていない。ひとこと言うと水中呼吸っていうものに慣れない。……なんつうの? 体が違和感を感じているというか……うーんまあいいやこういうのは気にしない方がいいだろ。

 泳いでいると、サメらしきモンスターが私を飲み込もうと大きな口腔を開いてくる。


「邪魔だどけ! ラビット・パンチ!」


 気が立ったので怒り任せに拳を1つ軽く放った。


 スパアァァァァァンッ!!


 俊敏な動きを駆使して、敵の腹部へと移動し攻撃。攻撃をもろに食らったそのサメモンスターは力尽き海底へと沈んでいく。


「ハッざまぁみやがれ」


 思い知ったかと笑みを浮かべながら沈みいく相手に向かって言い放つ。

 水中では初となるラビット・パンチだったが敵を葬るぐらいの威力はあったらしい。……これもノマアサになったおかげで得られた私の恩恵なのだろうか。

 と何やらたくさん大きな岩が連なった岩場スポットへと到着。


「? この音は」


 近づこうとしたが、少々思い留まりその場で立ち止まる。……微かだが大きなモンスターと見られる物体のならす音がこちらまで大きく聞こえてくる。


「どうやら、そこまで遠くまでいってはいないようだな」


 岩場にすっと身を潜めて、その岩から向こうを垣間見る。

 畜生船員め。余計なフラグを立てるから敵が沸いてくるんでしょうが。

 変な口が開かなかったら、イカ大王が私達の前に現れるってことはまずなかったと思う。


「余計な仕事増やすんじゃねえよこのやろう」


 あ、でもどの道出航ってさRPGよくありな中間ボス的な立ち位置だから。

 これって強制イベントなのかな。

 因みに言っておくけど、作者曰くまだこの話中間地点じゃないよ。


 気を取り直し。

 他の仲間には水中は潜れないだろうから、船で待機するように指示した。

 狙い撃てたら攻撃するよう言い残して。


 みんな泳げるかは知らないけど、水中だとそんなに息が続かないと思う。

 それは例えシホさんであっても無理だと察する。

 なのでここはパーカーの専売特許。


 アクアラビットの出番です。水中戦となればこのパーカーを使わざるを得ない。使える場所が限定的とはいえその分強力。巨大な敵相手でも十分に張り合えるしね。

 手を軽く振りかざすと専用武器である、水中ライフルが手元に出現。それを片手に射撃モードをオンにして攻撃準備を整える。

 因みに水中の中だと、何発でも撃てるらしい。ノマアサだと基本魔力消費で撃つのだが、この武器そんな制限ないのだ。基本的に周りにある水を補給源として、射撃できるため実質魔力消費0で放てるからコスパがいい。こんな武器がFPSにあったらもはや禁止級レベルの強さである。


「さて、久々の水中戦張り切っていきますか」


 向こうを覗き込む。

 くねくねとした巨大な触手を動かすイカ大王の姿が見える。私を待ち構えるように呑気そうに待っているが、さあどう仕掛けるべきか。


【イカ大王 説明:全長20メートルの大きさをした巨大イカ。口から強力なイカスミを吐く。海鮮料理の食材としてよく使われるらしいが捕獲難易度は非常に高めなんだとか】


 現に食べられているのかこのイカは。

 ()()んでしょそんなの。

 なんつって。

 寒くてサーセン。


 まあ倒せない相手ではなさそうだから。私はマリンライフルを携え。

 水中を走り抜け、イカ大王の方へと猛接近。

 触手を操って無数の手が私を囲むように襲ってくる。


「へ! エロどーじんみたいな展開はお断りだぜ」


 振り払うようにマリンライフルを使用し、水撃を放つ。攻撃を退けると1歩下がり、体制を立て直す。

 円周を回りながら、敵の様子を窺い隙をついて射撃。


「この! この!」


 一発毎強力な弾丸なせいか、頭部目掛けて撃った水弾を食らったイカ大王は体制を崩し始める。


「今だ!」


 飛び上がって、水中浮遊し今度は片手をイカ大王目掛けて振りかざす。……水圧が一箇所に集中し、大きな水玉が成る。手に圧力を乗せそれを押し出すようにして飛ばす。


「ラビット・ポンプ!」


 水による激流が敵に見事命中させ、底へと転がす。高火力、高圧の攻撃なため、主力攻撃としては申し分なかった。

 一拍おいて。


「おっやる気はあるみたいだね。そうこなくっちゃ」


 あれだけの攻撃を受けても懲りずに私の方に視線を向けながらイカ大王は立ち上がり。

 触手で私を振り払う。

 その攻撃に対して、マリンライフルで迎え撃とうと引き金を引こうとした。


 だが触手の攻撃は。

 なんとフェイクだった。


「覚悟…………ってそれきたっぶ!」


 瞬間的に。

 口から黒いイカスミを吐いて、私の視界を暗ませた。

 目を塞ごうとした私なんて気にもせず、敵は大きな触手をなぎ払い私を壁際の岩まで吹っ飛ばす。


「おいおい。ざけんなよ! 戦うのならせこい手使うなよ!」


 油断していた。

 敵も多少は知能があるみたい。これは1本取られたような気分。

 え、ってことは私、イカより低脳な人間ってこと?

 嫌なもんだねぇ。


 イカ大王は、触手で手招きをしてきてこちらを誘う。

 こいよこいよ。

 と。


 あぁ完全に煽られてますわこれ。

 傲然(ごうぜん)とした態度に私は半ギレし。


「うさぎなめんなよこのイカ野郎」


 調子に乗ったイカへ手の平から技を放つ。

 それは円状の刃。

 高速回転しながら、水中で物音を立てながら私の前に現れ。


「ラビット・アクアカッター!」


 高速回転する円状の刃は、イカ大王に向けて押し迫る。先ほど振り払った触手がアクアカッターによって切断され地面へと落ちる。

 巨大な雄叫びをあげながら頭にきた敵は、一閃突きするような体制で放射線状の触手攻撃を仕掛けてくる。

 猛然とした触手攻撃を果敢に回避し。


「ハッ! 全然当たんねえよちゃんと狙いやがれ」


 煽ったら煽り返す。

 これが私なりの相手に対する礼儀。

 ハンムラビる的なやつで。あまりにも敵の攻撃が下手くそだったので。

 途中で私は両手で触手を1本掴み。


 持ち前の力で引きちぎった。

 どうやらこのパーカー素手の力も相当あるようで。

 敵の部位の1本や2本簡単に持っていけるらしい。

 だからさハイスペックすぎんご。


 一旦引き下がった退避。

 して私はその巨大な触手を片手に。


「これ旨いのかな? 気になったものだから一旦食してみるのも」

 味が気になったので無性に食べたくなった。


 なので。


「もぐもぐ」


 口を大きく開いて一気に飲み込む。

 生で食べるのは少し態度が悪いような、気がするけど旨いなら文句なし。

 してその問題の味は。


 弾力性のある歯応えのある味。

 一際大きい触手が美味しく感じられ満足のいける味わいだった。

 お。

 結構いけるなこれ。


「うん、美味しい」


 頭の中で食レポを終えたのち感想を一言述べた。

 すると向こうで激昂するイカさんが1匹。

 触手を私に向けて攻撃。


「っておいおい! 人が折角感想を言ってやったのにその態度はねえだろ! なにもうちょっと感化されそうな感想が欲しい? 残念だったな私にはそんなプロ級の解説なんてできねえから!」


 私はイカと何を話しているのだろう。

 まあいいや。

 食レポもおわった事だし。


「ラビットアクアシュート」


 中ぐらいの光弾をマリンライフルで生成し、連射でイカ野郎の触手に向けて狙い撃ち。少々の怯みを狙って再びカッターで切断。

 イカ野郎の触手は全て切断され攻撃手段を失う。

 巨大な顔の前まで近づいてやつの方を見下ろす。怯えて声も出せない様子でこちらを警戒。


 すると最期のあがきか。

 再びスミを吐こうとするが。


「もーらいっと」


 片手を差し出して吸収。最初っからこうすればよかった。


「んじゃ少し返すねこれ」


 少々のスミを何倍の反発力にして返してみる。

 ビション!

 イカ大王は鉄砲玉のように吹っ飛ぶ。


 これじゃどちらが悪なのかわかんねえな。

 そして私は止めに。

 マリンライフルを敵に向けて。


「舐めるからそうなるんだよ。でも安心しろてめえは美味しく味わってやるからさ」


 マリンライフルから小型のアクアカッターを連射し、みじん切りしたくらいの大きさにして船へと浮上した。



☾ ☾ ☾



【イカバイキングも悪くないような気がする】


 浮上したら日没前だった。

 夕焼けが綺麗で辺りが真っ赤に染まる。

 上からは浮上に気がついた仲間達が、私を見下ろしながら手を振り声をかけてきた。


「愛理さんおーい! だいじょうぶですか?」

「食料確保しといたよ」


 食材にしたイカの破片をみんなに見せる。

 能力で球体状に固めた物だから崩れやしない。

 その物体を見て仲間は。


「美味しそうなイカですね、なら今日はみなさんでイカパーティですね」

「冗談のつもりで言ったんだけど本当にするんだね」

「あら愛理、言い出しっぺなんだから、少しは自分の言ったことに責任取りなさいよ」

「……そうですよ。愛理さんが食べようなんて言ったじゃないですか」


 誰だ、今晩イカのご馳走にしてやるとか言ったヤツは!

 はい。

 他の誰でもない私です。


 その夜。

 今日はもう遅いとのことで夜はそこに留まることにして。

 船に乗るみんなに感謝されながら、船のシェフによるイカの手料理を食事をいただくのだった。


「ありがとうございましたうさぎの冒険者さん。これは本の気持ちです」


 見知らぬ旅人から金貨5枚をもらう。

 げ。

 別に大したことしていないんだけど。なんか凄く偉大に尊敬されているよ私達。


「……愛理さん宗教でも作る気なんですか?」


 たくさんの人に囲まれる私を見て、スーちゃんが羨ましそうにこちらを見る。

 変な勧誘とかどこからその話沸いた!?


「しないから! 全然興味ないしというかスーちゃん変な目で私を見ないで!」

「愛理、人に感謝されるっていいことよ(こくりこくり) だから調子乗りの1つや2つ吐いても許されるわこの状況は」


「なにさらっとかっこつけたこと言ってんだお前は!」


 そりゃお前だろって言いたくなるが。

 っていうかぼうっとしてないでみんな助けてよ。

 感謝の意を込めた人々による押しくらまんじゅう状態で、今でも愛理さん潰れそうなんですが!


「あの! すみません愛理さん大丈夫ですか!」


 救いの手をシホさんが差し伸ばしてきた。安定のシホさん力持ちなシホさん。


「ご、ごめんシホさん助かった」

「私がいなかったら今頃干物になっていたかもしれませんね」


 人差し指を上に向けてよくわからないジョークを言ってくる。

 い、いやだ私は死にたくないいいい!! と冗談はさておき。


「冗談はよしてくれよシホさん」

「……大丈夫ですよ愛理さん。仮に棺桶入りしたとしても、私が蘇生させてあげるので」


 いや、なんで私が死ぬ前提で話進めてるのスーちゃん!?


「大丈夫よ愛理。あなたが死んでもすぐに私が追いついてあげるから」

「いや必要ねーよ! というか2人ともひとこと言うけどさ、私ちょっとしたことでバテるようなキャラしてないからな!」


「そなの?」

「……そですか?」


 2人は首を傾げる。

 私をどんな奴だと思っているのさ2人とも!?


「まあ無事で何よりです。まだイカのフルコースは残ってるみたいなのでもう少し食べに行きませんか?」

「そ、そうね。ほら愛理さっきのは冗談だから……いくわよ!」

「ちょ!? ……あのスーちゃんも押さないで! まじで潰れる!」

「…………」


 見つめているだけ。

 いや、なんか喋ってよ。

 その場の危機を脱しその日のイカ狩りは幕を閉じるのだった。

 てかこの旅行厄介ごとに巻き込まれるってことはないよね?

 そう信じたい。

こんばんはです。

8月になりましたね暑いです。

さて久々のアクアラビットパーカー登場回になりましたがいかがだったでしょうか。

いくらデカかろうが愛理の前では早々勝てる者はいませんが。

他のメンツが今回空気でしたが、明日はいつも通りの展開で話が進行しますのでご安心を。

暑さはキツいですが頑張って書いていく所存ですので、いつも読んで下さる皆様引き続きよろしくです。

ではみなさん今日はこれにて。熱中症や暑さには重々気をつけて1日をお過ごし下さいそれでは。

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